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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
「中央がシティで魔族召喚をやったのは間違いないよ」
頭に装着するタイプのヘッドホンのような端末に電源を入れ、片目に装着しているM.e(マイクロ・アイ)に立体映像が映し出されると、空中に滑らせた指先で敏捷に情報を移動していく。
「5分前のエントランスの様子と、シティでの召喚に関する情報渡しとくね〜」
レイン、ブラッド、幹部たちそれぞれの眼前にホログラムが映し出される。
M.e(マイクロ・アイ)はコンタクトのように直接瞳に装着して使用する通信機器で、レインをはじめ幹部全員が身に着けている。
プライベートな時間や通信を断ちたい場合は命じるだけで回路を遮断でき、再び作動させる場合もキーワードを囁くだけでいい。
この場にいる幹部だけでなく、離れた場所にいるシオウやイヴァにもM.eからの情報は届く。
慣れないうちは違和感を伴うが、熟れてしまえば非常に便利なツールだ。
「SIS、pentagon、CIA、WA(白軍)、GAD(ガーディアン)。膨大な量の情報が錯綜してる上に、召喚とか魔族に関する古文書の記録も浩瀚だったからさぁ。真偽の選別もしにくいとこなんだけど〜…まぁ結局、まとめると…」
「高位魔族の召喚。…破壊の神か」
「うん」
送信されたデータを卒読したレインが物憂げに瞳を閉じた。
未だ拭えない疑念を振り払うように首を振ると、小さく一笑する。
拭えないんじゃない――――拭いたくないんだ。
破壊神ルシファーなどという「魔王」が本当に存在し、尚且つ人の世に現れるという三流映画ばりの展開を想定してはいても、信じたくないというのが本音だった。
魔族の王なんてものが現世に現れたらお手上げだ。
エクソシストじゃあるまいし、彼らには神父の祈祷も効かない。
とはいえ、ここが人の世界である内はまだ勝機がある。
元々別の次元に存在する魔族は人界の摂理に順応できない。
自然淘汰による反作用が生じるからだ。
この世界の空気は彼らにとって毒となり、魔力も大幅に削がれる。
両足に装着したベレッタを持ち上げたジャックが、手癖のように両掌でくるりと回転させた。
彼は幼少期から銃と共にあったため、手に収まっているほうが落ち着くらしい。
「JUDGEが動いてる上に、そんな高位魔族までいるとしたら面倒だね」
「破壊の神か。確かに大層な肩書きだ」
ケースの中から煙草を一本咥えて抜き、白い指先に紅焔を灯すレインの視線は眼下に注がれている。
黒いブーツを染める鮮血と、生前の面影を失った無残な亡骸。
戦場も惨劇も寝食と同じといえるような、血の上に立つ仕事に就いてはいるものの、SNIPERはレインにとって家族同然。
何の手も打てず続けて身内殺しをされた自分に対する叱責は大きいが、対象に向ける瞋恚も強い。
感情を完全に切り離し、理性だけで組織を統治しているわけではない。
上辺では非情に徹しても、心までは不可能だ。
元々迫力過多なレインの雰囲気に一層凄みが増したのを感知しているのか、幹部たちは黙ってレインの決断を待命している。
軍事業界というアウェイに立ち、正面から中央政府に仇なすことができる男は、世界中にただ1人しか存在しない。
最強の兵器として生を受け、自身が最良の交渉手札でもある彼だけだ。
「ルシファーが完全に復活したとしても、魔族としての力は半減される。自然界の摂理が覆されない限りここは人の世界だ。無駄に恐れる必要はない」
床に焼き付けられた円陣を踏みつけたレインが、嫣然と足元に声を落とした。
「Naughty boy. You are so naughty――――I'm intoxicating you.」
(悪い子だ。悪戯が過ぎる――――思い知らせてやるよ)
「中央がシティで魔族召喚をやったのは間違いないよ」
頭に装着するタイプのヘッドホンのような端末に電源を入れ、片目に装着しているM.e(マイクロ・アイ)に立体映像が映し出されると、空中に滑らせた指先で敏捷に情報を移動していく。
「5分前のエントランスの様子と、シティでの召喚に関する情報渡しとくね〜」
レイン、ブラッド、幹部たちそれぞれの眼前にホログラムが映し出される。
M.e(マイクロ・アイ)はコンタクトのように直接瞳に装着して使用する通信機器で、レインをはじめ幹部全員が身に着けている。
プライベートな時間や通信を断ちたい場合は命じるだけで回路を遮断でき、再び作動させる場合もキーワードを囁くだけでいい。
この場にいる幹部だけでなく、離れた場所にいるシオウやイヴァにもM.eからの情報は届く。
慣れないうちは違和感を伴うが、熟れてしまえば非常に便利なツールだ。
「SIS、pentagon、CIA、WA(白軍)、GAD(ガーディアン)。膨大な量の情報が錯綜してる上に、召喚とか魔族に関する古文書の記録も浩瀚だったからさぁ。真偽の選別もしにくいとこなんだけど〜…まぁ結局、まとめると…」
「高位魔族の召喚。…破壊の神か」
「うん」
送信されたデータを卒読したレインが物憂げに瞳を閉じた。
未だ拭えない疑念を振り払うように首を振ると、小さく一笑する。
拭えないんじゃない――――拭いたくないんだ。
破壊神ルシファーなどという「魔王」が本当に存在し、尚且つ人の世に現れるという三流映画ばりの展開を想定してはいても、信じたくないというのが本音だった。
魔族の王なんてものが現世に現れたらお手上げだ。
エクソシストじゃあるまいし、彼らには神父の祈祷も効かない。
とはいえ、ここが人の世界である内はまだ勝機がある。
元々別の次元に存在する魔族は人界の摂理に順応できない。
自然淘汰による反作用が生じるからだ。
この世界の空気は彼らにとって毒となり、魔力も大幅に削がれる。
両足に装着したベレッタを持ち上げたジャックが、手癖のように両掌でくるりと回転させた。
彼は幼少期から銃と共にあったため、手に収まっているほうが落ち着くらしい。
「JUDGEが動いてる上に、そんな高位魔族までいるとしたら面倒だね」
「破壊の神か。確かに大層な肩書きだ」
ケースの中から煙草を一本咥えて抜き、白い指先に紅焔を灯すレインの視線は眼下に注がれている。
黒いブーツを染める鮮血と、生前の面影を失った無残な亡骸。
戦場も惨劇も寝食と同じといえるような、血の上に立つ仕事に就いてはいるものの、SNIPERはレインにとって家族同然。
何の手も打てず続けて身内殺しをされた自分に対する叱責は大きいが、対象に向ける瞋恚も強い。
感情を完全に切り離し、理性だけで組織を統治しているわけではない。
上辺では非情に徹しても、心までは不可能だ。
元々迫力過多なレインの雰囲気に一層凄みが増したのを感知しているのか、幹部たちは黙ってレインの決断を待命している。
軍事業界というアウェイに立ち、正面から中央政府に仇なすことができる男は、世界中にただ1人しか存在しない。
最強の兵器として生を受け、自身が最良の交渉手札でもある彼だけだ。
「ルシファーが完全に復活したとしても、魔族としての力は半減される。自然界の摂理が覆されない限りここは人の世界だ。無駄に恐れる必要はない」
床に焼き付けられた円陣を踏みつけたレインが、嫣然と足元に声を落とした。
「Naughty boy. You are so naughty――――I'm intoxicating you.」
(悪い子だ。悪戯が過ぎる――――思い知らせてやるよ)
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