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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
「―――シャツだ」
「ん?」
「一番上までボタンを止めてる」
「……。ああ…」
「おまえがそうやって着ているのは見たことがない」
困ったように一笑したブラッドが襟を掴んだ。
「外せば気が済むか?」
「……」
何かを言おうと、レインが口を開いたところで――――
警報が鳴った。
中央塔1階のエントランスロビーには、悚然としたシティの悪夢が再来していた。
往来の多いエントランスに居合わせた兵士や所員たち、配備されていた衛兵たちの死体で埋め尽くされた床は、彼らから吐出された血液で赤黒く染まっている。
顔を曇らせたレインの肩を叩いて、ブラッドが前へ進み出た。
エントランスは入り口から円を描く形になっており、天井は吹き抜けで上階が見渡せる。
中央塔という名の通り筒状のこの建物は、遥か天まで続く上階通路から各部署へ羽根を伸ばし連結している。
芳烈な血臭と腐敗臭に、燻る黒煙の焦げ臭さも加わっている。
壁に破損はなく、警報が鳴ったと同時にエントランスは他のフロアから遮断されていた。
侵入者を看過した気配はない。
仮にそうだとしても瞬間的に遮断されたフロアには外側からしか入れず、内側から脱出するには核の衝撃をも防ぐ防壁を破らなくてはならない。
「中まで被害が広がることはなさそうだな」
「……。あぁ」
憮然としたままレインが頷いた。
瞬時に血液を失いミイラ化した兵士たちの傍に膝をついて、そっと亡骸に触れる。
「―――…」
靴先が、濡れた音を立てた。
スーツが血に染まるのも構わず、徐に兵士たちに視線を流している。
暫く静観していたブラッドだったが、ゆっくりとレインに歩み寄って腕を掴むと、そのまま細い身体を引き上げた。
元帥として、総帥である彼が膝をつき俯いているのを黙認することはできない。
口を閉ざしたままのレインもそれは心得ているし、ブラッドの胸間も弁えていた。
「同じだな…」
ブラッドの呟きに小さく首肯し周囲を見渡したレインは、黒煙の立ち込めるロビーの中央、白い床に焼き付けられた丸い痕跡に目を留めた。
幾重にも重なった円の上に古代文字が羅列しているそれは、魔法陣という言葉を連想させる。
中心に描かれた文字を囲って円は外周へと連なり、禍々しい瘴気を放ち鈍く発光している。
円陣は直径で50メートルほどもあり、フロアに立ち込める邪気はそこから発せられているようだった。
「なんだあれは…」
「シティにあったのと同じだ」
倒れた兵士たちの間を縫って円陣に近づくレインを追いながら、ブラッドが言葉を続ける。
「シティにも同じ現象があった。おまえが来る少し前に、バンク駅付近で同じものを見た」
「全く同じ?」
「あぁ」
ブラッドが頷く。
「―――シャツだ」
「ん?」
「一番上までボタンを止めてる」
「……。ああ…」
「おまえがそうやって着ているのは見たことがない」
困ったように一笑したブラッドが襟を掴んだ。
「外せば気が済むか?」
「……」
何かを言おうと、レインが口を開いたところで――――
警報が鳴った。
中央塔1階のエントランスロビーには、悚然としたシティの悪夢が再来していた。
往来の多いエントランスに居合わせた兵士や所員たち、配備されていた衛兵たちの死体で埋め尽くされた床は、彼らから吐出された血液で赤黒く染まっている。
顔を曇らせたレインの肩を叩いて、ブラッドが前へ進み出た。
エントランスは入り口から円を描く形になっており、天井は吹き抜けで上階が見渡せる。
中央塔という名の通り筒状のこの建物は、遥か天まで続く上階通路から各部署へ羽根を伸ばし連結している。
芳烈な血臭と腐敗臭に、燻る黒煙の焦げ臭さも加わっている。
壁に破損はなく、警報が鳴ったと同時にエントランスは他のフロアから遮断されていた。
侵入者を看過した気配はない。
仮にそうだとしても瞬間的に遮断されたフロアには外側からしか入れず、内側から脱出するには核の衝撃をも防ぐ防壁を破らなくてはならない。
「中まで被害が広がることはなさそうだな」
「……。あぁ」
憮然としたままレインが頷いた。
瞬時に血液を失いミイラ化した兵士たちの傍に膝をついて、そっと亡骸に触れる。
「―――…」
靴先が、濡れた音を立てた。
スーツが血に染まるのも構わず、徐に兵士たちに視線を流している。
暫く静観していたブラッドだったが、ゆっくりとレインに歩み寄って腕を掴むと、そのまま細い身体を引き上げた。
元帥として、総帥である彼が膝をつき俯いているのを黙認することはできない。
口を閉ざしたままのレインもそれは心得ているし、ブラッドの胸間も弁えていた。
「同じだな…」
ブラッドの呟きに小さく首肯し周囲を見渡したレインは、黒煙の立ち込めるロビーの中央、白い床に焼き付けられた丸い痕跡に目を留めた。
幾重にも重なった円の上に古代文字が羅列しているそれは、魔法陣という言葉を連想させる。
中心に描かれた文字を囲って円は外周へと連なり、禍々しい瘴気を放ち鈍く発光している。
円陣は直径で50メートルほどもあり、フロアに立ち込める邪気はそこから発せられているようだった。
「なんだあれは…」
「シティにあったのと同じだ」
倒れた兵士たちの間を縫って円陣に近づくレインを追いながら、ブラッドが言葉を続ける。
「シティにも同じ現象があった。おまえが来る少し前に、バンク駅付近で同じものを見た」
「全く同じ?」
「あぁ」
ブラッドが頷く。
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