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SCENE SECTION
01.死焔 / 02.絡想 / 03.砕願 / 04.対撃・救戯・要塞 / 05.喪失 /
DOLCE&GABBANAのスーツとLORDSのループシャツで包んだ華奢なシルエットを、CHROME HEARTSのベルトとシルバーバックルが雄々しく魅せている。
怖気を震う凄愴な戦場には大概場慣れているし馴致したと思い做していたレインだが、こんなに大量の血液を見たのは初めてだった。
霧の中に漂う毒は瘴気に酷似している。
常人なら1分ともたずに転がり命を失うであろう環境の中でも、嘆息まじりに黒髪を乱し上げるレインに異変は見られない。
新人類である彼は「特別製」だった。
水を打った静寂の中に視線をめぐらせていると、濃厚な血臭と毒気に満ちた白い景色の中から、こちらに走り寄る重い足音が聞こえてきた。
「来たか」
濃霧の中から現れたのは、黒い特殊防護服に身を包んだ特殊部隊員たちだった。
あらゆる兵器から身を守る為に設計されたバトル・スーツは過酷な訓練を積んだごく一部のコンバタントにしか与えられない装備で、最も危険な兵器を使用したフィールドにのみ行使される。
対生物兵器用のマスクを装着した数人が、物々しい様相でレインの前に整列した。
「閉鎖区域内での生存者の捜索とモニュメント駅周辺の調査を頼む。息があれば民間人でも他機関でも構わん。本部へ移送して救護しろ。僅かにでも違和感があればすぐに退去、濃霧の原因が明らかになるまで銃器の使用は禁止だ」
「Yes, sir! 」
戦闘員たちが地下鉄バンク駅へと下りていき、 その彼らと入れ違うようにシティ周辺を見回っていたブラッドが戻ってきた。
軍服の上着だけ引っ掛け、ディアヘッドつきのベルトにGRN APPLE TREEのブラックジーンズ、LONE ONESのネックレスとコンバットブーツというラフな格好で現れた彼からは警戒心の欠片も見受けられない。
防毒マスクを着用する代わりに身につけていたGUCCIのサングラスを飄々と外して、臆面も無く血溜りの中に歩を運んでいる。
ブラッドは細菌や微小な構造体に対する耐性が異常に強く、生物兵器を使用する戦闘に参戦しても装備的な防御を一切しない。
それで通ってきているだけに、の態度なのだろうが、レインが半ば呆れたように閉口してしまうのも無理はなかった。
こんなに異常な状況はない。初めてだ……幾多の対革命戦に参戦してきたレインが困惑するほどシティの惨状は奇怪だ。
これが本当に人の手に拠るものだというなら、人類はいよいよ不可侵領域に突入してしまったことになる。
現地の映像を見た時点でそんなことは明白だっただろうに、それでも尚、ブラッドには自身の能力のほうが上だという過信があるらしい。
この男の飄逸さというか、豪胆さには呆れてしまう。
「全滅か」
答えの明白な問いだったが、レインは一応尋ねていた。
先だってシティに派遣していた部隊のことだ。
彼らを兵用した時、まだシティは生きていた。
生物兵器を考慮し特殊能力者を急選抜したチームだったが、この霧はただのNBCAではない。
彼らがまだ息をし、両足で立っている可能性は…。
「あぁ」
苦い表情を浮かべたブラッドが頷いた。
数メートル先が見えないほどの濃霧。エアロゾル化された何らかの毒素がこの霧を媒体として一気に散布されたのは間違いない。
倒れた遺体に触れたレインが、その男の顔を見て微かに柳眉を寄せた。
DOLCE&GABBANAのスーツとLORDSのループシャツで包んだ華奢なシルエットを、CHROME HEARTSのベルトとシルバーバックルが雄々しく魅せている。
怖気を震う凄愴な戦場には大概場慣れているし馴致したと思い做していたレインだが、こんなに大量の血液を見たのは初めてだった。
霧の中に漂う毒は瘴気に酷似している。
常人なら1分ともたずに転がり命を失うであろう環境の中でも、嘆息まじりに黒髪を乱し上げるレインに異変は見られない。
新人類である彼は「特別製」だった。
水を打った静寂の中に視線をめぐらせていると、濃厚な血臭と毒気に満ちた白い景色の中から、こちらに走り寄る重い足音が聞こえてきた。
「来たか」
濃霧の中から現れたのは、黒い特殊防護服に身を包んだ特殊部隊員たちだった。
あらゆる兵器から身を守る為に設計されたバトル・スーツは過酷な訓練を積んだごく一部のコンバタントにしか与えられない装備で、最も危険な兵器を使用したフィールドにのみ行使される。
対生物兵器用のマスクを装着した数人が、物々しい様相でレインの前に整列した。
「閉鎖区域内での生存者の捜索とモニュメント駅周辺の調査を頼む。息があれば民間人でも他機関でも構わん。本部へ移送して救護しろ。僅かにでも違和感があればすぐに退去、濃霧の原因が明らかになるまで銃器の使用は禁止だ」
「Yes, sir! 」
戦闘員たちが地下鉄バンク駅へと下りていき、 その彼らと入れ違うようにシティ周辺を見回っていたブラッドが戻ってきた。
軍服の上着だけ引っ掛け、ディアヘッドつきのベルトにGRN APPLE TREEのブラックジーンズ、LONE ONESのネックレスとコンバットブーツというラフな格好で現れた彼からは警戒心の欠片も見受けられない。
防毒マスクを着用する代わりに身につけていたGUCCIのサングラスを飄々と外して、臆面も無く血溜りの中に歩を運んでいる。
ブラッドは細菌や微小な構造体に対する耐性が異常に強く、生物兵器を使用する戦闘に参戦しても装備的な防御を一切しない。
それで通ってきているだけに、の態度なのだろうが、レインが半ば呆れたように閉口してしまうのも無理はなかった。
こんなに異常な状況はない。初めてだ……幾多の対革命戦に参戦してきたレインが困惑するほどシティの惨状は奇怪だ。
これが本当に人の手に拠るものだというなら、人類はいよいよ不可侵領域に突入してしまったことになる。
現地の映像を見た時点でそんなことは明白だっただろうに、それでも尚、ブラッドには自身の能力のほうが上だという過信があるらしい。
この男の飄逸さというか、豪胆さには呆れてしまう。
「全滅か」
答えの明白な問いだったが、レインは一応尋ねていた。
先だってシティに派遣していた部隊のことだ。
彼らを兵用した時、まだシティは生きていた。
生物兵器を考慮し特殊能力者を急選抜したチームだったが、この霧はただのNBCAではない。
彼らがまだ息をし、両足で立っている可能性は…。
「あぁ」
苦い表情を浮かべたブラッドが頷いた。
数メートル先が見えないほどの濃霧。エアロゾル化された何らかの毒素がこの霧を媒体として一気に散布されたのは間違いない。
倒れた遺体に触れたレインが、その男の顔を見て微かに柳眉を寄せた。
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