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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
「Reign=L」
触れた部分に文字が浮かび上がった。
四方に広がった文字の光が収束して扉を成す。
普段は壁と一体化している特殊扉は緊急時のエマージェンシー・ゲートと同様の構造でつくられており、ごく限られた人間にしか反応しない。
「Brad=Gira」
隣に立ったブラッドが名乗ると、扉から出現した探知用小型ロボットが2人のDNA認証を開始し、全てが一致し本人と確定されると、2人の身体は扉へと吸い込まれた。
「ある機関が密かに地下施設を建設している」という流説は、軍事業界では平談俗語に等しい。ホワイトハウスでさえ地下にシェルターを保持しているのは有名な話で、破壊の脅威に精通した軍事機関が安全地帯を確保するのはごく自然な反応だ。
SNIPERも例に漏れず、地下施設の保持を公言している。
中央政府への、組織内全ての敷地に関する詳細と使用用途の申請は、軍事に関わらず金融、政財等の組織にも義務付けられている。
中央政府はどの組織に対しても無許可での視察施行が行使でき、同時に衛星での透過監視も行っているため、暗々裏に彼らを欺くのは不可能だった。
しかし、世界でも数えるほどしか存在しないとされる稀少な絶対防壁(ディヴァーサー)の能力を使えば話は別だ。
一部空間のみを平行した別の時間空間に移し、現世との完全な隔絶を行える絶対防壁は、現代機器の構造理論ではおよそ感知できない。
ヴァージニア州とほぼ同じ面積の110,000km2という広大な空間を隔絶し、尚且つ維持できるという離れ業が可能なのは、世界で唯1人だけだ。
SNIPER幹部・アリ・ウィン少佐は、防御系(ディフェンサー)のトップに立つ能力者だが、中央政府は彼の能力値までを認知していない。
そこまで強大な結界を張れる人間が存在するという事実自体が盲点に等しい。
レインでさえ、彼が実際に隔絶を実践してみせるまでは半信半疑だった。
アリの防壁によって秘密裏に形成された地下空間は、中央政府との決戦準備を着実に進めていた。
通称R-Fortress(フォートレス・アール)。
RにはRebellion(反逆)の意と、主であるReignの頭文字が取られている。
街というより要塞としての機能を重視した外観は強固な装甲に覆われていて、剥き出しの配管や飾り気のない無機質な建物ばかりが目に付く。
内部のデザインはSNIPERが手がけたものだが、実際にR-Fを使用している人間はSNIPERの関係者ではない。
雑多で陰湿、剣呑な薄汚い路地は、レインにスラムでの生活を想起させる。
お世辞にも上品とは言い難い街並みには、住む人間のパーソナリティがよく反映されていた。
R-F建設には9000億ドルという莫大な費用がかけられており、全額をレインが出資したのだが、完成するや否や、レインはR-Fを反政府組織、Alta Vendetta(アルタ・ヴェンディッタ)に全て譲り渡してしまった。
ヴェンディッタを取り仕切る棟梁、ヴィート・ヴァルトリと側近の能力、彼らの強い絆を、レインは高く評価している。
しかし、ヴェンディッタのレインに対する認識が良好とは限らない。
表面上だけとはいえ中央政府に従い、色仕掛けで尻尾を振っているプライドの欠片もない成り上がりの男娼が、ボスを誘惑して金で場所を提供し、そこに囲った。という非常にネガティブな見方もある。
ボスの権勢で統率が取れているヴェンディッタは過激派に属し、武力による徹底的な淘汰をモットーとしている。否定的な表現を用いれば「野蛮」と言い換えられることもある。
レインとブラッドがエントランスに姿を現すと、周囲にたむろしていた男たちがあからさまな渋面をつくった。
「Reign=L」
触れた部分に文字が浮かび上がった。
四方に広がった文字の光が収束して扉を成す。
普段は壁と一体化している特殊扉は緊急時のエマージェンシー・ゲートと同様の構造でつくられており、ごく限られた人間にしか反応しない。
「Brad=Gira」
隣に立ったブラッドが名乗ると、扉から出現した探知用小型ロボットが2人のDNA認証を開始し、全てが一致し本人と確定されると、2人の身体は扉へと吸い込まれた。
「ある機関が密かに地下施設を建設している」という流説は、軍事業界では平談俗語に等しい。ホワイトハウスでさえ地下にシェルターを保持しているのは有名な話で、破壊の脅威に精通した軍事機関が安全地帯を確保するのはごく自然な反応だ。
SNIPERも例に漏れず、地下施設の保持を公言している。
中央政府への、組織内全ての敷地に関する詳細と使用用途の申請は、軍事に関わらず金融、政財等の組織にも義務付けられている。
中央政府はどの組織に対しても無許可での視察施行が行使でき、同時に衛星での透過監視も行っているため、暗々裏に彼らを欺くのは不可能だった。
しかし、世界でも数えるほどしか存在しないとされる稀少な絶対防壁(ディヴァーサー)の能力を使えば話は別だ。
一部空間のみを平行した別の時間空間に移し、現世との完全な隔絶を行える絶対防壁は、現代機器の構造理論ではおよそ感知できない。
ヴァージニア州とほぼ同じ面積の110,000km2という広大な空間を隔絶し、尚且つ維持できるという離れ業が可能なのは、世界で唯1人だけだ。
SNIPER幹部・アリ・ウィン少佐は、防御系(ディフェンサー)のトップに立つ能力者だが、中央政府は彼の能力値までを認知していない。
そこまで強大な結界を張れる人間が存在するという事実自体が盲点に等しい。
レインでさえ、彼が実際に隔絶を実践してみせるまでは半信半疑だった。
アリの防壁によって秘密裏に形成された地下空間は、中央政府との決戦準備を着実に進めていた。
通称R-Fortress(フォートレス・アール)。
RにはRebellion(反逆)の意と、主であるReignの頭文字が取られている。
街というより要塞としての機能を重視した外観は強固な装甲に覆われていて、剥き出しの配管や飾り気のない無機質な建物ばかりが目に付く。
内部のデザインはSNIPERが手がけたものだが、実際にR-Fを使用している人間はSNIPERの関係者ではない。
雑多で陰湿、剣呑な薄汚い路地は、レインにスラムでの生活を想起させる。
お世辞にも上品とは言い難い街並みには、住む人間のパーソナリティがよく反映されていた。
R-F建設には9000億ドルという莫大な費用がかけられており、全額をレインが出資したのだが、完成するや否や、レインはR-Fを反政府組織、Alta Vendetta(アルタ・ヴェンディッタ)に全て譲り渡してしまった。
ヴェンディッタを取り仕切る棟梁、ヴィート・ヴァルトリと側近の能力、彼らの強い絆を、レインは高く評価している。
しかし、ヴェンディッタのレインに対する認識が良好とは限らない。
表面上だけとはいえ中央政府に従い、色仕掛けで尻尾を振っているプライドの欠片もない成り上がりの男娼が、ボスを誘惑して金で場所を提供し、そこに囲った。という非常にネガティブな見方もある。
ボスの権勢で統率が取れているヴェンディッタは過激派に属し、武力による徹底的な淘汰をモットーとしている。否定的な表現を用いれば「野蛮」と言い換えられることもある。
レインとブラッドがエントランスに姿を現すと、周囲にたむろしていた男たちがあからさまな渋面をつくった。
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