page06
SCENE SECTION
01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 /
06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人
「可愛い弟。おまえの憎悪が、悲哀が――――快楽が、俺を満たしてくれる」
嘲るような、押し殺した嗤い声。
「おまえを見てた。…可哀想だったな。無実の罪で捕らえられ、人間以下に扱われて…最高だった。――――おまえの泣き顔は可愛い。…イヴァ」
「っ……てめぇ…!」
「…おまえに自由はない」
「…っ……!」
「挑発に乗るな」
動こうとしたイヴァの身体を抱き止めて、シオウが小さく首を振った。
背後を、ラヴロッカを振り返る。
「あいつは契約を結んでいる。あいつを誑かした魔族が――――全ての根源だ」
「魔、物…?」
「現状はあいつの言うとおりだ。おまえに自由はない」
「………」
イヴァが悔しそうに眉根を寄せて…俯く。
「っ……だったらどうしろってんだよ…っ、俺は……、っ…あいつの言うとおり、死ぬしかねぇってことか」
「違う」
「なにが違うんだよ!!ワケわかんねぇんだよっ!っ…俺はっ…」
言葉の途中。
自分の意志とは関係なくあふれたものが、頬を伝って――――止まらなくなる。
「っ……、……っ俺は」
「――――黙れ」
噛みつくように、唇を塞がれる。
舌を絡まされて…血の味がする。
「……っ、ん……」
「あいつがおまえを殺す前に――俺がおまえを斬ってやる」
「……っ、…シ…オ」
刹羅を握ったシオウが、背後に視線を向けて立ち上がる。
黒いコートが、刀を握る手が、イヴァの血で赤く染まっている。
「俺はヴァンクールを殺す。どんな手を使っても」
「……」
「おまえを解放する手段が…あるはずだ」
視線だけイヴァに落とす。
「方法を…探してやる」
「……」
「不満か」
「……」
イヴァが、小さく息を吐いた。
軽く2、3度、首を振る。
「……手がなきゃ――俺を殺るか。……ハ。上等だぜ」
「……」
「動けるまで、あと2分って…とこだ。120秒、なんとかできるか…シオウ」
「……防壁は張れるか」
「あたりめぇだろ。俺様を…誰だと、思ってんだ」
貫かれたほうのイヴァの腕が、かすかに動く。
身体の動きを確かめるようにしているイヴァの傷は、少しずつだが出血を止めようとしている。
「略奪」の能力者であるイヴァは、ナイプの中でもトップクラスの自己回復能力を併せ持っている。
とはいえ。イヴァが眉根を寄せた。
――――あいつが…兄貴が「眩惑(ダズル)」を使ってくるかぎりは、防壁も効かねぇ。
「茶番だな」
ラヴロッカの周囲で黒い粒子が、次々とガンブレードに姿を変える。
シオウの得意とする技、「斬雨(ヘルズ・スプレイ)」。
フォースの消耗がハンパではない斬雨を使いこなせるのは、ほんとうに限られた能力者だけだ。
イヴァが舌打ちする。
シオウの大技。あんな高度な能力まで、完璧にコピーしてやがる。
兄貴の能力――――「捕食(プレイ)」。
一度見た相手の能力を、文字通り食らう。
あいつの厄介なところは、その食らった能力を並外れたセンス、能力(フォース)で、進化させることだ。
兄貴はときに、オリジナルの能力者以上に、それを使いこなしてみせる。
戦いの天才。
あいつは昔からそうだった。
強くて揺るがない、完璧な兄貴。
イタリアでもトップクラスのマフィア・ファミリーのボスだった兄貴の魅力は、周囲にいる人間を狂わせるくらい強烈だった。
――――俺を含めて。
兄貴に憧れていなかったなんて言ったら、嘘になる。
