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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
「熱い…あつい」
「!?」
人の声、白人の女性。
さっきまで魔物にしか見えなかったその女の顔が、苦痛に歪んでいる…。
『どんな血の色?』
気を奪われたレインの背後に、もう一人の女が立っていた。
能面のような顔の口元だけが裂けて哄笑した。
喧しい女のノイズが脳内で反響して、耳元に死の吐息がかかる。
「っ…!!」
針を刺されたような疼痛が首筋に走った。
反射的に女の髪を掴んだレインの足に、さっきまで人だったはずのもう一体が腕力の限りにしがみついてくる。
焼け爛れた形相で唸るそれは、すでに女でも人でもない。
『あつい、ああ、あ熱い…?熱くない。痛くな…な…ななな』
耳を劈くような嬌笑、音がぶれて反響する。
首に噛み付いた女が、流れ出たレインの血を啜ってケタケタと蛙のように嗤った。
『綺麗な色、きれいな首、きき、き…ききれい。赤い、あか、かか』
「……っ、の…!」
唸りを上げた焔がふたつの女の身体を包んだ。
レインを護るようにして立ち上った紅龍が焔に包まれた女ふたりの身体に更に圧し掛かる。
紅い業火は口を開き、一瞬で女の身体を噛み食らった。
「Fuck…!」
緩慢な所作で首元に手を当てたレインがよろめいた。
どうやら目算がだいぶ外れてしまったらしい――――眩暈だ。
噛みつかれた場所から大量に血液とフォースを吸われた。
いやな汗が頬を伝う。
足元がふらつくものの、それを表出したくなくて踏みとどまる。
思うように身体が動かない。 ここの外気は毒気に溢れている。ただ息を吸うだけで肺の回復を必要とし、通常の何倍ものフォースを消費してしまう。
すこし焔を出力しただけで意識がぶれそうになるのが信じられなくて唇を噛む。
紅焔は女の身体を包んだまま躍っている。
この状況で――――戦場でレインを護るのは常にフォースだ。
能力者ならばフォースを使って戦うのが必定とはいえ、戦場に立っている能力者の殆どは自身の肉体も練磨している。
フォースだけで全てを補えるほど恵まれた資質を持っているケースは1%にも満たない。
その稀有な1人としての天佑に甘んじていたという自覚はレインには無かったが、鍛錬を積まずに最強の冠を手にしてしまったのは事実だった。
「フォースさえ無きゃ、てめぇなんかメじゃねぇ」
一哉の声がレインの脳裏で反芻した。
「?」
熱い。
灼けるような熱を感じて、レインが右肩を押さえた。
「…っ、…ぅ」
刻印が。
腕に刻まれた赤い刻印が…肌を食い破るように身体の奥に沈下する感覚。
たまらずに膝をついたレインの正面で、唸りをあげていた焔が消えた。
けらけらと嗤う女の声がする。
激痛。
心臓を掴まれたような息苦しさに悶える身体から汗が流れ落ちて…動けない。
『あつかった、あつい。ひどい人間、にんげん?』
「熱い…あつい」
「!?」
人の声、白人の女性。
さっきまで魔物にしか見えなかったその女の顔が、苦痛に歪んでいる…。
『どんな血の色?』
気を奪われたレインの背後に、もう一人の女が立っていた。
能面のような顔の口元だけが裂けて哄笑した。
喧しい女のノイズが脳内で反響して、耳元に死の吐息がかかる。
「っ…!!」
針を刺されたような疼痛が首筋に走った。
反射的に女の髪を掴んだレインの足に、さっきまで人だったはずのもう一体が腕力の限りにしがみついてくる。
焼け爛れた形相で唸るそれは、すでに女でも人でもない。
『あつい、ああ、あ熱い…?熱くない。痛くな…な…ななな』
耳を劈くような嬌笑、音がぶれて反響する。
首に噛み付いた女が、流れ出たレインの血を啜ってケタケタと蛙のように嗤った。
『綺麗な色、きれいな首、きき、き…ききれい。赤い、あか、かか』
「……っ、の…!」
唸りを上げた焔がふたつの女の身体を包んだ。
レインを護るようにして立ち上った紅龍が焔に包まれた女ふたりの身体に更に圧し掛かる。
紅い業火は口を開き、一瞬で女の身体を噛み食らった。
「Fuck…!」
緩慢な所作で首元に手を当てたレインがよろめいた。
どうやら目算がだいぶ外れてしまったらしい――――眩暈だ。
噛みつかれた場所から大量に血液とフォースを吸われた。
いやな汗が頬を伝う。
足元がふらつくものの、それを表出したくなくて踏みとどまる。
思うように身体が動かない。 ここの外気は毒気に溢れている。ただ息を吸うだけで肺の回復を必要とし、通常の何倍ものフォースを消費してしまう。
すこし焔を出力しただけで意識がぶれそうになるのが信じられなくて唇を噛む。
紅焔は女の身体を包んだまま躍っている。
この状況で――――戦場でレインを護るのは常にフォースだ。
能力者ならばフォースを使って戦うのが必定とはいえ、戦場に立っている能力者の殆どは自身の肉体も練磨している。
フォースだけで全てを補えるほど恵まれた資質を持っているケースは1%にも満たない。
その稀有な1人としての天佑に甘んじていたという自覚はレインには無かったが、鍛錬を積まずに最強の冠を手にしてしまったのは事実だった。
「フォースさえ無きゃ、てめぇなんかメじゃねぇ」
一哉の声がレインの脳裏で反芻した。
「?」
熱い。
灼けるような熱を感じて、レインが右肩を押さえた。
「…っ、…ぅ」
刻印が。
腕に刻まれた赤い刻印が…肌を食い破るように身体の奥に沈下する感覚。
たまらずに膝をついたレインの正面で、唸りをあげていた焔が消えた。
けらけらと嗤う女の声がする。
激痛。
心臓を掴まれたような息苦しさに悶える身体から汗が流れ落ちて…動けない。
『あつかった、あつい。ひどい人間、にんげん?』
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