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SCENE SECTION
01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 /
06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人
色素の薄い濡れた髪を、乱すようにかき上げる。
「超ブラコンお兄ちゃんのキチガイじみた意地悪で、絆がだいぶ深まった…ってとこかな?」
「――――神代直樹」
正面、自分の名を呼んだラヴロッカを見据える。
「久しぶり、第一席。いい加減、ウチの少将ストーキングすんのやめてくんないかな〜。…しつこい男って嫌われんだぜ」
直樹が素早く両刀を納めた。
手のひらを身体の幅に開いてみせる。
「引いてくれない?あんたの目的はとりあえず達成しただろ。これ以上…」
直樹の瞳が――――瞳孔が細まる。
「こいつ追い詰めんなよ」
「……」
ラヴロッカが笑んだ。
手に持っていた巨大な銃剣が、黒い粒子を飛ばして消える。
「ここで決着をつけるつもりはない」
むしろ。
時間は長くかかるほど悦しめる。
そう言葉が続いた気がして、イヴァが眉根を寄せた。
血。
滴り落ちた大量の血が、地面で赤黒く固まっている。
――――やべぇな。
さすがに…意識が。
「待てよ」
ラヴロッカがそのまま、消えてしまう前に。
言いたい。どうしても。
――――ずっと、待ってたんだ。
あんたに会う日を。
ラヴロッカがイヴァに視線を向けた。
懐かしい瞳。
あいつだけだった。
あいつが全てだったんだ――――俺を愛してくれたのは。
兄貴だけだった。
「なんでなんだ…どうして」
息が上がる。
思っていた以上に身体が参っている。血を流しすぎた。
それでも――――ラヴロッカを見上げる。
遠い距離。
もっと…近づきたいのに。
「なんで…、誰よりも誇り高かった。誰より強かったあんたが、なんで」
「……」
「なんでなんだよ、っ…!……俺は…俺は、あんたを」
「俺もだ」
絶対にそうは言わないはずの、言葉。
それをあまりにも残酷に、当然のように…ラヴロッカが言う。
「おまえを愛してる。イヴァ」
「……」
真っ直ぐに捕らえられる。視線に。
息が止まるほど強く。
「おまえは俺のものだ」
ラヴロッカの姿が闇に溶けた。
昏い森の中に――――彼の気配はない。
シオウの手から刀が消える。
直樹が小さく息を吐いた。
しばしの沈黙の後…。
2人が同時に、身を固めたままのイヴァを見下ろした。
「ほんと莫迦なんだな、少将って」
「……」
冷たい視線×2。
ラヴロッカがいなくなった虚空を見つめたままだったイヴァが、我に返る。
「な、なんだよおまえら…」
つくづく呆れたように見下ろされて、イヴァが頬を赤くする。
「典型的な「ダメ男陶酔型」ってカンジ。少将がお人良しなのは知ってるけどさ、限度あんじゃん?あいつはヤバいでしょ…。まだ中将のがマトモじゃね?」
「かっ、勘違いすんじゃねぇよ!お、俺は…あいつを憎んで、ここまで…」
「強烈〜。お兄ちゃんのことばっか考えて生きてきたって?激しい兄弟〜」
「っ…なんなんだその言い方っ!!おまえな、前から思ってたけど、いちいち人を見下すクセ直しやがれっ。っ……痛」
「暴れるな、莫迦」
冷たくそう言い放ちながらも、シオウがイヴァを抱き上げた。
「ご、語尾に…莫迦、つけんな…っ……、……」
「なにが2分だ、瀕死のくせに」
「…っ、るせぇ、…」
赤い頭がシオウの肩に落ちた。文字通りオちた。
気を張っていたから意識がもっていただけで、本当はもう、とっくに限界だったらしい。
「お疲れ、中将」
微笑んでみせる直樹に、シオウが顔を上げた。
「どうしてここに来た、直樹」
「どうしてって?レインの指示だよ」
「……。気づいてたんだろう。レインが…俺たちに嘘をついてると」
「そうなの?知らねぇ」
「……」
雨足が少しずつ弱くなってきた。
重そうな空を見上げながら、直樹が笑む。
「そんなのに気がついちゃったら、また余計なことで…レインが悩んじゃうだろ。ジラ元帥と連絡取ったから、ボスは大丈夫。あいつが今頃助けてるよ」
「……」
「レインが一番会いたいのは、元帥だから」
「……」
「ま、俺は――――レインを諦める気は毛頭ないし、そんな殊勝じゃないから。いずれは奪うけどね〜。人のモノって…」
シオウの腕を…イヴァを見つめる。
「犯したくなんだろ?」
「……。触ったら殺す」
「意外に解りやすいんだね、中将」
天使みたいな可愛い顔で笑んで、直樹が地面に落ちた黒衣を拾い上げた。
雨は少しずつ、弱くなっていた。
霧の中を漂うのは、硝煙と――――荒い息遣い。
限界に達しているだろうレインが、濡れた地面の上で、くの字にするように身体を折った。
身体が震える。
レインから手を離した一哉が、背後を振り返った。
「ブラッド…」
