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SCENE SECTION
01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 /
06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人
「ブラッ、ド…」
弱々しくブラッドの背中を抱く。
元々ハスキーなレインの声が、甘く掠れる。
「――――っ、…ブラッド…」
紅い瞳から、大粒の涙が零れた。
「俺を……」
「――――殺してくれ…」
満たされていく。
フォースが回復して、急激に…身体が満たされていくのが解る。
浅ましい。
この身体が、自分自身が――――忌まわしい。
こんなふうにいつまで、ブラッドを縛り付けるんだろう。
俺は――――
俺はブラッドにとってきっと、負担にしかならない。
こいつは優しいから。
いつだって、口にも態度にも出さないけど…。
翠色の、生命力に満ちた双眸。
ブラッドがじっと、レインを見つめる。
脅えたようにしながらも、レインは視線をそらさない。
見つめてもう一度、かすかに声を漏らす。
「…頼む」
「……」
「ブラッド…」
華奢な身体が、小刻みに震える。
「俺は…汚い。おまえに触れられる資格なんてない」
「……」
「快感を感じてた。虐げられることに、身体が…。…っ、あんな…俺は…っ」
涙声。
嗚咽交じりに、肩を震わせる。
「自分が…わからない。…なにも考えたくない…」
「……」
「いやだ…こわいんだ」
「――――レイン」
「あんな、姿を――――おまえが…おまえに蔑まれるくらいなら…っ、俺は」
「…レイン」
「いやだ……、っ…いやだ。嫌われるくらいなら、俺は」
「レイン!」
息が止まりそうなくらい強く、抱き寄せられる。
暖かい。
ブラッドの体温が――――大きな手が。
感じられるだけで、こんなに。
――――涙があふれてしまう。
「どうして…なんだ」
混乱する思考をどうしていいのか解らないまま、レインが言う。
「おまえが…。…っ…なんで、こんなに…」
縛り付けたくないのに。
――――なんで、離れられないんだ。
「言っただろう」
ブラッドの声。
いつも通りの落ち着いた声。
「焦ったって、いいことないって。――――ちゃんと聞いてたのか、おまえ」
「……」
「莫迦野郎。死ぬほど心配させやがって」
「――――だ、っ…て」
「そんなに俺と離れたいか」
まだ震えている細い身体を、しっかりと――――強すぎるくらいの力で抱き寄せる。
「俺は俺の意志でここにいるんだ、レイン」
「……」
「嫌いになんて――――なれるわけないだろ」
「――…ブラッ、ド」
「おまえの痛みは、きっと解ってやれない。…俺はおまえじゃないから」
どんなに強くあっても、どんなに虚勢を張っていても。
レインがただの人間で、一人でなんて生きられないことくらい知ってる。
俺だってそうだ。
人は誰だって、一人でなんて生きられない。
「だけど…傍にいる」
静かな口調。
ゆっくりと、レインを落ち着かせるように…長い指が髪を撫でる。
「惚れてんだよ、おまえに」
「……」
「傍にいたいんだ…レイン」
「……」
「――――ここにいてくれ」
「……、……っ」
やめてくれ。
――――そんなこと――――そんなふうに、言われたら。
俺は。
「っ…わかってないんだ…おまえは――――なにも」
「そうだな。ごめん」
「謝るな…、っ…おまえは、ずるい」
「――――そうだな」
「……っ、……」
ブラッドの背中を、強く――――抱きしめる。
ダメだ。
こんなに、俺は――――こいつが。
息が苦しいくらい強く抱き合ったまま、しばらくじっと、互いの体温を確かめ合う。
一人でいるときにはあんなに不安で、余計なことばかり考えてしまうのに。
生きている価値なんてないと思うのに。
ブラッドがこうやって、触れてくれるだけで……まだ生きたいと、そう思ってしまう。
強く、なりたい。
ブラッドにとって、俺が――――そんな存在であるように。
――――大切な人を護れるだけ、強く。
すこしだけ身体を離したブラッドが鼻先を合わせてきて……優しく唇を重ねてくる。
確かめるみたいなキス。
心地よくて目を綴じたレインの髪を、大きな手が撫でてくる。
――――そうなんだ。
ブラッドは揺るがない。どんなときも必ず、俺を信じてくれる。
――――愛してくれる。
「大失態だったな…エル総帥」
意地の悪い声。
レインの耳朶を噛んで、首筋にキスして。
瞳の近くで、ブラッドが口角を上げた。
「そんなに大人数とセックスしたかったなら、言ってくれよ。幹部はみんな大歓迎だぜ」
「っ……!!!き、キサマ…っ、言っていい冗談と、悪い冗談が…っ」
「そのとおりだ、レイン」
レインの身体をベッドに押しつけて、上に跨った格好で、ブラッドが表情を変えた。
笑みが消える。
「やっていいことと、悪いことがあるんだぜ」
「――――、…ブ、ラッド?」
「俺が怒ってないと思うか。…全員に嘘ついた挙句、輪姦とは。――――さすがエル総帥。やることが派手だな」
「…っ、…俺は男だ。ガキができるわけでもないし、そんなの…」
