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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
本来なら支配し、自分の傀儡として使う為の生贄なのに、聯はそうしない。
―― それはつまり、聯が…レインを…。
一哉はかぶりを振り、思考を止(とど)めた。
それは、自分が至った結論に対する否定の表れだったが、この帰着点を打ち消そうと別の臆見(おっけん)を模索してみても、いつも結果は同じだった。
――儀式で魔に転生できる者はごく僅か、闇神(フォール・ディー)に選ばれた人間だけだ。
現在では「聯」と呼ばれる闇神は、名を変え、姿を変え、千年以上の永きに渡って人の世界に存在している。
悠久の間、生贄など望まなかったはずの聯が、何故レインを選んだのか。
それが一哉には、どうしても理解できない。
正確には…理解したくない。
一哉は、生まれてすぐに地の能力を発生した。
彼の能力を恐れた両親が病院に置き去りにして行ったのだ、と後(のち)に聞いてはいたが、一哉にとってそれはただの過去でしかなく、さほど重要な事ではなかった。
一哉を引き取り、今日まで育ててくれたのは聯だ。
記憶にすら残っていない両親より、聯と出会い、今日まで一緒だったという事実の方が一哉にはずっと大切で、自分を捨ててくれた両親に、むしろ感謝したいくらいだと思っている。
――全部知ってる。
――聯の事も、REDSHEEPの事も…
――レインの事も。
自分に与えられた特殊な能力は、聖なる地神、アーシスとの契約によって生まれているという事も。
沙羅もレインも、生まれながらにして、それぞれの聖神(ザ・ディー)に選ばれているのだ。
人は、目に見えぬものを神や悪魔と呼び、それらを遠い存在としている。
しかし、人間が在るのと同じ理屈で、神なるものは確かに実在している。
聖神と闇神の戦いは、人類文明の陰で、常に繰り広げられてきた。
現世では完全に闇が優勢となり、REDSHEEPという闇を崇める組織が、数多の傘下機関を手足とし、政治や軍事を裏から掌握することで、世界を操っている。
この300年、混沌が優位に立つようになって以降、世界は大きく姿を変えていった。
――何が正義で、何が悪だとか。
――そんな事はどうだっていい。
聖神を宿した一哉は、闇神である聯に従い、忠誠を誓うことを心に決めていた。
レインほど完璧に力を使いこなせず、戦闘においても、まだまだ未熟と言えるけれど。
――聯が望むなら、全て捧げる。
――聯が俺を認めてくれるように…強く、完璧になりたい。
「一哉…」
黙考する一哉の腕を引いた沙羅が、彼を見つめた。
彼女は――
沙羅は、風神エアリスの選んだ人間。
風神は未だ闇に堕ちぬ、数少ない聖神の一つだ。
密かに、でも確かに歴史の陰で繰り返されてきた神魔大戦において、聖神に代わりその力を行使し、聖へと世界が傾くように選ばれた者。
彼女の資性(しせい)は、REDSHEEPの…闇の性質とは対極的なものだ。
聖なる焔神、フレイラを宿すレインは、闇神である聯の手で生贄の呪印を焼かれて堕ちたし、地神アーシスを宿す一哉は、自ら堕ちることを選んだ。
聖神を宿す者――「新人類(ニュー・ヒューマン)」と呼ばれる能力者の中で、聖の力を放てるのは沙羅しかいない。
一哉と同じく天涯孤独な沙羅は、12歳まで孤児院で育った後、能力発生をきっかけとしてガーディアンに加入し、その身元を聯が引き受けた。
聯の保護の下、今は都内で一人暮らしをしている。
真実を知れば、沙羅はきっと――聯と敵対する。
それは、一哉が最も危惧している展開だった。
だからこそ、沙羅が真実に触れぬよう、常に行動を共にしているのだ。
――ノーマンもツォンも、生かしてはおかない。
――レインにもブラッドにも、スナイパーの幹部達にも…沙羅にも。
――真実を知られる訳にはいかない。
レインは真実を求めている。
彼は着実に、REDSHEEPに関する情報を集めている。
沙羅の周りに渦中(かちゅう)のレインがいるのは、一哉にとって不都合極まりなかった。
早くこの仕事を片付けて、組織のゴタゴタから沙羅を引き離す。
ノーマンとツォンを、主(マスター)である聯に引き渡す。
