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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
スナイパーはあらゆる面において独自の方針を執っているため、かなり特異な組織だと言える。
軍事機関らしからぬ体制と統制でありながら、何故スナイパーが最強であり続けているのか…その理由は、レインと、彼を支える幹部の優秀さにある。
トップのレインの実力は勿論のこと、スナイパーは幹部の優秀さも盛名で、互いの信頼関係も厚い。
幹部に関する情報は極秘扱いで、戦場でも滅多に素顔を晒す事はないが、レインが現れる場には護衛(ガード)として、必ず一人が付き添っている。
それはレインが定めたものではなく、ごく自然に出来たスタイルだった。
ブラッドは頷き、一哉を見遣る。
「ウチのヘッドは完全な攻撃型(オフェンサー)だろ。ある程度補助が使えないと、サポートとは言えないからな」
沙羅が目を丸くした。
「完全な攻撃型って…もしかして、レインも焔以外のスキルは使えないの?」
ブラッドが首を傾げる。
「…。沙羅ちゃんもか」
「うん! そうなの。そっか、そうなんだ…。ちょっと、何て言うか…。…安心しちゃった」
Sクラスエージェントの中で唯一人、印を結ぶ形の基本スキルを発動させることが出来ない沙羅は、自分は能力者として少しおかしいのではないかと、密かに不安を抱いていた。
強者揃いの能力者の中でも最強と謳われるレインが発動系のスキルを使用しないという事実は、ヘンな表現かもしれないが、沙羅にとっては心強かった。
「焔以外のスキルは全然だぜ。ま、公然の事実だから隠さなくてもいいだろうけど…本人には言うなよ。あいつ、プライド高いから」
ブラッドは語尾を弱めつつそう言い、沙羅の頭に手を乗せると、柔らかな栗毛を優しく撫でる。
「沙羅ちゃんとか藤間、レインは、能力者の中でもかなり特殊だからな。焔や風を使えば防御することも可能だし、治癒がなくても細胞は不死で、勝手に復活する。言ってみりゃ、その能力の中に全部を兼ね備えてるわけだ」
アメリカンなスキンシップに慣れない沙羅は、突然のボディタッチに当惑した様子で、頬を赤くして俯いている。
本来ならばこういった場合、「軽々しく沙羅に触るな」と一哉が怒声を飛ばすところだが、ブラッドという男は妙に人懐っこい雰囲気があるせいか、第三者から見て、異性が彼女に触れているという感覚がなく、やや顔を渋くしながらも、一哉はとりあえずそれを黙認し、切迫した問題へと話を切り換える。
「フィクサーって連中は、あんたが手間取るくらい強いのか、ブラッド」
ブラッドと交戦した経験をもつ一哉は、全てではないが、彼の能力の一端を知っている。
現時点では、地の能力者(アース・マスター)の一哉を凌駕するほどに、ブラッドは強い。
掴みどころのない彼が、交戦時にどこまで真剣だったかは定かではないが…。
ブラッドは過去のどの場面でも、適当に時間を潰した後、相手の生死や勝敗に頓着せず、ふらりと消えてしまう事が多かった。
レインが無事で、任務の最終目標さえ達成されればそれでいい、という考えらしい。
「強いぜ。スピードも破壊力も驚愕に値するレベルだ。なにせ…」
そう言いながら、ブラッドはレインへと視線を投げる。
「フィクサーはノーマンの造った遺伝子改変能力者(ジェネティック)。ベースはレインの遺伝子データで出来てるらしい。まぁ、焔は使えないし…レインほど強くないけどな」
新人類の遺伝子構造は特異だが、その中でも更に不可解とされるレインの遺伝子をベースに造り上げられた生物。
――想像するのも恐ろしくなり、一哉は思わず呟く。
「レインの劣化版…ンなもん、どー考えたって化けモンじゃねぇか」
率直な感想を述べた一哉に、ブラッドが間髪入れず反論した。
「お前な、もうちょい言い方ってものを考えろ。レインとあいつらは全然違う。レインはな、あぁ見えて鼻血出そうなくらい可愛いところが…、と。…。話が逸れたな。とにかく…そういう連中だ」
言いたいことはあったものの、ブラッドは結局、言葉を濁してしまう。
レインの外弁慶ぶりをよく知るブラッドにしか解らない彼の「可愛さ」を、今この場で力説したところで…。
余計なことを言えば後でレインにドヤされかねないし、レインに対して非友好的な一哉もまた、素直な解釈はしないだろう。
レインは、ブラッドのそういった過失に関して非常に記憶力がいい――ブラッド流に換言するならば、しつこい。
――事あるたびにチクチクつつかれんのは、正直ゴメンだ…
