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SCENE SECTION

01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 / 06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人


「つ……、突い、て……」
「なにで?」
「……っ、…そん、なの…ッ」
「だめだって。…腰動かすなよ」
「っ……も……、いや、だっ…」
「おまえさ…自分がいま、どんな顔してるか…知ってるか?」

耳元でそう囁いただけで、レインの身体は反応する。
しっとりと濡れた白肌に指を滑らせ、敏感な彼の反応を愉しんでいたブラッドが、自嘲気味に口角を上げた。

――――ジらしてられないな。
俺が我慢できない。

もどかしそうに身体を震わせていたレインの腰をつかんで奥まで押し入れると、そのまま強く擦り上げる。
「ひぁっ…!!っ…ぁ、あっ、っ……あっ」
「レイン…」

腰を掴み固定したまま、ギリギリまで引き抜き、深く打ちつける。

奥のすこし張り出した部分を狙って突き上げると、ブラッドの思惑通り、レインはすぐに限界を迎えた。
シーツを握り締め、身を固くする。

「あぁっ……、っ………あ」

果てた部分から、白いものが伝い落ちた。
ブラッドはそれを指で絡めるようにして、レインの先端を刺激する。
敏感になっている部分をイジりまわされ、快感で恍惚としながらもレインが首を振る。

「っ、……ふぁ、っ……ぁ、っ……ぁめ…、っ…ぅんっ……ブラッ、ド」
「こっちも、だろ」

蜜を溢す先端の窪みから、内膜を撫でるようにして爪先を出し入れする。
びくびくと痙攣した小さな穴は広げられ、指を咥えこむようにギュッと締まるものの、中まで押し入ってきたそれに掻き回され、出し入れされるたびに強烈な感覚が背筋を走り、卑猥な音と声が零れてしまう。

「い……ぁっ、……ひ、っ……ぁあ、ん」

シーツを握り締め、両足を滑らせながら喘ぐ彼が痛みでない感覚に耐えているのは明白だったが、こんな部位で感じてしまう自分を認めたくないレインは、なんとか逃げようと必死に身を捩じらせている。

「今更…恥ずかしいことなんかないだろ?」
「っい……やぁ…、っ…あ……んぅ」

強い否定を込めて首を振ったレインの黒髪が乱れて、汗ばんだ頬にかかる。

「い、…やだっ……ん、っ……ぁあ」
「素直になれよ」
「や、っ………、んぅ、っ………は、っ……ぁん」

一瞬は反抗的に鋭くなる紅い瞳は、結局快楽に負けてしまい、すぐに熱に潤んでしまう。
激しく腰を打ち付けられ、絶妙な部分をこすり上げられ、指先を入れ込まれて、甘い疼きと痺れるような感覚が徐々に沸き上がってくると、先端からじわりと、黄色い液体が漏れ出してきた。

「ぁあ、っ……あ、っ…、っ……だ、め……っ、は、あ」
「出せよ。俺も…、限界」
「っ、っ………ぁ、めっ……あぁ、っ……あっ……いや、だっ」

腕を突っ張るようにして前に逃れようとするレインの腰を掴み、先端に差し込んでいた指を引き抜く。

「逃げんなって…」
「あ ぁっ……!、っ………ぁ」

張り詰め、震えたその部分から生温かいものが吐出し、シーツに滴り落ちた。

「ッ、っ……、っ……」
「…っ、…レイン」

放っている途中で、ブラッドのものが中に吐き出された。

「んあっ…、っ……ぁ」
「――――。……っ」

耳元に寄せられたブラッドの唇から漏れる、荒い息づかい。
それを感じ入るように瞳を閉じるレインを後ろから抱きしめ、ゆっくりとその身体を反転させ、優しく唇を塞ぐ。

「ん、……ぅ」
「朝からやっちゃったな、レイン」

濡れたシーツを掴んだブラッドが意地悪く囁いても、快感で惚けたままのレインは首を傾げるだけだ。

「おまえ、ほんとユルいよな。トイレで出すほうが少ねぇんじゃねぇの」
じっとブラッドに見つめられ、ようやく意識が戻ってきたらしいレインの頬が徐々に紅潮していく。
「っ…!!!き、貴様…っ」
「気にすんなって。いつものことだろ?」
「っ…」

熱を帯びた頬に触れ、紅い瞳のそばに、髪に――――唇に。触れるようにキスを落とす。

「マイペースが一番だぜ、レイン。焦ったっていいことねぇから」
「…え?」

長いキスのあとで、まるで子供をあやすように、ブラッドが軽く鼻先を合わせてきた。

「可愛いレインが悩んでると、俺が幹部の連中に責められちまうからな」
「可愛いって…」
「頑張ってるよ、おまえは。――――頑張りすぎてるくらい」

髪を撫でられ、再び強く抱き寄せられる。
ブラッド以外の人間だったら焼き殺しているだろうこんな言葉も、仕草も、不思議なほど素直に受け入れられてしまう自分に、レインは小さな嘆息を落としていた。

だめだ。
――――ここは。
ブラッドの隣は、居心地がよすぎて…。

「……」
無言のまま見上げるレインに、ブラッドが笑む。
彼がこうして微笑んでくれることは、レインにとって特別だった。

この瞬間以上の幸福なんて思いつかない。

――――失いたくない。
この場所だけは…ブラッドだけは、絶対に。

なにがこんなに不安なのかなんて、自分でも解らない。
――――解らない、けど。

「…コーヒー。…飲みたい」
面映そうに瞳をそらしたレインがそう呟くと、ブラッドはゆっくりと身体を離し、ベッドから下りて行った。
それを追うようにして床に足をついたレインが、背中からブラッドを抱きしめる。

しばらく間を空けてから、そのままの姿勢でブラッドが訊いた。
「ブラックでいいか」
背中に顔を埋めたまま、レインがゆるく首を振る。
「今日はカフェオレがいい」
「めずらしいな」
「………」

まるで子供のように、しっかりとブラッドを抱きしめているレインの腕に触れる。
細い腕。
能力者としての力が圧倒的に優れているというだけで、身体能力だけで言うならレインはむしろ一般的な男性よりも非力で、不健康なほど細い。
もしもフォースがなかったなら、戦場になど立てないだろう。

この華奢な身体に秘められた凶大な力が、どれほどレインを苦しめているのかをブラッドは識(し)っている。
そして同時に、その力はレインを護る盾であり、剣であることも。
能力者特有の力、「フォース」がなければ、レインは自分の身を護ることができない。


レインの能力には現段階でひとつだけ、重大な欠陥がある。


膨大すぎる彼の中の「力(フォース)」が彼の身体を蝕んだ結果、後天的に生まれてしまったその欠陥については、未だ幹部にも明かされていない。
ずっと隣で彼を見てきた「育ての兄」、ブラッドだけが知っている。

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