一哉の為すべきことは、最初から決まっていた。
本来なら支配し、自分の傀儡として使う為の生贄なのに、聯はそうしない。
―― それはつまり、聯が…レインを…。
一哉はかぶりを振り、思考を止(とど)めた。
それは、自分が至った結論に対する否定の表れだったが、この帰着点を打ち消そうと別の臆見(おっけん)を模索してみても、いつも結果は同じだった。
――儀式で魔に転生できる者はごく僅か、闇神(フォール・ディー)に選ばれた人間だけだ。
現在では「聯」と呼ばれる闇神は、名を変え、姿を変え、千年以上の永きに渡って人の世界に存在している。
悠久の間、生贄など望まなかったはずの聯が、何故レインを選んだのか。
それが一哉には、どうしても理解できない。
正確には…理解したくない。
一哉は、生まれてすぐに地の能力を発生した。
彼の能力を恐れた両親が病院に置き去りにして行ったのだ、と後(のち)に聞いてはいたが、一哉にとってそれはただの過去でしかなく、さほど重要な事ではなかった。
一哉を引き取り、今日まで育ててくれたのは聯だ。
記憶にすら残っていない両親より、聯と出会い、今日まで一緒だったという事実の方が一哉にはずっと大切で、自分を捨ててくれた両親に、むしろ感謝したいくらいだと思っている。
――全部知ってる。
――聯の事も、REDSHEEPの事も…
――レインの事も。
自分に与えられた特殊な能力は、聖なる地神、アーシスとの契約によって生まれているという事も。
沙羅もレインも、生まれながらにして、それぞれの聖神(ザ・ディー)に選ばれているのだ。
人は、目に見えぬものを神や悪魔と呼び、それらを遠い存在としている。
しかし、人間が在るのと同じ理屈で、神なるものは確かに実在している。
聖神と闇神の戦いは、人類文明の陰で、常に繰り広げられてきた。
現世では完全に闇が優勢となり、REDSHEEPという闇を崇める組織が、数多の傘下機関を手足とし、政治や軍事を裏から掌握することで、世界を操っている。
この300年、混沌が優位に立つようになって以降、世界は大きく姿を変えていった。
――何が正義で、何が悪だとか。
――そんな事はどうだっていい。
聖神を宿した一哉は、闇神である聯に従い、忠誠を誓うことを心に決めていた。
レインほど完璧に力を使いこなせず、戦闘においても、まだまだ未熟と言えるけれど。
――聯が望むなら、全て捧げる。
――聯が俺を認めてくれるように…強く、完璧になりたい。
「一哉…」
黙考する一哉の腕を引いた沙羅が、彼を見つめた。
彼女は――
沙羅は、風神エアリスの選んだ人間。
風神は未だ闇に堕ちぬ、数少ない聖神の一つだ。
密かに、でも確かに歴史の陰で繰り返されてきた神魔大戦において、聖神に代わりその力を行使し、聖へと世界が傾くように選ばれた者。
彼女の資性(しせい)は、REDSHEEPの…闇の性質とは対極的なものだ。
聖なる焔神、フレイラを宿すレインは、闇神である聯の手で生贄の呪印を焼かれて堕ちたし、地神アーシスを宿す一哉は、自ら堕ちることを選んだ。
聖神を宿す者――「新人類(ニュー・ヒューマン)」と呼ばれる能力者の中で、聖の力を放てるのは沙羅しかいない。
一哉と同じく天涯孤独な沙羅は、12歳まで孤児院で育った後、能力発生をきっかけとしてガーディアンに加入し、その身元を聯が引き受けた。
聯の保護の下、今は都内で一人暮らしをしている。
真実を知れば、沙羅はきっと――聯と敵対する。
それは、一哉が最も危惧している展開だった。
だからこそ、沙羅が真実に触れぬよう、常に行動を共にしているのだ。
――ノーマンもツォンも、生かしてはおかない。
――レインにもブラッドにも、スナイパーの幹部達にも…沙羅にも。
――真実を知られる訳にはいかない。
レインは真実を求めている。
彼は着実に、REDSHEEPに関する情報を集めている。
沙羅の周りに渦中(かちゅう)のレインがいるのは、一哉にとって不都合極まりなかった。
早くこの仕事を片付けて、組織のゴタゴタから沙羅を引き離す。
ノーマンとツォンを、主(マスター)である聯に引き渡す。
一哉の為すべきことは、最初から決まっていた。
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