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SCENE SECTION

01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結


激昂した一哉が、レインの首元を荒々しく掴み上げた。

「てめぇっ…! 何考えてんだッ」

掴まれた首元へ、レインがゆっくりと視線を落とす。

彼は、許可無く他人に触れられる事を何よりも厭う――レインの雰囲気が瞬時に切り変わった。

「李のイヌが…気安く俺に触るな」

「ふざけんな! よくも沙羅に…!」

――焔。
彼の周囲一帯、熱で歪んだ空気の中に、紅(ほのお)がチラチラと揺れる。

「放せと言っている。…そんなに死にたいのか?」

じわりとレインの右手に熱が集まり、一哉の前髪が数本縮れた。

「っ…! 上等だ」

勢いよく一哉が肘を引いたところで、誰かが背後から彼の手首を掴んだ。

殺気…否、一哉は気配さえ感じ取れなかったが、背後に立つ何者かの指は、しっかりと彼の肌に喰い込み、その動きを封じている。

「やめとけ藤間…レインは本気だ。手加減しないぜ」

聞き覚えのある声に一哉が顔を向けると、そこには見知った男が立っていた。

ラフなプラチナ・ブロンド、褐色の艶やかな肌。
野性味のある翠色の瞳が印象的な、雄々しい獣を想わせる顔立ちの男――

「ブラッド…」

一哉は反射的に彼の名を口にしていた。

ブラッド・ジラ。
今年の8月で24歳になる彼は、スナイパーの若き軍事最高官元帥であり、稀少な遺伝子混合種(ハイブリッド)の能力者でもある。

一哉とは任務で何度か顔を合わせたことがあるが、レイン同様、本来はこういう場所に出てくるべきではない、高位の人間だ。

「…なんだ。あんたまで来てたのか」

少しは話の通じそうな人物が登場してくれた事で、微かにだが、一哉は表情を緩めていた。

二人の間に特に親密な交流があるわけではなかったが、ざっくばらんで親しみやすい雰囲気を持つブラッドには、排他的なレインとは違い、人や場を和ませるような、不思議な温かさと包容力があった。

第三者に与える影響力はレインにも引けをとらないであろう彼の貫録は、向かい合う相手に安心感を持たせ、自然と緊張を緩和させる。

「久しぶりだな、藤間」

挨拶がてらに軽く片手を上げたブラッドが、男臭い笑みをつくった。
屈託のないその笑顔につられ、一哉は知らず頷き返してしまう。

「相変わらず、ウチのボスとお前は仲が悪い…。ま、レインの場合、ほぼ100パーの確率で…誰に対してもこうなんだけどな」

ブラッドと向かい合ったレインは目を見張り、半ば茫然と彼の名を呼んだ。

「…ブラッド」

レインのその表情を見咎めた一哉が、訝しげに首を傾げる。

ブラッドは、名実共にレインの右腕と呼べる存在であり、組織のトップ2である彼等が行動を共にする場面こそ見る機会は少ないが、彼はレインが最も信頼している人間だと、一般的には認識されている。

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