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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
ほぼ完成まで漕ぎつけた装置の実験も兼ね、不安定な状態にも関わらず「Mouse Hunting」を敢行したのだろう。
「デーヴァナーガリー(古代インド文字)とアンラバ(魔族文字)、条件文字の混合か。…ふん。たしかに難解だな」
遠目から慎重に円陣を読み解きながら、口元に手を当てた一哉が呟いた。
「死ぬなよ…神代直樹」
足元に妙な浮遊感を覚えて立ち止まった直樹が、肌を刺すような寒気に眉根を寄せた。
校舎から出ようとしたところで背後を振り返った彼は、予想通りの展開と静かに対峙していた。
女子高生の姦しい笑い声も、下駄箱にいたはずの野球部員の姿もない。
幻覚の類ではないと彼の直感は告げていた。
彼らが消えたというより、直樹が空間の狭間にいるという表現の方が近いだろう。
時空連続体には過去、現在、未来が同時に存在しているが、意図的に「神代直樹」というターゲットだけを彼の生きる空間3次元時間1次元から切り離した。
言い換えれば、時空連続体を通常では秒速30万キロで走っている地上の人間の中から、彼の速度だけを遅らせた、或いは早めた。
彼がいるのは別の速度で発生する異空間であり、直樹が存在した世界の過去、現在、未来のどこにも属さない。
漠然とした推論だが、正鵠を射ているとしたら敵の狙いはひとつだ。
Mouse Hunting――――幹部狩り。
レインを餌に直樹をホーム(ベゼスタ)から離したのは彼を確実に潰すためでもあるだろうが、同時に本部にも仕掛けるという心算が透けてみえる。
直樹がいては都合が悪いということだ。
REDSHEEPがSNIPER幹部1人ずつを個別に殺す術を完成させ実行に移しているとしたら、それはレインを斃す目算があるということにもなる。
レインを潰せるだけのなにかを、中央が得たということだ。
冷静に思案をめぐらせる直樹の両手に赤と黒の2刀が現れた。
回転させてから握って構える。
「ゆっくりしてる暇はなさそうだ」
罠があると解っていても看過できず、日本へ来た。
レインのこととなると冷静でいられないのは、直樹にとって今や致命的な欠陥となりつつある。
何者にも拘らず、縛られず、愛さずにいたからこその強さが彼の中には確かにあった。
だがSNIPERに参入してからは徐々に削がれ、今では失いつつある。
敵を斬り落とせない刃に存在価値など無い――――直樹は常に覚悟を秘めている。
人体が最高の状態に達し、完璧を維持できるのはせいぜい20代まで。
能力者でない彼は特に顕著だと自覚している。
技を磨き経験を積むことで熟練の域には達せるだろうが、彼はそこまで生き永らえるのを望まなかった。
朽ちていくのなら果てたい。弱い自分など考えられない。
死を恐れないことこそが彼の強さ、誇りであったのを、真っ向から否定してきたのはSNIPER元帥、ブラッド・ジラだ。
SNIPER参入の際、レインの直下に就くと宣言した直樹の前に立ちはだかったブラッドは、緊張感の無い口調で鷹揚と直樹に言い放った。
「お前は確かに強いが上に立つには早い。背中にいつも棺桶背負ってるようなガキに俺は殺れない」
ほぼ完成まで漕ぎつけた装置の実験も兼ね、不安定な状態にも関わらず「Mouse Hunting」を敢行したのだろう。
「デーヴァナーガリー(古代インド文字)とアンラバ(魔族文字)、条件文字の混合か。…ふん。たしかに難解だな」
遠目から慎重に円陣を読み解きながら、口元に手を当てた一哉が呟いた。
「死ぬなよ…神代直樹」
足元に妙な浮遊感を覚えて立ち止まった直樹が、肌を刺すような寒気に眉根を寄せた。
校舎から出ようとしたところで背後を振り返った彼は、予想通りの展開と静かに対峙していた。
女子高生の姦しい笑い声も、下駄箱にいたはずの野球部員の姿もない。
幻覚の類ではないと彼の直感は告げていた。
彼らが消えたというより、直樹が空間の狭間にいるという表現の方が近いだろう。
時空連続体には過去、現在、未来が同時に存在しているが、意図的に「神代直樹」というターゲットだけを彼の生きる空間3次元時間1次元から切り離した。
言い換えれば、時空連続体を通常では秒速30万キロで走っている地上の人間の中から、彼の速度だけを遅らせた、或いは早めた。
彼がいるのは別の速度で発生する異空間であり、直樹が存在した世界の過去、現在、未来のどこにも属さない。
漠然とした推論だが、正鵠を射ているとしたら敵の狙いはひとつだ。
Mouse Hunting――――幹部狩り。
レインを餌に直樹をホーム(ベゼスタ)から離したのは彼を確実に潰すためでもあるだろうが、同時に本部にも仕掛けるという心算が透けてみえる。
直樹がいては都合が悪いということだ。
REDSHEEPがSNIPER幹部1人ずつを個別に殺す術を完成させ実行に移しているとしたら、それはレインを斃す目算があるということにもなる。
レインを潰せるだけのなにかを、中央が得たということだ。
冷静に思案をめぐらせる直樹の両手に赤と黒の2刀が現れた。
回転させてから握って構える。
「ゆっくりしてる暇はなさそうだ」
罠があると解っていても看過できず、日本へ来た。
レインのこととなると冷静でいられないのは、直樹にとって今や致命的な欠陥となりつつある。
何者にも拘らず、縛られず、愛さずにいたからこその強さが彼の中には確かにあった。
だがSNIPERに参入してからは徐々に削がれ、今では失いつつある。
敵を斬り落とせない刃に存在価値など無い――――直樹は常に覚悟を秘めている。
人体が最高の状態に達し、完璧を維持できるのはせいぜい20代まで。
能力者でない彼は特に顕著だと自覚している。
技を磨き経験を積むことで熟練の域には達せるだろうが、彼はそこまで生き永らえるのを望まなかった。
朽ちていくのなら果てたい。弱い自分など考えられない。
死を恐れないことこそが彼の強さ、誇りであったのを、真っ向から否定してきたのはSNIPER元帥、ブラッド・ジラだ。
SNIPER参入の際、レインの直下に就くと宣言した直樹の前に立ちはだかったブラッドは、緊張感の無い口調で鷹揚と直樹に言い放った。
「お前は確かに強いが上に立つには早い。背中にいつも棺桶背負ってるようなガキに俺は殺れない」
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