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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
一哉の後を追おうと足を踏み出した沙羅だったが、思案に暮れているようにも見えるその姿が気にかかり、彼の隣で立ち止まると、遠慮がちにブラッドを見上げた。
「レインのパートナーって、大変…?」
ポロリとそんな言葉が零れてしまい、沙羅は慌てて両手で口を押さえる。
そんな彼女に顔を向けたブラッドが、何とも優しげな笑みを浮かべた。
様々な羞恥が入り混じり、沙羅は頬を赤らめる。
「沙羅ちゃんくらい素直で可愛げがあったら、俺も苦労しないんだけどね」
柔和なブラッドの雰囲気につられ、緊張気味だった沙羅もようやく微笑する。
「ブラッドは、レインが…恐くないの?」
「恐い? …あいつが?」
短いプラチナ・ブロンドが清風に揺れる。
光に反射してキラキラと輝くブラッドの髪を、沙羅が眩しそうに見つめた。
「考えたことないな。我儘だしすげぇプライド高いし、頑固で…手はかかるけど」
何気なくそう答えたものの、ブラッドは正直、この類の質問にはうんざりしていた。
噂先行。
レインという男は確かに敵に対して容赦が無く、彼の能力があまりに驚異的で理解し難いがために、彼が何をしても、一般的な観念から勝手に当てつけられた、残忍、残虐の名がつきまとってしまう。
その上、あの容姿では…。
彼が特別視され、特異な存在として扱われることは、ある意味仕方がないことだった。
それでもブラッドは、彼を全く知らない人間が無責任にこじつけた一方的な見解を、本当にやり切れないと感じる事がある。
常に強く在る彼の姿は、レインが必死で見つけた、自分を護るための大切なもの。
本当は誰よりも、レイン自身が己を忌み嫌い、恐れ、憎んでいる…それをブラッドは知っている。
万人を魅了する容姿までも、彼は嫌悪している。
「すごく綺麗な人だって聞いてた。けど、冷酷とか…残忍とか。そんなのも沢山聞いてたの。もし死神(リッパー・ジィ・グリム)がいるとしたら…レインの事だって」
黒い機体が日輪に照らされ、目映く反射した。
「だからさっきは、ちょっと…恐かった」
目映い陽光を浴びながら、沙羅が申し訳なさそうに心意を述べる。
「でも、今は平気。キンチョーは…するけどね」
出会いが強烈すぎて恐怖が飛んだ、とも言える気がするけど。
心の中でそう付け加えながらも、沙羅はただ素直に、胸中を吐露する。
「キスしたのも、そんなヤじゃないんだ。…だってレインってホントに綺麗だし。全然イヤラシイ感じじゃないんだもん」
光明に包まれた沙羅の柔らかな微笑に眺め入りながら、ブラッドはふと、訝しげに首を傾げた。
彼女のように明け透けな言葉を発する人間は、この業界にはまずいない。
――嘘がつけなくて、真っ直ぐで…。
――まるで、誰かみたいな。
「バベルの名は知ってるか」
――何を話そうとしているんだろう?こんな子供に…。
理性はそう告げているのに、ブラッドは何故か、言葉を止めることが出来なかった。
沙羅が瞳を瞬かせる。「え…」
「シリー財団とか、エルウッド・リサーチとかのシンクタンクが指示を受けてるって言う、洗脳機関の母体…だよね。怪しい噂しか聞かないから、実態的なことはあまり知らないけど…」
一考の間を挟み、ブラッドが頷いた。
「まぁ、大体そんなところかな。ウェリントンハウス発祥で、元々はプロパガンダの作成と宣伝を手がける組織として活動を開始した。…ドイツとの開戦を目的としてな。イギリス王室、レヴェリッジ、ロックハート。錚々たる連中がバックについてる」
「…。さっき言ってたノーマン博士っていう人と、何か…関係があるの?」
「……」
今一度、己の行動を考え直そうと、ブラッドは口を閉ざす。
データとしての素性しか知らないような、今日出会ったばかりの相手に、レインのプライベートに関する話をしようとしている自分が未だ理解できなかったが、ブラッドの本能は、その行動を肯定していた。
