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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
レインを白眼視する一哉には目もくれず、煙草の先端を噛み、一本を銜え抜く。
「李の顔に泥を塗りたいなら、さっさと契約破棄でもして日本に帰るんだな。俺は別にお前がいなくても構わない。だが…」
口の端に銜えた煙草。
――指に灯った 紅い焔が、煙草の先端を焼いた。
「俺は、協力するなら対等でいいと言ってるんだ」
二人の間に、ふわりと紫煙が漂う。
「俺とお前が同等だと言ったつもりはないが――…知らなかったな、ガーディアンはお前のような一兵卒(ザコ)が決定権を握っているのか 」
レインは、紅い瞳を意地悪く細め――次の瞬間、危殆な鋭さをそれに含ませる。
「これが「提案」だとでも…まさか、本気で思っているのか? ――身の程を弁えろ」
「ッ……」
二人が散らす火花が視覚化できてしまって、どうにかしようと思案を巡らせている内に、沙羅は迂闊にも、二人の間に立ってしまっていた。
「ま…ッ待って…」
沙羅とレインの目が合う。
同じ戦場、同じ任務に関わったことはあっても、沙羅はこうして、至近距離で彼と顔を合わせるのは初めてだった。
動転し、手に汗を握る彼女の脳内では、彼に関する情報が白々しく流れ始める。
――SNIPER(スナイパー)。
アメリカ合衆国のみならず、ヨーロッパやアジア政府、各国情報機関、その他世界情勢に関わる幾多の組織との関係を持つ、軍事複合体(コングロマリット)。
総帥であるレイン・エルは、弱冠16歳で軍需産業の合同重役会議の議長になったという、信じ難い経歴の持ち主である。
兵器輸出に関わる極秘資料を管理する傍ら、各国政府要人や米国防長官らに強力なロビー活動を展開し、産業界を纏め上げ、18歳でSNIPERを創設した。
そして現在、20歳になったばかりの若きカリスマは、世界を後ろから取り仕切る、闇の支配者として君臨している。
彼が死神と呼ばれ恐れられる所以(ゆえん)は、戦場にある。
レインは総帥という立場であるにも関わらず戦地に赴き、自ら参戦する事がある。
彼が戦闘を繰り広げた後の光景は…。
「………」
沙羅がゴクンと喉を鳴らした。
これだけ大規模な事件だというのに、任務を命じられたSクラスエージェントは、沙羅と一哉の二人だけだった。
聯(ルエン)や隆盛からは何の説明もなかったが、今にして思えば、初めからレインと組む予定だった、という事なのだろう――そんな事を漠然と推察しながらも、沙羅は奥歯を噛み締め、恐る恐るレインを見上げる。
だが、得も知れぬ怖気が全身を覆い、すぐ目の前に立つ彼の顔を正視する事すら出来ず、視線が泳いでしまう。
スナイパーの戦闘員達が、レインと対峙する沙羅への警戒を強め、一斉に身構えた。
スナイパーとガーディアンは同系機関だが、協力関係にはない。
トップの聯(ルエン)とレインの仲を見れば、それは一目瞭然だった。
レインを白眼視する一哉には目もくれず、煙草の先端を噛み、一本を銜え抜く。
「李の顔に泥を塗りたいなら、さっさと契約破棄でもして日本に帰るんだな。俺は別にお前がいなくても構わない。だが…」
口の端に銜えた煙草。
――
「俺は、協力するなら対等でいいと言ってるんだ」
二人の間に、ふわりと紫煙が漂う。
「俺とお前が同等だと言ったつもりはないが――…知らなかったな、ガーディアンはお前のような一兵卒(ザコ)が決定権を握っているのか 」
レインは、紅い瞳を意地悪く細め――次の瞬間、危殆な鋭さをそれに含ませる。
「これが「提案」だとでも…まさか、本気で思っているのか? ――身の程を弁えろ」
「ッ……」
二人が散らす火花が視覚化できてしまって、どうにかしようと思案を巡らせている内に、沙羅は迂闊にも、二人の間に立ってしまっていた。
「ま…ッ待って…」
沙羅とレインの目が合う。
同じ戦場、同じ任務に関わったことはあっても、沙羅はこうして、至近距離で彼と顔を合わせるのは初めてだった。
動転し、手に汗を握る彼女の脳内では、彼に関する情報が白々しく流れ始める。
――SNIPER(スナイパー)。
アメリカ合衆国のみならず、ヨーロッパやアジア政府、各国情報機関、その他世界情勢に関わる幾多の組織との関係を持つ、軍事複合体(コングロマリット)。
総帥であるレイン・エルは、弱冠16歳で軍需産業の合同重役会議の議長になったという、信じ難い経歴の持ち主である。
兵器輸出に関わる極秘資料を管理する傍ら、各国政府要人や米国防長官らに強力なロビー活動を展開し、産業界を纏め上げ、18歳でSNIPERを創設した。
そして現在、20歳になったばかりの若きカリスマは、世界を後ろから取り仕切る、闇の支配者として君臨している。
彼が死神と呼ばれ恐れられる所以(ゆえん)は、戦場にある。
レインは総帥という立場であるにも関わらず戦地に赴き、自ら参戦する事がある。
彼が戦闘を繰り広げた後の光景は…。
「………」
沙羅がゴクンと喉を鳴らした。
これだけ大規模な事件だというのに、任務を命じられたSクラスエージェントは、沙羅と一哉の二人だけだった。
聯(ルエン)や隆盛からは何の説明もなかったが、今にして思えば、初めからレインと組む予定だった、という事なのだろう――そんな事を漠然と推察しながらも、沙羅は奥歯を噛み締め、恐る恐るレインを見上げる。
だが、得も知れぬ怖気が全身を覆い、すぐ目の前に立つ彼の顔を正視する事すら出来ず、視線が泳いでしまう。
スナイパーの戦闘員達が、レインと対峙する沙羅への警戒を強め、一斉に身構えた。
スナイパーとガーディアンは同系機関だが、協力関係にはない。
トップの聯(ルエン)とレインの仲を見れば、それは一目瞭然だった。
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