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SCENE SECTION
01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 /
06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人
「…え?」
「ちゃんと教えろよ。言わせてやるから」
「っ…え…、っ…ちょっ…」
包み込むように抱きしめられる。
身構えていたのに反して、温かくて…優しい抱擁。
レインが瞳を上げた。
すぐ近くで、視線が合う。
ゆっくりと、触れるだけのキス。
「――――愛してる」
「…え」
初めての言葉。
いままで一度だって聞けなかった言葉。
信じられなくて――――ただ呆然と、ブラッドを見上げる。
照れたように、ブラッドが笑んだ。
「愛なんてのより強烈だけどな。おまえは」
「……」
「愛してるよ…レイン」
「……」
愛してる。
そう言い返したかったものの、言葉が詰まってしまって。
ブラッドのキスで塞がれて、結局言えないまま――――身体を交わらせる。
言ったことも、言われたこともない言葉。
はじめてそれを聞いたのが、ブラッドの声だったこと。
ただそれで、胸がいっぱいで…言葉が出なかった。
ヴァージニア州アーリントン。
国防総省のすぐそば、ベゼスタの街に、スナイパーの本部がある。
部下たちに指示を出し終えたシオウが医務室に向かおうと足を踏み出したところで、前方からこちらに歩いてくる直樹と目が合った。
黒い防護服に、腰から下げた朱と黒の2本の忍刀。
これから仕事に向かうところらしい。
「熱心だね中将。お見舞い?」
「…制圧か」
医務室の前で足を止めて、2人が向き合う。
「内戦のね。1時間もあれば片付く」
「……」
シオウが医務室の扉に手を伸ばした。
その手を、直樹の言葉が止める。「方驍氷(ファン・シャオビン)。あいつどう思う」
「どう考えたって不自然だ。JUDGEが俺たちに捕まるなんて」
「……」
「氷の能力者(ブリジット・マスター)なんて存在しない。少なくとも――――あいつじゃない。そう思わない?」
「……人工的につくられたものだと言いたいのか」
「断定はしねぇよ。…でも不自然だ」
「……」
シオウが頷いた。
「あいつはJUDGEじゃない」
実力はあった。が――――「条件」が違う。
JUDGEは、魔に転生する手前の人間の集まり。全員が魔物と契約を結んでいる。
だが、驍氷は違う。
魔と契約を結んだもの独特の瘴気が、禍々しさがない。
「あいつは危険だ。レインにとって…そんな気がする。」
直樹が俯く。
「本当ならここに――――内部に連れ込むなんて考えられない。でも、レインがそう望んだから…」
「……」
レインは焦っている――――なにかをひどく、恐れている。
幹部たちは、近頃のレインの様子がおかしいことに気がついている。
本人はそれを隠しているし、気丈に振舞って見せてはいるものの。
なにかが彼を「崩した」。
それは確かだった。
「厭な予感がするんだ」
直樹の言葉。
勘のいい彼の予感は、当たる事が多い。
「俺たちは、たぶん…」
「俺は、レイン以外に従うつもりはない」
言葉を遮るように。
シオウが直樹を見つめた。
「レインは天才だ。だが身に負っているものが重い。――――俺たちがレインの決断の妨げになるようなら、俺はここから去る」
「…中将」
「護らなくてはならないものは、時に重荷になる」
「……」
「万が一の事態があるなら」
すこし間を空けてから、シオウが言う。
「…想定してるはずだ」
危険だとわかっていても、レインがそうするなら。
その思惑を汲んだ上で、信じるしかない。
何をするのが最良なのかを、自分たちで――――見極めるしかない。
「解ってるだろう、直樹」
「……。まぁね」
「同じだ」
解ってる。
なぜ、直樹がこんなことを確認したのか。
――――おまえだけじゃない。
みんな、同じように考えてる。
幹部の誰かの口から、そう聞きたいからだ。
「――――迷うな」
「…………。うん」
「少将はどう」
ふと、シオウが眉根を寄せた。
直樹が表情を曇らせる。
「なんだよ。まさか――――」
「……」
シオウが片手を持ち上げた。
「ん?」
直樹が視線を落とす。
シオウが持っているもの。
コンビニらしき袋に入った、大量の…。
「コンビニ、弁当?」
「痛ぇな!!てめぇ、サド女っ!!…痛ッ」
「煩いお猿さんだこと」
「誰がサ…っいててててっ」
