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SCENE SECTION

01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 / 06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人


喰わなくては、生きられないから。
だからあいつは…。

「ブラッドだって莫迦じゃねぇんだ。あんたがどんだけ淫乱で、どれだけの男に抱かれてきたのかなんて、とっくに解ってんだろ。そんなあんたがアイとかなんとかホザくほど――――鬱陶しいもんはねぇんだよ」
「…違う」
「てめぇはただ、自分の為にあいつを縛り付けてるだけだ。自覚しろよ…せめてさ」
「っ…違う!!」
「違わねぇよ!」

叩きつけるように。
一哉が言葉をぶつけてくる。

「いい加減てめぇってモノの正体に気づけよ。あんた、ほんとにてめぇが御綺麗な存在だとでも思ってんのか。勘違いも甚だしいんだよ…!あんたのことを知っている人間が、あんたをどういう目で見てんのか…そんなことも知らずにイキがってるてめぇが、どれだけ哀れなモンなのかってことにさ…!」

「…めろ」

レインが両手で頭を覆った。小さく首を振って――――立ち上がる。

「――――もう、――――言うな」

沙羅の、大きな双眸。
レインを見上げた沙羅の瞳から、涙が伝い落ちた。

――――痛い。
レインが心に負った傷の深さに、過去に――――共鳴する。

フラッシュ・バック。
レインの思考と、断片的な…凄惨な映像が…沙羅の中に流れ込んでくる。
――――痛い。

「一哉…やめて」

完全に戦う気力を失っているレインの腕を一哉が掴んだ。涙を零した沙羅が首を振る。

これ以上。
――――傷つけないで。

「もう限界なんだろ?まさかフォースの回復ができねぇなんてな…。盲点だったぜ」

掴んだ腕に力を込める。
細い腕が軋んで、レインが小さく呻いた。

「フォースさえなきゃ…てめぇなんかメじゃねえ。――――痛かったぜ?さっきはよ」

鈍い音。
腕の骨が――――砕かれる、激痛。

慣れない痛みとまだ混乱したままの思考が混ざって、抵抗できない。
痛みでしゃがみそうになったレインの身体を、一哉が地面に叩きつけた。

「っ……ぐ」

息が止まる。
痛みで声が出るより先に――――
口から、赤い血が零れ落ちた。

「痛ぇかよ?内臓って、衝撃だけで壊れんだぜ…。あんたが簡単にやってのけてることが、相手にはどう感じられんのか…まずはそっから学習してみるか?」

「っ……げほっ………、っ………」

こみ上げてくる血の感覚、味、痛みが――――どうしていいのか解らなくて……ただ、痛みに喘ぐ。

痛い。

怪我なんてほとんどしたことがない。相手にこんなふうに、捻じ伏せられたことなんてない。
息が上がる。血の混じった赤い吐息。
肉体の自己修復に大量のフォースがもっていかれると同時に、体内で足りなくなったフォースを補う欲求が膨らんで――――たまらなくなる。

――――マズい。
限界、だ。

「っ…は、っ……ぁ」

いやだ。
こんなヤツに…。

「――――いいザマだな」
レインを組み敷いた格好で、一哉が笑む。

「一哉…っ、やめて」
沙羅の声がする。

白い、天井。

沙羅の思考に流れてくるもの。

――――え?
なに、これ…。

過去。
レインのもつ、記憶が――――
彼自身には見えないはずの、彼のもっとも欲しがる真実が…映像が。
一気に――――流れ込んでくる。

記憶だ。
――――レインの――――過去…?

「っ………は、っ………ぁ……はぁ」
息が荒くなって、レインが顔を背けた。

熱い。
身体が……。

一哉に触れられているだけでたまらなくなってしまう疼き。

――――欲しい。
早く。

濡れた地面にレインを捻じ伏せているこの状況と、レインのこの表情と…
一哉が小さく息を吐いた。

――――くそ。
すげぇ、犯してやりたい…。

「は、っ……ぁ」

レインは悶え、身を捩らせる。
熱を帯びた紅い瞳が、求めるように一哉を映す。

「……、っ……とう、ま」

掠れたハスキーヴォイス。
誘うように、唇から吐息が漏れる。

「……あ、っ……ぁ」
「――――っ……誘ってんじゃねぇよ」

胸倉を掴んで、レインの身体を引き寄せた――――その手を。
背後から強く、誰かが握った。









ラヴロッカの放つ斬雨が、2つの刀によって――――相殺される。

神業に等しい刀捌き。
この動きは知っている――――シオウが顔を上げた、そのすぐ正面。
シオウとイヴァを護るように降り立った、細身の少年。

「神代!」

イヴァの声に、2本の細刀を手にした直樹が笑んだ。
雨に濡れた黒衣を脱ぐ。

「血だらけじゃん。カッコ悪いね、少将」
「……。うるせぇ」

シオウに瞳を向けて、直樹が小首を傾ぐ。

「悪いね中将。遅くなって」
「……」
「なんだよその顔。迷惑だったとか言う?この状況で」

そう言いながら、直樹は2本の刀をくるりと両手のひらで回す。

「迷惑だ」

めずらしく悪態をついたシオウが、小さく息を吐いた。
驚いたようにシオウを見つめてから、イヴァに視線を流す。
そうしてから、直樹はなにかに気づいたように、しきりに頷く。

「ごめん。…そっか――――少将と中将、やたら仲いいなって思ってたけど…そーいうことか。へぇ」

嬉しそうに直樹が笑む。 「カッコつけるとこを、邪魔しちゃったみたいで」

「楽しいこと知っちゃったな。少将と中将がね〜……そっか〜」


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