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SCENE SECTION

01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結


「そうかぁ?まぁ…、見た目はまぁまぁ、見れるかもしれないけど…」

「あんな綺麗な人初めて見た。肌真っ白だし。なんか…人じゃないみたい」

ふと、沙羅が眉根を寄せた。

――そう、何て言うか…。
――人間じゃない。そんな雰囲気がある。

非現実的な印象を抱き、しかもそれを本気で信じ込んでしまいそうな自分が徐々に可笑しくなってきて、沙羅は吹き出してしまった。

「なんて。バカみたいだよね」

「…沙羅」

名前を呼ばれ、顔を上げると、憂色を漂わせた一哉と目が合う。
沙羅が再び、瞳を瞬かせた。

「お前…ま、まさかレインに…。惚れた、とか…」

「えぇっ!?」

一哉の背中をバシンとはたき、沙羅は紅潮した頬に両手を当てる。

「ヤだ、ちょっと…。恥ずかしいな…」

「さ、沙羅…っ」

前方。
開放された扉から差し込む白日の光を背に立つ、二つのシルエット――柔らかな風が流れ、レインとブラッドが二人を振り返った。

目映い視界の中に浮かび上がったのは巨大な軍用機、その機体側面に刻まれているのは、紅龍の徽章だ。

GUARDIANの軍機が並列する中、全長80.7メートル、全幅70.6メートル、最大速度マッハ2の漆黒のVIP専用機が停留している様は異様で、何とも現実感がない。

「総帥! 本部より伝達が…」

駆け寄ってきた一人が、焦燥を滲ませながらも端然と敬礼をした。
風に靡いた柔らかい黒髪をかき上げ、レインは戦闘員の方へ視線を遣る。

「どうした」

「他機関の各支部から派遣された大部隊と、ロアノーク島のNASK第3部隊が、ノーフォークの統合軍司令部に集結。空港に集められた米特殊部隊と共に、アメリカ各地に広がるテロリストの拠点に、総攻撃をかけると…」

「…何だと?」

呆れたように片眉を上げ、「ほら見ろ」と言わんばかりにブラッドを眇め見る。
ブラッドは両手を肩まで上げ、少し首を傾げて見せる。

「仕方ねぇだろ。政府側は、何が何だか解ってねぇんだ」

「だからと言って…」苛立った口調。
「邪魔をされるのは困る。だからお前を、上層部の抑圧に回したのに…」

「アリに任せてあるぜ」

「アリはまだ、政府要人全てに顔が利くわけじゃない。そんなこと知っているだろう」

息を吐き捨て、呟く。

「国防長官の手に余るような莫迦が、米軍部にもいるようだな…使えない部下を持つと、上は本当に苦労する」

「…それ、俺のこと?」

二人のやりとりを傍観していた一哉が、徐に口を開いた。

「今回の相手はNIGHTMARE(ナイトメア)だろ?攻撃される前に拠点潰しちまえば、早いし好都合なんじゃねぇの?」

鬱陶しそうに鋭い視線を投げてきたレインに顔を顰めつつも、一哉は言葉を続ける。

「本拠地はヨーロッパだけど、アメリカにもかなりの数が潜んでるし。俺達だけで一掃するのはちょい、キツいんじゃないのか」

「一掃? …そんなことしない」

鼻で笑うようにして、レインが言い放つ。

「ナイトメアの拠点を攻撃なんて…時間の無駄だ。連中は敵じゃない。今回の騒動が自分達の上部の仕業だという事さえ、連中は気づいてない」

日の光に照らされた一哉の赤毛が黄金色に輝き、それを映した紅い瞳が眩しそうに細くなる。

「? どういう意味…」

「内部分裂ってこと?」

差し挟まれた沙羅の言葉に、レインが首肯した。

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