身体の中に入り込んでいた弾丸のひとつを、女性らしい綺麗な手で豪快に引き抜く。
SNIPERのメイン・ドクター、瑠璃・De・Morgan(ルリ・ド・モルガン)。
「…え?」
「ちゃんと教えろよ。言わせてやるから」
「っ…え…、っ…ちょっ…」
包み込むように抱きしめられる。
身構えていたのに反して、温かくて…優しい抱擁。
レインが瞳を上げた。
すぐ近くで、視線が合う。
ゆっくりと、触れるだけのキス。
「――――愛してる」
「…え」
初めての言葉。
いままで一度だって聞けなかった言葉。
信じられなくて――――ただ呆然と、ブラッドを見上げる。
照れたように、ブラッドが笑んだ。
「愛なんてのより強烈だけどな。おまえは」
「……」
「愛してるよ…レイン」
「……」
愛してる。
そう言い返したかったものの、言葉が詰まってしまって。
ブラッドのキスで塞がれて、結局言えないまま――――身体を交わらせる。
言ったことも、言われたこともない言葉。
はじめてそれを聞いたのが、ブラッドの声だったこと。
ただそれで、胸がいっぱいで…言葉が出なかった。
ヴァージニア州アーリントン。
国防総省のすぐそば、ベゼスタの街に、スナイパーの本部がある。
部下たちに指示を出し終えたシオウが医務室に向かおうと足を踏み出したところで、前方からこちらに歩いてくる直樹と目が合った。
黒い防護服に、腰から下げた朱と黒の2本の忍刀。
これから仕事に向かうところらしい。
「熱心だね中将。お見舞い?」
「…制圧か」
医務室の前で足を止めて、2人が向き合う。
「内戦のね。1時間もあれば片付く」
「……」
シオウが医務室の扉に手を伸ばした。
その手を、直樹の言葉が止める。「方驍氷(ファン・シャオビン)。あいつどう思う」
「どう考えたって不自然だ。JUDGEが俺たちに捕まるなんて」
「……」
「氷の能力者(ブリジット・マスター)なんて存在しない。少なくとも――――あいつじゃない。そう思わない?」
「……人工的につくられたものだと言いたいのか」
「断定はしねぇよ。…でも不自然だ」
「……」
シオウが頷いた。
「あいつはJUDGEじゃない」
実力はあった。が――――「条件」が違う。
JUDGEは、魔に転生する手前の人間の集まり。全員が魔物と契約を結んでいる。
だが、驍氷は違う。
魔と契約を結んだもの独特の瘴気が、禍々しさがない。
「あいつは危険だ。レインにとって…そんな気がする。」
直樹が俯く。
「本当ならここに――――内部に連れ込むなんて考えられない。でも、レインがそう望んだから…」
「……」
レインは焦っている――――なにかをひどく、恐れている。
幹部たちは、近頃のレインの様子がおかしいことに気がついている。
本人はそれを隠しているし、気丈に振舞って見せてはいるものの。
なにかが彼を「崩した」。
それは確かだった。
「厭な予感がするんだ」
直樹の言葉。
勘のいい彼の予感は、当たる事が多い。
「俺たちは、たぶん…」
「俺は、レイン以外に従うつもりはない」
言葉を遮るように。
シオウが直樹を見つめた。
「レインは天才だ。だが身に負っているものが重い。――――俺たちがレインの決断の妨げになるようなら、俺はここから去る」
「…中将」
「護らなくてはならないものは、時に重荷になる」
「……」
「万が一の事態があるなら」
すこし間を空けてから、シオウが言う。
「…想定してるはずだ」
危険だとわかっていても、レインがそうするなら。
その思惑を汲んだ上で、信じるしかない。
何をするのが最良なのかを、自分たちで――――見極めるしかない。
「解ってるだろう、直樹」
「……。まぁね」
「同じだ」
解ってる。
なぜ、直樹がこんなことを確認したのか。
――――おまえだけじゃない。
みんな、同じように考えてる。
幹部の誰かの口から、そう聞きたいからだ。
「――――迷うな」
「…………。うん」
「少将はどう」
ふと、シオウが眉根を寄せた。
直樹が表情を曇らせる。
「なんだよ。まさか――――」
「……」
シオウが片手を持ち上げた。
「ん?」
直樹が視線を落とす。
シオウが持っているもの。
コンビニらしき袋に入った、大量の…。
「コンビニ、弁当?」
「痛ぇな!!てめぇ、サド女っ!!…痛ッ」
「煩いお猿さんだこと」
「誰がサ…っいててててっ」
身体の中に入り込んでいた弾丸のひとつを、女性らしい綺麗な手で豪快に引き抜く。
SNIPERのメイン・ドクター、瑠璃・De・Morgan(ルリ・ド・モルガン)。
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