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SCENE SECTION

01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結


「貴関(ガーディアン)には私達から要請致しました。あちらは政府からの…国防総省(ペンタゴン)からの要請です」

「あのなぁ、こっちはそんなの…」

言葉の途中、背後で扉が開いた。

銃を構えた集団が室内に侵入し、あっという間に沙羅達を取り囲む。
UW(特殊戦)仕様の黒い防護服には、紅龍の徽章が縫い付けられている。

紅龍(ブラッディ・ドラゴン)はSNIPERの象徴(シンボル)だ。
――一哉が眉根を寄せた。


肌が焦げるような緊張感、圧倒的な存在感(ハイ・プレッシャー)。


整然と並んだ戦闘員(コンバタント)の間を通り、沙羅達の前で足を止めたのは、一際異彩を放つ黒髪の男だった。


しなやかな長躯に、紅龍の徽章が入った漆黒の軍服を纏っている。

彼の入室と同時に一変した雰囲気に圧され、その場にいた全員が黙然とする中、男がゆっくりと口を開いた。

「少し遅れたな…」

部屋を一望し、沙羅と一哉に視線を向ける。
軍服から覗く、透けるような白肌はしっとりと滑らかで、甘い色香を漂わせている。

何より印象的なのは、彼の象徴とも言える…
――焔の色をした紅の瞳(ルビー・アイ)。

突然変異(パーシャリィ・アルビノ)の彼の虹彩は、世界でただ一つのものだ。

男は如何にも高慢な態度で一哉に歩み寄ると、片手を腰に当て、取り澄ました格好で口を開く。

「李から通達だ。…今回ガーディアンは、俺達との協力を惜しまないそうだ」

李聯(リー・ルエン)。
ガーディアン現総帥、最高権力者の名である。

「聯が…?」

訝しげに問いかける一哉に瞳を細め、男が嬌笑した。
SA達を見渡し、ハスキーな低音を響かせる。

「SNIPERのレイン・エル総帥だ。ここからはガーディアンと俺が受け継ぐ。貴関には追ってこちらから協力を乞う。それでいいな」

SAは了解の意を表し、一斉に敬礼をした。

「緊急事態だ…一時休戦だな、藤間(とうま)」

ツイと片眉を上げ、艶冶(えんや)な仕草で一哉を見遣る。

傲岸不遜な彼から漂う、総身が逆立つような、忌々しいほど強烈な甘い誘惑に、一哉は顔を顰める。

人を惑わすレイン特有の体質、穎脱(えいだつ)した彼の遺伝子は、魅惑の遺伝子(ダーティ・ジーン)と呼ばれる。

男でありながら濃艶な彼は、性別や人種などという垣根を越え、無条件に生物を惹きつけ、魅了する。

顔立ちも声も身体つきも、秀美だが、女っぽいわけではない。
だが、一瞬で彼に心を奪われてしまったらしいSA達は、すっかり我を忘れ、恍惚とレインを注視している。

レインに惑わされる大半の人間の浅はかさは、どの場面でも、いつも一哉の苛立ちを増幅させた。 

「あんた達が動くなら、ガーディアンが協力しなくても問題ないだろ」

露骨な敵意を滲ませる一哉の隣で沙羅は狼狽し、そわそわと視線を泳がせている。

藤間一哉の「レイン・エル嫌い」は、軍事業界では有名な話だ。

胸元から煙草を取り出しながら、レインが応じる。

「俺達が要請を受けたのと同様に、ガーディアンも連邦政府(ホワイトハウス)からの申し入れを受けた」

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