一哉の後を追おうと足を踏み出した沙羅だったが、思案に暮れているようにも見えるその姿が気にかかり、彼の隣で立ち止まると、遠慮がちにブラッドを見上げた。
「レインのパートナーって、大変…?」
ポロリとそんな言葉が零れてしまい、沙羅は慌てて両手で口を押さえる。
そんな彼女に顔を向けたブラッドが、何とも優しげな笑みを浮かべた。
様々な羞恥が入り混じり、沙羅は頬を赤らめる。
「沙羅ちゃんくらい素直で可愛げがあったら、俺も苦労しないんだけどね」
柔和なブラッドの雰囲気につられ、緊張気味だった沙羅もようやく微笑する。
「ブラッドは、レインが…恐くないの?」
「恐い? …あいつが?」
短いプラチナ・ブロンドが清風に揺れる。
光に反射してキラキラと輝くブラッドの髪を、沙羅が眩しそうに見つめた。
「考えたことないな。我儘だしすげぇプライド高いし、頑固で…手はかかるけど」
何気なくそう答えたものの、ブラッドは正直、この類の質問にはうんざりしていた。
噂先行。
レインという男は確かに敵に対して容赦が無く、彼の能力があまりに驚異的で理解し難いがために、彼が何をしても、一般的な観念から勝手に当てつけられた、残忍、残虐の名がつきまとってしまう。
その上、あの容姿では…。
彼が特別視され、特異な存在として扱われることは、ある意味仕方がないことだった。
それでもブラッドは、彼を全く知らない人間が無責任にこじつけた一方的な見解を、本当にやり切れないと感じる事がある。
常に強く在る彼の姿は、レインが必死で見つけた、自分を護るための大切なもの。
本当は誰よりも、レイン自身が己を忌み嫌い、恐れ、憎んでいる…それをブラッドは知っている。
万人を魅了する容姿までも、彼は嫌悪している。
「すごく綺麗な人だって聞いてた。けど、冷酷とか…残忍とか。そんなのも沢山聞いてたの。もし死神(リッパー・ジィ・グリム)がいるとしたら…レインの事だって」
黒い機体が日輪に照らされ、目映く反射した。
「だからさっきは、ちょっと…恐かった」
目映い陽光を浴びながら、沙羅が申し訳なさそうに心意を述べる。
「でも、今は平気。キンチョーは…するけどね」
出会いが強烈すぎて恐怖が飛んだ、とも言える気がするけど。
心の中でそう付け加えながらも、沙羅はただ素直に、胸中を吐露する。
「キスしたのも、そんなヤじゃないんだ。…だってレインってホントに綺麗だし。全然イヤラシイ感じじゃないんだもん」
光明に包まれた沙羅の柔らかな微笑に眺め入りながら、ブラッドはふと、訝しげに首を傾げた。
彼女のように明け透けな言葉を発する人間は、この業界にはまずいない。
――嘘がつけなくて、真っ直ぐで…。
――まるで、誰かみたいな。
「バベルの名は知ってるか」
――何を話そうとしているんだろう?こんな子供に…。
理性はそう告げているのに、ブラッドは何故か、言葉を止めることが出来なかった。
沙羅が瞳を瞬かせる。「え…」
「シリー財団とか、エルウッド・リサーチとかのシンクタンクが指示を受けてるって言う、洗脳機関の母体…だよね。怪しい噂しか聞かないから、実態的なことはあまり知らないけど…」
一考の間を挟み、ブラッドが頷いた。
「まぁ、大体そんなところかな。ウェリントンハウス発祥で、元々はプロパガンダの作成と宣伝を手がける組織として活動を開始した。…ドイツとの開戦を目的としてな。イギリス王室、レヴェリッジ、ロックハート。錚々たる連中がバックについてる」
「…。さっき言ってたノーマン博士っていう人と、何か…関係があるの?」
「……」
今一度、己の行動を考え直そうと、ブラッドは口を閉ざす。
データとしての素性しか知らないような、今日出会ったばかりの相手に、レインのプライベートに関する話をしようとしている自分が未だ理解できなかったが、ブラッドの本能は、その行動を肯定していた。
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