憧れてた。
大好きだった。
俺の全てだった…唇を噛む。
愛してた。
もしも違う形で、兄貴のために命を捨てなきゃならなかったとしたら、俺は迷わずにそうした。今だって…。
なぜ、こんな関係に破綻してしまったのか。
未だにそれが、イヴァには解らない。
俺だけだったとは思えない。
ここまでされても、まだ…。
俺だけが…愛してたなんて思えないんだ。
本当はいつだって、忘れられない。
あいつに囚われてる。
関係だけじゃない、精神(こころ)もだ。自覚してる。
どんなに酷くされても。
――――俺は。
「っ…、っ……ん」
下肢の部分を舐めねぶられて、レインが歯を食いしばる。
厭だ。
こんな…。
「ん……っ、……く」
「いやらしい身体だ。大勢に見られて…嬉しいんですか」
「――――っ、……、……ぁ」
吸い付くようにしっとりとした、きめ細やかなレインの肌。
きわどい部分に指を滑らせて、下肢を舌で刺激する。
「や…めろ…っ、……厭、だ」
平時の彼からは考えられないような、覇気のない、か細い声。
乱れた黒髪が、弱々しい紅い瞳にかかる。
「……、っ……厭だ」
抵抗しようと伸びた手を、背後から掴み上げられる。
レインとキマイラを囲むように男たちが集まってきていて、地面に寝かされた格好で、足を開かされる。
「っ……!」
抗議の声を上げるよりも前に、慣らされてもいないまま、中に指を入れ込まれる。
「――――っ……!……っ」
痛みと異物感に瞳を綴じたレインの耳元で、キマイラが哂う。
「興奮しているんですか――――もうこんなに濡らして…」
「貴、様……っ、あ」
前立腺を擦り上げるように指を動かされて、レインが首を振った。
逃れたくて身を捩ろうにも、何人もの腕に身体を固定されていて、動けない。
発動、しない。
――――焔が。
身体に刻まれた記憶。
抗えない何かがレインを、力(フォース)を、押さえつけてくる。
「可愛い弟。おまえの憎悪が、悲哀が――――快楽が、俺を満たしてくれる」
嘲るような、押し殺した嗤い声。
「おまえを見てた。…可哀想だったな。無実の罪で捕らえられ、人間以下に扱われて…最高だった。――――おまえの泣き顔は可愛い。…イヴァ」
「っ……てめぇ…!」
「…おまえに自由はない」
「…っ……!」
「挑発に乗るな」
動こうとしたイヴァの身体を抱き止めて、シオウが小さく首を振った。
背後を、ラヴロッカを振り返る。
「あいつは契約を結んでいる。あいつを誑かした魔族が――――全ての根源だ」
「魔、物…?」
「現状はあいつの言うとおりだ。おまえに自由はない」
「………」
イヴァが悔しそうに眉根を寄せて…俯く。
「っ……だったらどうしろってんだよ…っ、俺は……、っ…あいつの言うとおり、死ぬしかねぇってことか」
「違う」
「なにが違うんだよ!!ワケわかんねぇんだよっ!っ…俺はっ…」
言葉の途中。
自分の意志とは関係なくあふれたものが、頬を伝って――――止まらなくなる。
「っ……、……っ俺は」
「――――黙れ」
噛みつくように、唇を塞がれる。
舌を絡まされて…血の味がする。
「……っ、ん……」
「あいつがおまえを殺す前に――俺がおまえを斬ってやる」
「……っ、…シ…オ」
刹羅を握ったシオウが、背後に視線を向けて立ち上がる。
黒いコートが、刀を握る手が、イヴァの血で赤く染まっている。
「俺はヴァンクールを殺す。どんな手を使っても」
「……」
「おまえを解放する手段が…あるはずだ」
視線だけイヴァに落とす。
「方法を…探してやる」
「……」
「不満か」
「……」
イヴァが、小さく息を吐いた。
軽く2、3度、首を振る。
「……手がなきゃ――俺を殺るか。……ハ。上等だぜ」