口を吐いて出た余計な一言が藪蛇となる前に、ブラッドは話題を変えることにした。
スナイパーはあらゆる面において独自の方針を執っているため、かなり特異な組織だと言える。
軍事機関らしからぬ体制と統制でありながら、何故スナイパーが最強であり続けているのか…その理由は、レインと、彼を支える幹部の優秀さにある。
トップのレインの実力は勿論のこと、スナイパーは幹部の優秀さも盛名で、互いの信頼関係も厚い。
幹部に関する情報は極秘扱いで、戦場でも滅多に素顔を晒す事はないが、レインが現れる場には護衛(ガード)として、必ず一人が付き添っている。
それはレインが定めたものではなく、ごく自然に出来たスタイルだった。
ブラッドは頷き、一哉を見遣る。
「ウチのヘッドは完全な攻撃型(オフェンサー)だろ。ある程度補助が使えないと、サポートとは言えないからな」
沙羅が目を丸くした。
「完全な攻撃型って…もしかして、レインも焔以外のスキルは使えないの?」
ブラッドが首を傾げる。
「…。沙羅ちゃんもか」
「うん! そうなの。そっか、そうなんだ…。ちょっと、何て言うか…。…安心しちゃった」
Sクラスエージェントの中で唯一人、印を結ぶ形の基本スキルを発動させることが出来ない沙羅は、自分は能力者として少しおかしいのではないかと、密かに不安を抱いていた。
強者揃いの能力者の中でも最強と謳われるレインが発動系のスキルを使用しないという事実は、ヘンな表現かもしれないが、沙羅にとっては心強かった。
「焔以外のスキルは全然だぜ。ま、公然の事実だから隠さなくてもいいだろうけど…本人には言うなよ。あいつ、プライド高いから」
ブラッドは語尾を弱めつつそう言い、沙羅の頭に手を乗せると、柔らかな栗毛を優しく撫でる。
「沙羅ちゃんとか藤間、レインは、能力者の中でもかなり特殊だからな。焔や風を使えば防御することも可能だし、治癒がなくても細胞は不死で、勝手に復活する。言ってみりゃ、その能力の中に全部を兼ね備えてるわけだ」
アメリカンなスキンシップに慣れない沙羅は、突然のボディタッチに当惑した様子で、頬を赤くして俯いている。
本来ならばこういった場合、「軽々しく沙羅に触るな」と一哉が怒声を飛ばすところだが、ブラッドという男は妙に人懐っこい雰囲気があるせいか、第三者から見て、異性が彼女に触れているという感覚がなく、やや顔を渋くしながらも、一哉はとりあえずそれを黙認し、切迫した問題へと話を切り換える。
「フィクサーって連中は、あんたが手間取るくらい強いのか、ブラッド」
ブラッドと交戦した経験をもつ一哉は、全てではないが、彼の能力の一端を知っている。
現時点では、地の能力者(アース・マスター)の一哉を凌駕するほどに、ブラッドは強い。
掴みどころのない彼が、交戦時にどこまで真剣だったかは定かではないが…。
ブラッドは過去のどの場面でも、適当に時間を潰した後、相手の生死や勝敗に頓着せず、ふらりと消えてしまう事が多かった。
レインが無事で、任務の最終目標さえ達成されればそれでいい、という考えらしい。
「強いぜ。スピードも破壊力も驚愕に値するレベルだ。なにせ…」
そう言いながら、ブラッドはレインへと視線を投げる。
「フィクサーはノーマンの造った遺伝子改変能力者(ジェネティック)。ベースはレインの遺伝子データで出来てるらしい。まぁ、焔は使えないし…レインほど強くないけどな」
新人類の遺伝子構造は特異だが、その中でも更に不可解とされるレインの遺伝子をベースに造り上げられた生物。
――想像するのも恐ろしくなり、一哉は思わず呟く。
「レインの劣化版…ンなもん、どー考えたって化けモンじゃねぇか」
率直な感想を述べた一哉に、ブラッドが間髪入れず反論した。
「お前な、もうちょい言い方ってものを考えろ。レインとあいつらは全然違う。レインはな、あぁ見えて鼻血出そうなくらい可愛いところが…、と。…。話が逸れたな。とにかく…そういう連中だ」
言いたいことはあったものの、ブラッドは結局、言葉を濁してしまう。
レインの外弁慶ぶりをよく知るブラッドにしか解らない彼の「可愛さ」を、今この場で力説したところで…。
余計なことを言えば後でレインにドヤされかねないし、レインに対して非友好的な一哉もまた、素直な解釈はしないだろう。
レインは、ブラッドのそういった過失に関して非常に記憶力がいい――ブラッド流に換言するならば、しつこい。
――事あるたびにチクチクつつかれんのは、正直ゴメンだ…
口を吐いて出た余計な一言が藪蛇となる前に、ブラッドは話題を変えることにした。
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