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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
一哉がいた場所、コンクリートが衝撃で削れて舞い上がった。
刀圧だけでコンクリートをプリンに変える少年の腕力には敵ながら驚嘆してしまう。
一哉を射たままの視線は常に一定、彼は視覚ではなく別の第六感で戦況を把握しているらしい。
潁脱した才能、生粋の「闇殺者」。
彼の全ては最早、鍛錬だけでどうこうなるレベルを超えている。
徐々にリズムを掴んできた一哉が、鋒を躱して少年の足下に身を滑らせた。
背後に回って振り向きざま、反動を利用して右足をしならせる。
少年が笑んだ。
待っていたかのように刀身を一哉の靴先に沿わせ、首に向かって軌道を貫く。
「っ…な…!」
美しい曲線を描き、真っ直ぐに一哉を捕らえてくる。
首を切り落とす寸前で流れを変えた刀が、一哉の右肩を深く穿った。
「っ…、…」
肩を貫通した刀が壁に突き刺さった。
骨の間を綺麗に貫いた鋒は、枷のように一哉を戒める。
「動かないほうがいいよ。あと5ミリずれたら神経が切れる。…骨ももたない」
壁に背を当てた一哉の首にもう一刀のふくらを当て、少年が小首を傾げた。
「弱いんだね。そんなレベルで俺に挑んできたの?」
「おまえなんか知らねぇよ。…っ、てぇな…。いきなり襲ってきやがって…」
少年が可愛らしい瞳を細めて鋒をすこしだけ一哉の喉に食い込ませると、皮膚を破る厭な音がした。
首筋に血が伝い落ちる。
「シラ切ってもいいことないよ?首ってのはやたら血が出るとこだ。…切断しちゃえば新人類のあんたでも死ぬ」
「っ……」
「俺の質問に答えられるよね?藤間一哉。おまえみたいな小物の命なんか、俺は欲しくもないんだ」
鷹揚と一哉を正視した少年が、ゆっくりと言葉をつなぐ。
「レインのなにを知ってる。…なにが目的?」
「レイン?」
強風が吹き抜けた。
落陽に照らされた少年の柔らかい髪が一哉の鼻先で揺れる。
不利な状況でも勝機を窺い、常に冷静であるのは一哉の特性だ。
こんな場面でも彼の思考は静かに胎動している。
少年の具(つぶさ)も看過しまいと隙を狙いながら、慎重に言葉を放つ。
「おまえ、幹部か…ナイプの」
「今更とぼける?俺にプレゼントしてくれただろ…わざわざ、ご指名で」
片時の沈黙を挟み、一哉が声を発した。
「レインのなにが映ってた」
「……」
少年が短く切るように息を吐き捨てる。
一哉の口が動くのと同時に瞳孔が開き、眉根が動くのを彼は目視していた。
短縮したごく短い言葉を返してきたし、視線もしっかりと合わせたままだった。
身体には自分の意思では動かすことのできない部分がある。
彼が尋問や拷問に耐えうる技術を身につけていたとしても、脳神経から伝わる信号までコントロールすることは極めて難しい。切迫した状況となれば尚更だ。
刀を引いた少年が、静かに髪を乱し上げた。
「ご丁寧に待ち合わせ場所まで指定されてたから、わざわざ罠に嵌りに来たんだけど…ほんとに一切関わって無いんだね」
「場所?学校(ここ)かよ?…なんで俺が」
一哉がいた場所、コンクリートが衝撃で削れて舞い上がった。
刀圧だけでコンクリートをプリンに変える少年の腕力には敵ながら驚嘆してしまう。
一哉を射たままの視線は常に一定、彼は視覚ではなく別の第六感で戦況を把握しているらしい。
潁脱した才能、生粋の「闇殺者」。
彼の全ては最早、鍛錬だけでどうこうなるレベルを超えている。
徐々にリズムを掴んできた一哉が、鋒を躱して少年の足下に身を滑らせた。
背後に回って振り向きざま、反動を利用して右足をしならせる。
少年が笑んだ。
待っていたかのように刀身を一哉の靴先に沿わせ、首に向かって軌道を貫く。
「っ…な…!」
美しい曲線を描き、真っ直ぐに一哉を捕らえてくる。
首を切り落とす寸前で流れを変えた刀が、一哉の右肩を深く穿った。
「っ…、…」
肩を貫通した刀が壁に突き刺さった。
骨の間を綺麗に貫いた鋒は、枷のように一哉を戒める。
「動かないほうがいいよ。あと5ミリずれたら神経が切れる。…骨ももたない」
壁に背を当てた一哉の首にもう一刀のふくらを当て、少年が小首を傾げた。
「弱いんだね。そんなレベルで俺に挑んできたの?」
「おまえなんか知らねぇよ。…っ、てぇな…。いきなり襲ってきやがって…」
少年が可愛らしい瞳を細めて鋒をすこしだけ一哉の喉に食い込ませると、皮膚を破る厭な音がした。
首筋に血が伝い落ちる。
「シラ切ってもいいことないよ?首ってのはやたら血が出るとこだ。…切断しちゃえば新人類のあんたでも死ぬ」
「っ……」
「俺の質問に答えられるよね?藤間一哉。おまえみたいな小物の命なんか、俺は欲しくもないんだ」
鷹揚と一哉を正視した少年が、ゆっくりと言葉をつなぐ。
「レインのなにを知ってる。…なにが目的?」
「レイン?」
強風が吹き抜けた。
落陽に照らされた少年の柔らかい髪が一哉の鼻先で揺れる。
不利な状況でも勝機を窺い、常に冷静であるのは一哉の特性だ。
こんな場面でも彼の思考は静かに胎動している。
少年の具(つぶさ)も看過しまいと隙を狙いながら、慎重に言葉を放つ。
「おまえ、幹部か…ナイプの」
「今更とぼける?俺にプレゼントしてくれただろ…わざわざ、ご指名で」
片時の沈黙を挟み、一哉が声を発した。
「レインのなにが映ってた」
「……」
少年が短く切るように息を吐き捨てる。
一哉の口が動くのと同時に瞳孔が開き、眉根が動くのを彼は目視していた。
短縮したごく短い言葉を返してきたし、視線もしっかりと合わせたままだった。
身体には自分の意思では動かすことのできない部分がある。
彼が尋問や拷問に耐えうる技術を身につけていたとしても、脳神経から伝わる信号までコントロールすることは極めて難しい。切迫した状況となれば尚更だ。
刀を引いた少年が、静かに髪を乱し上げた。
「ご丁寧に待ち合わせ場所まで指定されてたから、わざわざ罠に嵌りに来たんだけど…ほんとに一切関わって無いんだね」
「場所?学校(ここ)かよ?…なんで俺が」
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