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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
――――焔。
円陣の周囲には禍々しい黒焔が燻っている。
自然の摂理に反したその色を初めて目にしたようなレインの反応に気づいたブラッドは、すぐに意を介していた。
レインは首を噛まれて以後、意識が曖昧だっただけに、あの焔の存在を認知していなかったらしい。
レインから弾き出された黒焔はブラッドの総身に降り注いだ。
だが、身体には火傷の痕もなく衝撃すら感じなかった。
幻覚の類かと思い倣していたのだが僻目だったらしい。
最も避けたい事態ではあるが、現実として人世界にも同じ現象が起きた以上、ブラッドとレインを異界で襲ったモノがここにも現れ、それが焔を放出したと考えるのが自然だ。
細い警告音がフロアに響き、両側の壁に非常用のエマージェンシー・ゲートが出現した。
異変を感知したオート・セキュリティーによって一部フロアが閉鎖された場合、通常使用されている扉は使用不可になる。
エマージェンシー・ゲートはそういった緊急時に特殊な信号によって壁を変質させ形成される扉の通称で、行使にはゲートの使用を許諾された人物のDNA照合が必要になる。
特定の上官だけが役する権利を与えられており、一般兵士や所員たちには準用しない。
両ゲートから同時に入ってきたのは、ラウレス・L・フェナー大佐とアリ・ウィン少佐だった。
今しがた帰還したばかりのラウレスはSNIPERの軍服を身に着けたまま、一方のアリは私服姿で、2人に駆け寄ってくる。
「これは…。いったい何があったんですか」
「レイン、無事でよかった」
『ここだけじゃないみたいだよ』
耳で感じ取るよりずっと鮮明な音声を、4人は同時に聞き咎めていた。
暢気でマイペースな口調は引き続き、彼らの脳に直接語りかけてくる。
『アメリカ各地で同じ現象が起きてる。ネットじゃ「魔王の復活」って大騒ぎ。あながち嘘じゃないかもね〜』
「何が起きてる、ジャック」
レインの問いに答えたのは背後からの肉声だった。
「その印、悪魔崇拝者には「魔王の刻印」って言われてるんだ」
転送エリアから現れたジャックがふわふわの髪を乱した。
レッグウォーマー付きのブーツに缶バッチだらけの軍服、チェックのネクタイにウォレットチェーンと、彼独特のキッチュな風采はもはや、軍人としての原型を留めていない。
一応軍服を身につけているだけ彼も譲歩したのだろうとレインは思っているが、実際は彼の大好きな「コスプレ」道具として軍服が採用されているだけだった。
ゆるいトラウザーズの両側に下がったホルスターには紛う無き本物のピエトロ・ベレッタM92が収まっているのだが、M9は世界中の警察や軍隊で使われている最もポピュラーなもので、モデルガンも大量に流出している。
痩身矮躯で童顔なジャックが重そうなオモチャを両足に二挺ぶら下げていたところで、中学生か小学生が格好つけているようにしか見えない。
「シティでの「召喚」が成功、魔王ルシファーが復活した、ってね〜。政府があわててネットの噂を揉み消そうとしてるあたり、けっこうホントかも?」
「ルシファーだと?」
単語を反復したレインが懐疑的な態度で応じると、ジャックが可愛らしい笑窪をつくった。
――――焔。
円陣の周囲には禍々しい黒焔が燻っている。
自然の摂理に反したその色を初めて目にしたようなレインの反応に気づいたブラッドは、すぐに意を介していた。
レインは首を噛まれて以後、意識が曖昧だっただけに、あの焔の存在を認知していなかったらしい。
レインから弾き出された黒焔はブラッドの総身に降り注いだ。
だが、身体には火傷の痕もなく衝撃すら感じなかった。
幻覚の類かと思い倣していたのだが僻目だったらしい。
最も避けたい事態ではあるが、現実として人世界にも同じ現象が起きた以上、ブラッドとレインを異界で襲ったモノがここにも現れ、それが焔を放出したと考えるのが自然だ。
細い警告音がフロアに響き、両側の壁に非常用のエマージェンシー・ゲートが出現した。
異変を感知したオート・セキュリティーによって一部フロアが閉鎖された場合、通常使用されている扉は使用不可になる。
エマージェンシー・ゲートはそういった緊急時に特殊な信号によって壁を変質させ形成される扉の通称で、行使にはゲートの使用を許諾された人物のDNA照合が必要になる。
特定の上官だけが役する権利を与えられており、一般兵士や所員たちには準用しない。
両ゲートから同時に入ってきたのは、ラウレス・L・フェナー大佐とアリ・ウィン少佐だった。
今しがた帰還したばかりのラウレスはSNIPERの軍服を身に着けたまま、一方のアリは私服姿で、2人に駆け寄ってくる。
「これは…。いったい何があったんですか」
「レイン、無事でよかった」
『ここだけじゃないみたいだよ』
耳で感じ取るよりずっと鮮明な音声を、4人は同時に聞き咎めていた。
暢気でマイペースな口調は引き続き、彼らの脳に直接語りかけてくる。
『アメリカ各地で同じ現象が起きてる。ネットじゃ「魔王の復活」って大騒ぎ。あながち嘘じゃないかもね〜』
「何が起きてる、ジャック」
レインの問いに答えたのは背後からの肉声だった。
「その印、悪魔崇拝者には「魔王の刻印」って言われてるんだ」
転送エリアから現れたジャックがふわふわの髪を乱した。
レッグウォーマー付きのブーツに缶バッチだらけの軍服、チェックのネクタイにウォレットチェーンと、彼独特のキッチュな風采はもはや、軍人としての原型を留めていない。
一応軍服を身につけているだけ彼も譲歩したのだろうとレインは思っているが、実際は彼の大好きな「コスプレ」道具として軍服が採用されているだけだった。
ゆるいトラウザーズの両側に下がったホルスターには紛う無き本物のピエトロ・ベレッタM92が収まっているのだが、M9は世界中の警察や軍隊で使われている最もポピュラーなもので、モデルガンも大量に流出している。
痩身矮躯で童顔なジャックが重そうなオモチャを両足に二挺ぶら下げていたところで、中学生か小学生が格好つけているようにしか見えない。
「シティでの「召喚」が成功、魔王ルシファーが復活した、ってね〜。政府があわててネットの噂を揉み消そうとしてるあたり、けっこうホントかも?」
「ルシファーだと?」
単語を反復したレインが懐疑的な態度で応じると、ジャックが可愛らしい笑窪をつくった。
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