「……」
「動けるまで、あと2分って…とこだ。120秒、なんとかできるか…シオウ」
「……防壁は張れるか」
「あたりめぇだろ。俺様を…誰だと、思ってんだ」
貫かれたほうのイヴァの腕が、かすかに動く。
身体の動きを確かめるようにしているイヴァの傷は、少しずつだが出血を止めようとしている。
「略奪」の能力者であるイヴァは、ナイプの中でもトップクラスの自己回復能力を併せ持っている。
とはいえ。イヴァが眉根を寄せた。
――――あいつが…兄貴が「眩惑(ダズル)」を使ってくるかぎりは、防壁も効かねぇ。
「茶番だな」
ラヴロッカの周囲で黒い粒子が、次々とガンブレードに姿を変える。
シオウの得意とする技、「斬雨(ヘルズ・スプレイ)」。
フォースの消耗がハンパではない斬雨を使いこなせるのは、ほんとうに限られた能力者だけだ。
イヴァが舌打ちする。
シオウの大技。あんな高度な能力まで、完璧にコピーしてやがる。
兄貴の能力――――「捕食(プレイ)」。
一度見た相手の能力を、文字通り食らう。
あいつの厄介なところは、その食らった能力を並外れたセンス、能力(フォース)で、進化させることだ。
兄貴はときに、オリジナルの能力者以上に、それを使いこなしてみせる。
戦いの天才。
あいつは昔からそうだった。
強くて揺るがない、完璧な兄貴。
イタリアでもトップクラスのマフィア・ファミリーのボスだった兄貴の魅力は、周囲にいる人間を狂わせるくらい強烈だった。
――――俺を含めて。
兄貴に憧れていなかったなんて言ったら、嘘になる。
憧れてた。
大好きだった。
俺の全てだった…唇を噛む。
愛してた。
もしも違う形で、兄貴のために命を捨てなきゃならなかったとしたら、俺は迷わずにそうした。今だって…。
なぜ、こんな関係に破綻してしまったのか。
未だにそれが、イヴァには解らない。
俺だけだったとは思えない。
ここまでされても、まだ…。
俺だけが…愛してたなんて思えないんだ。
本当はいつだって、忘れられない。
あいつに囚われてる。
関係だけじゃない、精神(こころ)もだ。自覚してる。
どんなに酷くされても。
――――俺は。
「っ…、っ……ん」
下肢の部分を舐めねぶられて、レインが歯を食いしばる。
厭だ。
こんな…。
「ん……っ、……く」
「いやらしい身体だ。大勢に見られて…嬉しいんですか」
「――――っ、……、……ぁ」
吸い付くようにしっとりとした、きめ細やかなレインの肌。
きわどい部分に指を滑らせて、下肢を舌で刺激する。
「や…めろ…っ、……厭、だ」
平時の彼からは考えられないような、覇気のない、か細い声。
乱れた黒髪が、弱々しい紅い瞳にかかる。
「……、っ……厭だ」
抵抗しようと伸びた手を、背後から掴み上げられる。
レインとキマイラを囲むように男たちが集まってきていて、地面に寝かされた格好で、足を開かされる。
「っ……!」
抗議の声を上げるよりも前に、慣らされてもいないまま、中に指を入れ込まれる。
「――――っ……!……っ」
痛みと異物感に瞳を綴じたレインの耳元で、キマイラが哂う。
「興奮しているんですか――――もうこんなに濡らして…」
「貴、様……っ、あ」
前立腺を擦り上げるように指を動かされて、レインが首を振った。
逃れたくて身を捩ろうにも、何人もの腕に身体を固定されていて、動けない。
発動、しない。
――――焔が。
身体に刻まれた記憶。
抗えない何かがレインを、力(フォース)を、押さえつけてくる。
BACK NEXT
Copyright LadyBacker All Rights Reserved./Designed by Rosenmonat