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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
「すぐ出発だろ、ボス」
「…ふん」
勿体ぶるように少し間を空け、ようやく長い足を前に出したレインを先に通してから、ブラッドは再び沙羅と一哉の背中を押した。
促されるままに扉を出た一哉が、意味深な瞳でブラッドを見上げる。
「ふぅん…意外な一面だったな」
さっきからの二人のやりとりを興味深そうに見つめていた一哉の視線に、ブラッドは気付いていた。
前を歩く黒い軍服、レインの背中を見つめながら、ブラッドは予想通りの展開に乗じる。
「何が」
「あいつのあんな顔、初めて見た」
一哉は先を行くレインを顎先で指し示すと、如何にも陰険に口元を綻ばせる。
「聯(ルエン)と言い合ってんのは見たことあるけどさ。その時とは違って、あんたといる時は…なんつーか、ガキっぽい。あいつもやっぱ人間なんだな」
自信満々な言動と圧倒的な美貌で、とかく特別視されがちなレインだが、政治、軍事の重鎮が集まる場でもやはり強気で、多少幼い外見ながら、どうしてもハタチという年齢以上の迫力を醸し出してしまう。
先程のように言い淀んだり、困惑したりする彼の姿を目にした事がある者は、SNIPER幹部ならいざ知らず、他機関では暁天(ぎょうてん)の星にも等しいだろう。
ふぅん、と声を漏らし、ブラッドが応じる。
「李聯か…。お前らのボスは、俺の知る限り最もサディスティックな男だからな」
憚りなくこういう話題に便乗してしまうのは、ブラッドの悪い癖だ。
後方に耳を欹(そばだ)てながら、レインはジリジリと苛立ちを募らせていた。
「レインなんて、そりゃあ李にしてみりゃ堪んねぇだろ。レインって気ぃ強そうに見えるけど、ほんとはエ…」
「ブラッド!!」
烈火の如き咆哮。
突如振り向くと同時に、レインが大迫力のハスキー・ヴォイスで怒鳴った。
嚇怒(かくど)に身を竦ませたブラッドは微苦笑し、頬を掻きながら、一哉をチラリと横目に見る。
「また後でな」
レインに駆け寄り、謝罪を述べているブラッドに目をくれながら、沙羅は漫然と歩を進めていた。
「沙羅、平気か?」
自分の唇を指で叩く一哉の言いたいことを察し、沙羅はこっくりと頷く。
「うん。…なんか麻痺してきた。面白いんだもん、あの人達」
「…まぁ、確かにな」
頷いた一哉の意図する「面白い」は「変人」と同意だ。
別の解釈でありながら会話は成立し、前を歩く二人の背中を眺めながら、沙羅と一哉はしばし黙考していた。
均整のとれた細い身体にきちんと軍服を纏ったレインと、堂々たる体躯に防護服を纏い、元帥の風体を保つ手前、とりあえず軍服の上着を羽織っているブラッド。
同じ軍服だが二人の着こなし方はあまりにも違いすぎて、まるで別のものを着ているように見える。
「すぐ出発だろ、ボス」
「…ふん」
勿体ぶるように少し間を空け、ようやく長い足を前に出したレインを先に通してから、ブラッドは再び沙羅と一哉の背中を押した。
促されるままに扉を出た一哉が、意味深な瞳でブラッドを見上げる。
「ふぅん…意外な一面だったな」
さっきからの二人のやりとりを興味深そうに見つめていた一哉の視線に、ブラッドは気付いていた。
前を歩く黒い軍服、レインの背中を見つめながら、ブラッドは予想通りの展開に乗じる。
「何が」
「あいつのあんな顔、初めて見た」
一哉は先を行くレインを顎先で指し示すと、如何にも陰険に口元を綻ばせる。
「聯(ルエン)と言い合ってんのは見たことあるけどさ。その時とは違って、あんたといる時は…なんつーか、ガキっぽい。あいつもやっぱ人間なんだな」
自信満々な言動と圧倒的な美貌で、とかく特別視されがちなレインだが、政治、軍事の重鎮が集まる場でもやはり強気で、多少幼い外見ながら、どうしてもハタチという年齢以上の迫力を醸し出してしまう。
先程のように言い淀んだり、困惑したりする彼の姿を目にした事がある者は、SNIPER幹部ならいざ知らず、他機関では暁天(ぎょうてん)の星にも等しいだろう。
ふぅん、と声を漏らし、ブラッドが応じる。
「李聯か…。お前らのボスは、俺の知る限り最もサディスティックな男だからな」
憚りなくこういう話題に便乗してしまうのは、ブラッドの悪い癖だ。
後方に耳を欹(そばだ)てながら、レインはジリジリと苛立ちを募らせていた。
「レインなんて、そりゃあ李にしてみりゃ堪んねぇだろ。レインって気ぃ強そうに見えるけど、ほんとはエ…」
「ブラッド!!」
烈火の如き咆哮。
突如振り向くと同時に、レインが大迫力のハスキー・ヴォイスで怒鳴った。
嚇怒(かくど)に身を竦ませたブラッドは微苦笑し、頬を掻きながら、一哉をチラリと横目に見る。
「また後でな」
レインに駆け寄り、謝罪を述べているブラッドに目をくれながら、沙羅は漫然と歩を進めていた。
「沙羅、平気か?」
自分の唇を指で叩く一哉の言いたいことを察し、沙羅はこっくりと頷く。
「うん。…なんか麻痺してきた。面白いんだもん、あの人達」
「…まぁ、確かにな」
頷いた一哉の意図する「面白い」は「変人」と同意だ。
別の解釈でありながら会話は成立し、前を歩く二人の背中を眺めながら、沙羅と一哉はしばし黙考していた。
均整のとれた細い身体にきちんと軍服を纏ったレインと、堂々たる体躯に防護服を纏い、元帥の風体を保つ手前、とりあえず軍服の上着を羽織っているブラッド。
同じ軍服だが二人の着こなし方はあまりにも違いすぎて、まるで別のものを着ているように見える。
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