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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
不死である魔物は魂こそ死なないが、核を打ち抜かれれば魔力を失いかたちを具現できなくなる。
漂うだけの幽鬼と成り果て、静寂の闇を苦痛と共に彷徨うしかない。
レインのフォースを喰らうことに熱中したあまりか、女の魔核はあまりにも無防備に露呈していた。
核の喪失は撃砕と同意だった。
女の躯が風船のように破裂して四散する。
黒い粒子が暫く赤土に残っていたが、それもやがて蒸化し消え失せた。
眩暈。
溢れ出た汗が地面に落ちた。息が上がる。
瘴気に参ってきた身体では一応にも呼吸を整えることができない。
フォースの消失が大気の毒に追いつかなくなっている。傷の治癒も儘ならない有様に微苦笑しながらも、伸ばした隻手でレインを抱き寄せた。
自身の身体で護るように抱擁し膝をつく。
「Vegasの女神に嫉妬でもされたか?賭けにはめっぽう強いおまえが…らしくもなくgot soaked(一文無し)だな」
「…、……ッ、…」
苦悶に喘ぐレインは項垂れたままで言葉を放てない。
いつもなら瞬時に完治してしまうだろう咬傷からは赤い血が大量に吐出している。
女の牙は柔らかな肉に食い込んで動脈をも突き破ったらしい。
内頸動脈を破損したまま長時間この場所に留まることになったとしたら、フォースを補えないレインはもたない――――死ぬ。
「動くなよ。今…」
「っ……、……ろ」
「ん?」
汗の滴る黒髪。
薄く瞳を開いたレインが突如ブラッドを突き飛ばした。
「レイ…」
「っ……は、……離れ…」
黒焔。
レインに近づこうとしたブラッドを黒焔が阻んだ。
レインの身体から弾き出されたように見えたそれは、数多の魂の悲鳴や呻きと共に闇空(そら)に吸い込まれ昇っていく。
「な…」
黒柱の如く立ち昇った焔が視界一面に広がって――――落ちてくる。
闇は一斉に、ブラッドの総身に降り落ちた。
空気が急激に冷えた。
大気の重圧から突然解放された身体がバランスを失って前のめりになる。
「……っ」
ついた手が触れたのは固い亡骸だった。
体内の血液を全て抜き取られたミイラが眼下に広がる。
それは累積し隙間なくコンクリートを埋め尽くしていた。
視界を覆うような濃霧は冷たい空気と混じり合い、灼熱の大気に焼かれた褐色の肌をひんやりと包む。
「……」
警戒を緩めないまま立ち上がり、まだ軋む身体を確認しながら周囲を一望する。
焔を身体に浴びたと思ったが熱は感じなかった。火傷にもなっていない。
幻覚の類だったのだろうかと一考していたブラッドは、バンク駅入り口の階段付近に倒れた人影に目を留めた。
安堵の吐息を漏らしながらも急いで歩み寄る。
不死である魔物は魂こそ死なないが、核を打ち抜かれれば魔力を失いかたちを具現できなくなる。
漂うだけの幽鬼と成り果て、静寂の闇を苦痛と共に彷徨うしかない。
レインのフォースを喰らうことに熱中したあまりか、女の魔核はあまりにも無防備に露呈していた。
核の喪失は撃砕と同意だった。
女の躯が風船のように破裂して四散する。
黒い粒子が暫く赤土に残っていたが、それもやがて蒸化し消え失せた。
眩暈。
溢れ出た汗が地面に落ちた。息が上がる。
瘴気に参ってきた身体では一応にも呼吸を整えることができない。
フォースの消失が大気の毒に追いつかなくなっている。傷の治癒も儘ならない有様に微苦笑しながらも、伸ばした隻手でレインを抱き寄せた。
自身の身体で護るように抱擁し膝をつく。
「Vegasの女神に嫉妬でもされたか?賭けにはめっぽう強いおまえが…らしくもなくgot soaked(一文無し)だな」
「…、……ッ、…」
苦悶に喘ぐレインは項垂れたままで言葉を放てない。
いつもなら瞬時に完治してしまうだろう咬傷からは赤い血が大量に吐出している。
女の牙は柔らかな肉に食い込んで動脈をも突き破ったらしい。
内頸動脈を破損したまま長時間この場所に留まることになったとしたら、フォースを補えないレインはもたない――――死ぬ。
「動くなよ。今…」
「っ……、……ろ」
「ん?」
汗の滴る黒髪。
薄く瞳を開いたレインが突如ブラッドを突き飛ばした。
「レイ…」
「っ……は、……離れ…」
黒焔。
レインに近づこうとしたブラッドを黒焔が阻んだ。
レインの身体から弾き出されたように見えたそれは、数多の魂の悲鳴や呻きと共に闇空(そら)に吸い込まれ昇っていく。
「な…」
黒柱の如く立ち昇った焔が視界一面に広がって――――落ちてくる。
闇は一斉に、ブラッドの総身に降り落ちた。
空気が急激に冷えた。
大気の重圧から突然解放された身体がバランスを失って前のめりになる。
「……っ」
ついた手が触れたのは固い亡骸だった。
体内の血液を全て抜き取られたミイラが眼下に広がる。
それは累積し隙間なくコンクリートを埋め尽くしていた。
視界を覆うような濃霧は冷たい空気と混じり合い、灼熱の大気に焼かれた褐色の肌をひんやりと包む。
「……」
警戒を緩めないまま立ち上がり、まだ軋む身体を確認しながら周囲を一望する。
焔を身体に浴びたと思ったが熱は感じなかった。火傷にもなっていない。
幻覚の類だったのだろうかと一考していたブラッドは、バンク駅入り口の階段付近に倒れた人影に目を留めた。
安堵の吐息を漏らしながらも急いで歩み寄る。
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