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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
「しっかし、あいつが…ねぇ。確かにちょっとは面白くなってきたかな」
一哉達の前を歩くレインは結局ブラッドを突き放しきれず、彼に肩を抱かれたまま歩いている。
彼等の目が無いのをいいことに、一哉はポーカーフェイスを崩し、ニンマリと頬を緩めていた。
――あんなにブラッドに甘いなんて、な。
――もしかしたら、あいつの弱みを発見出来るチャンスかもしれない。
一哉の邪念をよそに、沙羅は率直な感想を述べる。
「思っていたのと、少し印象が違うかも。噂だと、血が通っていること自体不思議な、超冷血漢って感じだもん、レインって」
幾度となく戦地でレインと相見(あいまみ)えてきた一哉は、陰惨極まる過去の記憶を想起し、あからさまな渋面をつくった。
「戦場であいつに出くわしたら、みんなそう思うだろうよ」
通常モードで会うのと、戦闘モードで会うのとでは訳が違う、と一哉が呟く。
「あいつが何でそんなに恐れられてんのかは、実際、同じフィールドに立たなきゃ解んねぇよ。「モードの切り替わったあいつ」と出くわして、生身の人間が生きて帰れる可能性は完全なゼロだ。能力者(エレメンツ)の俺でさえ、何回も殺されかけてんだし」
レインとの交戦後、重度の火傷を負って治療室へ運び込まれた一哉の姿を思い返し、沙羅は表情を曇らせた。
新人類である一哉は、通常の能力者の何十倍もの速さで細胞を回復することが出来る。
そんな一哉でさえ、一ヶ月もベッドから起き上がる事が出来なかった。
全身に熱傷を負い、肋骨が砕け、内臓の幾つかが破裂していたと、そう聞いた時…沙羅は掌で口元を覆い、泣き崩れてしまった事を覚えている。
――一哉が死んでしまう。
そんな恐怖を抱いた事を。
「同じフィールドにいたことはあるけど…戦ったことはないんだよね」
沙羅が聊(いささ)か残念そうに呟いたような気がして、懸念を抱いた一哉は、すかさずに忠言を入れる。
「さ、沙羅はいいんだよ! ってか、あいつと出くわしたら逃げるのが鉄則だ。絶対だぞ。いいか、今回は一応、味方みたいなもんだからいいけど…絶対にあいつと戦おうなんて考えんな」
驚いたように瞳を瞬かせてから、沙羅が微苦笑した。
同じ能力者とはいえ、レインは別格。
それは、耳にタコができそうなほど聞かされている。
「ヤだな一哉、平気だよ。あたしそこまでバカじゃないって」
そう言いながら、沙羅はレインの後ろ姿に目を留め、先刻までの出来事に思いを致していた。
――甘い香り、威圧的な態度。
――そして…。
「本当に、紅いんだね…」
心を焦がすような、ひどく魅惑的な…紅い瞳。
「ん?…ああ、あいつの瞳か。世界で一人って聞いてるぜ。焔の能力者(ブレイズ・マスター)だから、とか。関係あんのかもな」
「初めはびっくりしたけど…なんか綺麗な色だね」
心焉(ここ)に在らず、といったような沙羅の表情は、見惚れているようにすら感じられる。
何とも面白くなさそうに、一哉が唇を尖らせた。
「しっかし、あいつが…ねぇ。確かにちょっとは面白くなってきたかな」
一哉達の前を歩くレインは結局ブラッドを突き放しきれず、彼に肩を抱かれたまま歩いている。
彼等の目が無いのをいいことに、一哉はポーカーフェイスを崩し、ニンマリと頬を緩めていた。
――あんなにブラッドに甘いなんて、な。
――もしかしたら、あいつの弱みを発見出来るチャンスかもしれない。
一哉の邪念をよそに、沙羅は率直な感想を述べる。
「思っていたのと、少し印象が違うかも。噂だと、血が通っていること自体不思議な、超冷血漢って感じだもん、レインって」
幾度となく戦地でレインと相見(あいまみ)えてきた一哉は、陰惨極まる過去の記憶を想起し、あからさまな渋面をつくった。
「戦場であいつに出くわしたら、みんなそう思うだろうよ」
通常モードで会うのと、戦闘モードで会うのとでは訳が違う、と一哉が呟く。
「あいつが何でそんなに恐れられてんのかは、実際、同じフィールドに立たなきゃ解んねぇよ。「モードの切り替わったあいつ」と出くわして、生身の人間が生きて帰れる可能性は完全なゼロだ。能力者(エレメンツ)の俺でさえ、何回も殺されかけてんだし」
レインとの交戦後、重度の火傷を負って治療室へ運び込まれた一哉の姿を思い返し、沙羅は表情を曇らせた。
新人類である一哉は、通常の能力者の何十倍もの速さで細胞を回復することが出来る。
そんな一哉でさえ、一ヶ月もベッドから起き上がる事が出来なかった。
全身に熱傷を負い、肋骨が砕け、内臓の幾つかが破裂していたと、そう聞いた時…沙羅は掌で口元を覆い、泣き崩れてしまった事を覚えている。
――一哉が死んでしまう。
そんな恐怖を抱いた事を。
「同じフィールドにいたことはあるけど…戦ったことはないんだよね」
沙羅が聊(いささ)か残念そうに呟いたような気がして、懸念を抱いた一哉は、すかさずに忠言を入れる。
「さ、沙羅はいいんだよ! ってか、あいつと出くわしたら逃げるのが鉄則だ。絶対だぞ。いいか、今回は一応、味方みたいなもんだからいいけど…絶対にあいつと戦おうなんて考えんな」
驚いたように瞳を瞬かせてから、沙羅が微苦笑した。
同じ能力者とはいえ、レインは別格。
それは、耳にタコができそうなほど聞かされている。
「ヤだな一哉、平気だよ。あたしそこまでバカじゃないって」
そう言いながら、沙羅はレインの後ろ姿に目を留め、先刻までの出来事に思いを致していた。
――甘い香り、威圧的な態度。
――そして…。
「本当に、紅いんだね…」
心を焦がすような、ひどく魅惑的な…紅い瞳。
「ん?…ああ、あいつの瞳か。世界で一人って聞いてるぜ。焔の能力者(ブレイズ・マスター)だから、とか。関係あんのかもな」
「初めはびっくりしたけど…なんか綺麗な色だね」
心焉(ここ)に在らず、といったような沙羅の表情は、見惚れているようにすら感じられる。
何とも面白くなさそうに、一哉が唇を尖らせた。
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