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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
「今回のターゲットは、ナイトメアという機関じゃない。トップの黒龍(ヘイロン)は今回の件に関与していない。謀反を起こしたのはナンバー2のツォン・バイだ。ツォンの狙いは二つ。アメリカのような軍事大国の破壊と…」
途中、言葉を止めて。
突如吹き抜けた強風で乱れた髪をかき上げる。
「……。核を超える脅威。神が生んだと言われている絶対的な力…新人類(ニュー・ヒューマン)を手に入れることだ」
――新人類(ニュー・ヒューマン)。
大量破壊兵器(NBCA)など足元にも及ばない、人の形をした最強の力。
不死の細胞と、現代兵器のどれもが及ばぬ強大な破壊力を持った存在。
それは現在、たった三体しか確認されていない。
レイン・エル、藤間一哉、樹沙羅。
如何なる英知を以(もっ)てしても解明できないその存在は、現実的な理論主義の研究者達でさえ、未だに「神が生み出した」としか言えずにいる。
「お前達二人はまだ、能力者として不安定で危ない。だから俺が、お前達の護衛をすることになった…万が一にでもツォンが新人類(おまえら)の力を手に入れるようなことがあっては、俺(スナイパー)にも都合が悪いからな」
「な……」
にべもないレインの切言に、一哉が声を荒げる。
「何だよそれ…。てめぇの世話になる気なんて、こっちはこれっぽっちも…」
「いちいち吠えるな」
うんざりだ、とでも言いたげにレインは首を振り、顰め面で言う。
「……。不本意なのはお互い様だ」
李聯(リー・ルエン)とは犬猿の仲であるはずのスナイパーのレインが、わざわざガーディアンに出向いたこと。
それは充分に、事の緊急性と重大性を物語っている。
ナイトメアはスナイパー、ガーディアンに次ぐ強大な軍事組織だが、両機関の力を以て制すれば、脅威とまでは至らない。
だが現状は、それ以上の危機感、緊迫感を漂わせている。
「政府、軍の上層部は混乱している。全てに関して政府より決定権が重い、ローマクラブやシンクタンク、各財団が微妙に絡んできているせいで、こちらからも正確な情報が回せない」
危機管理に甘く、まんまと敵の術中に嵌った上層部の失態は、完璧主義のレインにとって相当苛立つ光景だったのだろう。
思い出したくもない様子で虚空(そら)を睨み、言葉を続ける。
「ツォンの放ったエージェントが各機関、あらゆる場所に紛れているかもしれない現状況では、どこが敵なのかが判別できない…している暇もない。軍部、政府に出回っている情報は、殆どが操作されたガセネタだ。大統領府(ホワイトハウス)は麻痺している。他の軍事機関も、国防総省(ペンタゴン)も然りだ。情報に踊らされて、味方が敵に反転する可能性もあれば、同士討ちが始まる可能性もある。ガーディアンも今は、情報の確認作業で手一杯のはずだ。…李は上層部を整理する側に回ったから、お前達を護り切る余力がない。俺はお前達がツォンの手に渡らないように護衛(ガード)しつつ、奴を捕らえる…愚にも付かん上層部の混乱を見ているぐらいなら、自分で動いて解決した方が早い」
ブラッドが、レインの頭上から意味深な視線を落とした。
レインは周りが何と言おうと、腰を据えて事態を見守ることが出来ない性質(タチ)だ。
危険な任務ほど動きたがる彼の性格から、ブラッドをはじめとした幹部は自然と、必ず一人は、彼の護衛(ガード)につくのが通例になってしまった。
――本来なら総帥ってのは、李みたいに上でジッとしてるもんだと思うけどね。
レインとの付き合いは長い。
今更何を言っても無駄な事をブラッドは充分に弁えていたが、どうにかしたいと思い続けているのも事実だった。
「今回のターゲットは、ナイトメアという機関じゃない。トップの黒龍(ヘイロン)は今回の件に関与していない。謀反を起こしたのはナンバー2のツォン・バイだ。ツォンの狙いは二つ。アメリカのような軍事大国の破壊と…」
途中、言葉を止めて。
突如吹き抜けた強風で乱れた髪をかき上げる。
「……。核を超える脅威。神が生んだと言われている絶対的な力…新人類(ニュー・ヒューマン)を手に入れることだ」
――新人類(ニュー・ヒューマン)。
大量破壊兵器(NBCA)など足元にも及ばない、人の形をした最強の力。
不死の細胞と、現代兵器のどれもが及ばぬ強大な破壊力を持った存在。
それは現在、たった三体しか確認されていない。
レイン・エル、藤間一哉、樹沙羅。
如何なる英知を以(もっ)てしても解明できないその存在は、現実的な理論主義の研究者達でさえ、未だに「神が生み出した」としか言えずにいる。
「お前達二人はまだ、能力者として不安定で危ない。だから俺が、お前達の護衛をすることになった…万が一にでもツォンが新人類(おまえら)の力を手に入れるようなことがあっては、俺(スナイパー)にも都合が悪いからな」
「な……」
にべもないレインの切言に、一哉が声を荒げる。
「何だよそれ…。てめぇの世話になる気なんて、こっちはこれっぽっちも…」
「いちいち吠えるな」
うんざりだ、とでも言いたげにレインは首を振り、顰め面で言う。
「……。不本意なのはお互い様だ」
李聯(リー・ルエン)とは犬猿の仲であるはずのスナイパーのレインが、わざわざガーディアンに出向いたこと。
それは充分に、事の緊急性と重大性を物語っている。
ナイトメアはスナイパー、ガーディアンに次ぐ強大な軍事組織だが、両機関の力を以て制すれば、脅威とまでは至らない。
だが現状は、それ以上の危機感、緊迫感を漂わせている。
「政府、軍の上層部は混乱している。全てに関して政府より決定権が重い、ローマクラブやシンクタンク、各財団が微妙に絡んできているせいで、こちらからも正確な情報が回せない」
危機管理に甘く、まんまと敵の術中に嵌った上層部の失態は、完璧主義のレインにとって相当苛立つ光景だったのだろう。
思い出したくもない様子で虚空(そら)を睨み、言葉を続ける。
「ツォンの放ったエージェントが各機関、あらゆる場所に紛れているかもしれない現状況では、どこが敵なのかが判別できない…している暇もない。軍部、政府に出回っている情報は、殆どが操作されたガセネタだ。大統領府(ホワイトハウス)は麻痺している。他の軍事機関も、国防総省(ペンタゴン)も然りだ。情報に踊らされて、味方が敵に反転する可能性もあれば、同士討ちが始まる可能性もある。ガーディアンも今は、情報の確認作業で手一杯のはずだ。…李は上層部を整理する側に回ったから、お前達を護り切る余力がない。俺はお前達がツォンの手に渡らないように護衛(ガード)しつつ、奴を捕らえる…愚にも付かん上層部の混乱を見ているぐらいなら、自分で動いて解決した方が早い」
ブラッドが、レインの頭上から意味深な視線を落とした。
レインは周りが何と言おうと、腰を据えて事態を見守ることが出来ない性質(タチ)だ。
危険な任務ほど動きたがる彼の性格から、ブラッドをはじめとした幹部は自然と、必ず一人は、彼の護衛(ガード)につくのが通例になってしまった。
――本来なら総帥ってのは、李みたいに上でジッとしてるもんだと思うけどね。
レインとの付き合いは長い。
今更何を言っても無駄な事をブラッドは充分に弁えていたが、どうにかしたいと思い続けているのも事実だった。
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