無言のまま、ブラッドが一哉の腕を引いた。
翠の双眸はただ一人を――――レインを映している。
「――――藤間」
ブラッドが視線を上げた。
色素の薄い濡れた髪を、乱すようにかき上げる。
「超ブラコンお兄ちゃんのキチガイじみた意地悪で、絆がだいぶ深まった…ってとこかな?」
「――――神代直樹」
正面、自分の名を呼んだラヴロッカを見据える。
「久しぶり、第一席。いい加減、ウチの少将ストーキングすんのやめてくんないかな〜。…しつこい男って嫌われんだぜ」
直樹が素早く両刀を納めた。
手のひらを身体の幅に開いてみせる。
「引いてくれない?あんたの目的はとりあえず達成しただろ。これ以上…」
直樹の瞳が――――瞳孔が細まる。
「こいつ追い詰めんなよ」
「……」
ラヴロッカが笑んだ。
手に持っていた巨大な銃剣が、黒い粒子を飛ばして消える。
「ここで決着をつけるつもりはない」
むしろ。
時間は長くかかるほど悦しめる。
そう言葉が続いた気がして、イヴァが眉根を寄せた。
血。
滴り落ちた大量の血が、地面で赤黒く固まっている。
――――やべぇな。
さすがに…意識が。
「待てよ」
ラヴロッカがそのまま、消えてしまう前に。
言いたい。どうしても。
――――ずっと、待ってたんだ。
あんたに会う日を。
ラヴロッカがイヴァに視線を向けた。
懐かしい瞳。
あいつだけだった。
あいつが全てだったんだ――――俺を愛してくれたのは。
兄貴だけだった。
「なんでなんだ…どうして」
息が上がる。
思っていた以上に身体が参っている。血を流しすぎた。
それでも――――ラヴロッカを見上げる。
遠い距離。
もっと…近づきたいのに。
「なんで…、誰よりも誇り高かった。誰より強かったあんたが、なんで」
「……」
「なんでなんだよ、っ…!……俺は…俺は、あんたを」
「俺もだ」
絶対にそうは言わないはずの、言葉。
それをあまりにも残酷に、当然のように…ラヴロッカが言う。
「おまえを愛してる。イヴァ」
「……」
真っ直ぐに捕らえられる。視線に。
息が止まるほど強く。
「おまえは俺のものだ」
ラヴロッカの姿が闇に溶けた。
昏い森の中に――――彼の気配はない。
シオウの手から刀が消える。
直樹が小さく息を吐いた。
しばしの沈黙の後…。
2人が同時に、身を固めたままのイヴァを見下ろした。
「ほんと莫迦なんだな、少将って」
「……」
冷たい視線×2。
ラヴロッカがいなくなった虚空を見つめたままだったイヴァが、我に返る。
「な、なんだよおまえら…」
つくづく呆れたように見下ろされて、イヴァが頬を赤くする。
「典型的な「ダメ男陶酔型」ってカンジ。少将がお人良しなのは知ってるけどさ、限度あんじゃん?あいつはヤバいでしょ…。まだ中将のがマトモじゃね?」
「かっ、勘違いすんじゃねぇよ!お、俺は…あいつを憎んで、ここまで…」
「強烈〜。お兄ちゃんのことばっか考えて生きてきたって?激しい兄弟〜」
「っ…なんなんだその言い方っ!!おまえな、前から思ってたけど、いちいち人を見下すクセ直しやがれっ。っ……痛」
「暴れるな、莫迦」
冷たくそう言い放ちながらも、シオウがイヴァを抱き上げた。
「ご、語尾に…莫迦、つけんな…っ……、……」
「なにが2分だ、瀕死のくせに」
「…っ、るせぇ、…」
赤い頭がシオウの肩に落ちた。文字通りオちた。
気を張っていたから意識がもっていただけで、本当はもう、とっくに限界だったらしい。
「お疲れ、中将」
微笑んでみせる直樹に、シオウが顔を上げた。
「どうしてここに来た、直樹」
「どうしてって?レインの指示だよ」
「……。気づいてたんだろう。レインが…俺たちに嘘をついてると」
「そうなの?知らねぇ」
「……」
雨足が少しずつ弱くなってきた。
重そうな空を見上げながら、直樹が笑む。
「そんなのに気がついちゃったら、また余計なことで…レインが悩んじゃうだろ。ジラ元帥と連絡取ったから、ボスは大丈夫。あいつが今頃助けてるよ」
「……」
「レインが一番会いたいのは、元帥だから」
「……」
「ま、俺は――――レインを諦める気は毛頭ないし、そんな殊勝じゃないから。いずれは奪うけどね〜。人のモノって…」
シオウの腕を…イヴァを見つめる。
「犯したくなんだろ?」
「……。触ったら殺す」
「意外に解りやすいんだね、中将」
天使みたいな可愛い顔で笑んで、直樹が地面に落ちた黒衣を拾い上げた。
雨は少しずつ、弱くなっていた。
霧の中を漂うのは、硝煙と――――荒い息遣い。
限界に達しているだろうレインが、濡れた地面の上で、くの字にするように身体を折った。
身体が震える。
レインから手を離した一哉が、背後を振り返った。
「ブラッド…」
無言のまま、ブラッドが一哉の腕を引いた。
翠の双眸はただ一人を――――レインを映している。
「――――藤間」
ブラッドが視線を上げた。
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