「ほぉ。強がっちゃって、いい度胸だな。パニクってたくせに」
「っ!!!」
「どこをどうされて、どんな顔したのか…再現してみるか」
「ブラッ、ド…」
弱々しくブラッドの背中を抱く。
元々ハスキーなレインの声が、甘く掠れる。
「――――っ、…ブラッド…」
紅い瞳から、大粒の涙が零れた。
「俺を……」
「――――殺してくれ…」
満たされていく。
フォースが回復して、急激に…身体が満たされていくのが解る。
浅ましい。
この身体が、自分自身が――――忌まわしい。
こんなふうにいつまで、ブラッドを縛り付けるんだろう。
俺は――――
俺はブラッドにとってきっと、負担にしかならない。
こいつは優しいから。
いつだって、口にも態度にも出さないけど…。
翠色の、生命力に満ちた双眸。
ブラッドがじっと、レインを見つめる。
脅えたようにしながらも、レインは視線をそらさない。
見つめてもう一度、かすかに声を漏らす。
「…頼む」
「……」
「ブラッド…」
華奢な身体が、小刻みに震える。
「俺は…汚い。おまえに触れられる資格なんてない」
「……」
「快感を感じてた。虐げられることに、身体が…。…っ、あんな…俺は…っ」
涙声。
嗚咽交じりに、肩を震わせる。
「自分が…わからない。…なにも考えたくない…」
「……」
「いやだ…こわいんだ」
「――――レイン」
「あんな、姿を――――おまえが…おまえに蔑まれるくらいなら…っ、俺は」
「…レイン」
「いやだ……、っ…いやだ。嫌われるくらいなら、俺は」
「レイン!」
息が止まりそうなくらい強く、抱き寄せられる。
暖かい。
ブラッドの体温が――――大きな手が。
感じられるだけで、こんなに。
――――涙があふれてしまう。
「どうして…なんだ」
混乱する思考をどうしていいのか解らないまま、レインが言う。
「おまえが…。…っ…なんで、こんなに…」
縛り付けたくないのに。
――――なんで、離れられないんだ。
「言っただろう」
ブラッドの声。
いつも通りの落ち着いた声。
「焦ったって、いいことないって。――――ちゃんと聞いてたのか、おまえ」
「……」
「莫迦野郎。死ぬほど心配させやがって」
「――――だ、っ…て」
「そんなに俺と離れたいか」
まだ震えている細い身体を、しっかりと――――強すぎるくらいの力で抱き寄せる。
「俺は俺の意志でここにいるんだ、レイン」
「……」
「嫌いになんて――――なれるわけないだろ」
「――…ブラッ、ド」
「おまえの痛みは、きっと解ってやれない。…俺はおまえじゃないから」
どんなに強くあっても、どんなに虚勢を張っていても。
レインがただの人間で、一人でなんて生きられないことくらい知ってる。
俺だってそうだ。
人は誰だって、一人でなんて生きられない。
「だけど…傍にいる」
静かな口調。
ゆっくりと、レインを落ち着かせるように…長い指が髪を撫でる。
「惚れてんだよ、おまえに」
「……」
「傍にいたいんだ…レイン」
「……」
「――――ここにいてくれ」
「……、……っ」
やめてくれ。
――――そんなこと――――そんなふうに、言われたら。
俺は。
「っ…わかってないんだ…おまえは――――なにも」
「そうだな。ごめん」
「謝るな…、っ…おまえは、ずるい」
「――――そうだな」
「……っ、……」
ブラッドの背中を、強く――――抱きしめる。
ダメだ。
こんなに、俺は――――こいつが。
息が苦しいくらい強く抱き合ったまま、しばらくじっと、互いの体温を確かめ合う。
一人でいるときにはあんなに不安で、余計なことばかり考えてしまうのに。
生きている価値なんてないと思うのに。
ブラッドがこうやって、触れてくれるだけで……まだ生きたいと、そう思ってしまう。
強く、なりたい。
ブラッドにとって、俺が――――そんな存在であるように。
――――大切な人を護れるだけ、強く。
すこしだけ身体を離したブラッドが鼻先を合わせてきて……優しく唇を重ねてくる。
確かめるみたいなキス。
心地よくて目を綴じたレインの髪を、大きな手が撫でてくる。
――――そうなんだ。
ブラッドは揺るがない。どんなときも必ず、俺を信じてくれる。
――――愛してくれる。
「大失態だったな…エル総帥」
意地の悪い声。
レインの耳朶を噛んで、首筋にキスして。
瞳の近くで、ブラッドが口角を上げた。
「そんなに大人数とセックスしたかったなら、言ってくれよ。幹部はみんな大歓迎だぜ」
「っ……!!!き、キサマ…っ、言っていい冗談と、悪い冗談が…っ」
「そのとおりだ、レイン」
レインの身体をベッドに押しつけて、上に跨った格好で、ブラッドが表情を変えた。
笑みが消える。
「やっていいことと、悪いことがあるんだぜ」
「――――、…ブ、ラッド?」
「俺が怒ってないと思うか。…全員に嘘ついた挙句、輪姦とは。――――さすがエル総帥。やることが派手だな」
「…っ、…俺は男だ。ガキができるわけでもないし、そんなの…」
「ほぉ。強がっちゃって、いい度胸だな。パニクってたくせに」
「っ!!!」
「どこをどうされて、どんな顔したのか…再現してみるか」
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