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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
トアは時機を鶴首し、SNIPERを内側から食い破り、唾棄すべきレイン・エルを排除する好機を窺っていた。
「背中を晒せよ…一瞬でいい」
精神感応金属(オリハルコン)のブレードに特殊な術を織り込んで変成されたMoonring Blade(円月輪)を握ったトアは薄暗い部屋を見上げ、独白に意趣を込めていた。
「――――殺してやる」
魔界で体得したものだと言われるクーファの槍術は、160センチの槍身を軽々と振り回す豪快なもので、華奢な彼の腕力はJUDGEでも1、2を争う。
変幻自在の魔槍は意思を持ち、相手を最も疵つけるかたちを成す。
クーファが上空に槍を投じると、ゲイボルグは30の鏃(やじり)に姿を変えてイヴァに降り注いだ。
持ち前の柔軟性を活かし躱すものの、範囲広大な攻撃で数発は防げない。
両足から放たれた銃弾が残りを撃ち落とし、逆立ち体勢で地面に着地したイヴァが両手を離すと、再びクロスが咆哮を放った。
軌道を鋭く変え前後不覚に向かってくる銃弾を、鏃に変化したゲイボルグが撃砕する。
槍が変質するほんの一刻、クーファは武器を持たない状態になる。
踏み込んだイヴァが一気に連撃を仕掛けた。
核防壁(シェルター)さえ粉砕するイヴァの攻撃は急所だけを狙い打つ極めて殺傷力の高いもので、命中すれば能力者でも即死させる。
彼のCQC(近接格闘)はフェアバーンを基礎とするが、ダン・イノサント、柔術、システマ、クラヴ・マガ、カポエイラ、サンボなど、あらゆる武術、暗殺術をマスターしたのち自己流にアレンジしたものだ。
電光石火の乱打を繰り出し、さらに追撃をかけようと踏み込んだところで俄に吐き気に襲われ、咳き込んだ口から血が噴き出した。
イヴァの攻撃で削れた地面に赤い玉が形成され、よろめいたところでゲイボルグが唸りを上げる。
瘴気に蝕まれた身体を興起させ、構えたイヴァの視界からクーファが消えた。
数メートル先すら見通せない濃霧の中に身を隠した彼の気配を入念に探るものの、コントロールが儘ならない。
この場所に立ってから十分弱――――空気中の毒素は急激に濃くなっていく。
上空を見上げた刹那、穂がイヴァの軍服を掠めた。
後方に逃れようとするイヴァを追撃が襲う。
瘴気と一体化しているクーファの気配はもはや識別できず、勘と音、視覚だけを頼りに攻撃を躱していく。
遊歩道は魔槍の威力で巻き起こった衝撃によって罅割れ変形し、刺先が掠めただけでも骨まで振動がくる。
猛攻をなんとか躱し地面についた足が痺れ、イヴァは奥歯を噛み締めていた。
身体が重い。
重力が変動するなんて有り得ないが、サンタモニカの空気は確かにイヴァを押さえつけている。
息が上がり外気を取り入れると、今度は肺が厭な音を立てる。
「Vaffanculo…!(くそったれ…!)」
徐々に受太刀になるイヴァを迫撃するクーファの表情は変わらない。
魔族と契約を交わし瘴気の中に身を沈めた彼とイヴァでは、明らかに体力の消耗が違っていた。
既にフォースでの回復が追いつかなくなっている内臓は毒素に蝕まれ壊死し始めている。
トアは時機を鶴首し、SNIPERを内側から食い破り、唾棄すべきレイン・エルを排除する好機を窺っていた。
「背中を晒せよ…一瞬でいい」
精神感応金属(オリハルコン)のブレードに特殊な術を織り込んで変成されたMoonring Blade(円月輪)を握ったトアは薄暗い部屋を見上げ、独白に意趣を込めていた。
「――――殺してやる」
魔界で体得したものだと言われるクーファの槍術は、160センチの槍身を軽々と振り回す豪快なもので、華奢な彼の腕力はJUDGEでも1、2を争う。
変幻自在の魔槍は意思を持ち、相手を最も疵つけるかたちを成す。
クーファが上空に槍を投じると、ゲイボルグは30の鏃(やじり)に姿を変えてイヴァに降り注いだ。
持ち前の柔軟性を活かし躱すものの、範囲広大な攻撃で数発は防げない。
両足から放たれた銃弾が残りを撃ち落とし、逆立ち体勢で地面に着地したイヴァが両手を離すと、再びクロスが咆哮を放った。
軌道を鋭く変え前後不覚に向かってくる銃弾を、鏃に変化したゲイボルグが撃砕する。
槍が変質するほんの一刻、クーファは武器を持たない状態になる。
踏み込んだイヴァが一気に連撃を仕掛けた。
核防壁(シェルター)さえ粉砕するイヴァの攻撃は急所だけを狙い打つ極めて殺傷力の高いもので、命中すれば能力者でも即死させる。
彼のCQC(近接格闘)はフェアバーンを基礎とするが、ダン・イノサント、柔術、システマ、クラヴ・マガ、カポエイラ、サンボなど、あらゆる武術、暗殺術をマスターしたのち自己流にアレンジしたものだ。
電光石火の乱打を繰り出し、さらに追撃をかけようと踏み込んだところで俄に吐き気に襲われ、咳き込んだ口から血が噴き出した。
イヴァの攻撃で削れた地面に赤い玉が形成され、よろめいたところでゲイボルグが唸りを上げる。
瘴気に蝕まれた身体を興起させ、構えたイヴァの視界からクーファが消えた。
数メートル先すら見通せない濃霧の中に身を隠した彼の気配を入念に探るものの、コントロールが儘ならない。
この場所に立ってから十分弱――――空気中の毒素は急激に濃くなっていく。
上空を見上げた刹那、穂がイヴァの軍服を掠めた。
後方に逃れようとするイヴァを追撃が襲う。
瘴気と一体化しているクーファの気配はもはや識別できず、勘と音、視覚だけを頼りに攻撃を躱していく。
遊歩道は魔槍の威力で巻き起こった衝撃によって罅割れ変形し、刺先が掠めただけでも骨まで振動がくる。
猛攻をなんとか躱し地面についた足が痺れ、イヴァは奥歯を噛み締めていた。
身体が重い。
重力が変動するなんて有り得ないが、サンタモニカの空気は確かにイヴァを押さえつけている。
息が上がり外気を取り入れると、今度は肺が厭な音を立てる。
「Vaffanculo…!(くそったれ…!)」
徐々に受太刀になるイヴァを迫撃するクーファの表情は変わらない。
魔族と契約を交わし瘴気の中に身を沈めた彼とイヴァでは、明らかに体力の消耗が違っていた。
既にフォースでの回復が追いつかなくなっている内臓は毒素に蝕まれ壊死し始めている。
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