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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
「そうです。…しかし私達は、その事実に辿り着くまでだいぶ時間を費やしてしまいました。世界一の軍事大国と言われる我が米国ですら苦戦した、極めて難解な暗号データを、こうもあっさり解読されるとは…感服です」
嘲笑を浮かべた一哉が、悪しざまに一言を呈す。
「ダムの管理は遠隔操作だ。どこも例外なくコンピュータで自動制御されている。ここにテロリストがサイバーアタックを仕掛けてくることは、とっくに想定済みだったろうに」
一哉の横で、沙羅がふと顔を上げた。
「盗聴(タプ)は? エシュロンは何か捉えてますか?」
エシュロン――国家安全保障局(NSA)などが使用している世界的な盗聴システムの名称で、アメリカ合衆国はこのシステムを使い、24時間体制でテロリストの通信を傍受している。
沙羅の問いに、SAの一人が頷く。
「事件当日の午前1時50分、西海岸に大規模な停電が起きた時点で、この辺りの水源地攻撃の危険性を察知した別機関から通達がありました。そして、私達からの応援要請に応えた同機関が後日届けてきた情報によりますと、エシュロン及び情報収集システム解析の結果、ハッキングの元となる場所が特定されたそうです。それが…これです」
机上の地図に記された複数の赤い点は、全世界に及ぶ広大な範囲に散在している。
エージェントによる報告書が添付されているところを見ると、データに基づき、既に全地点での現地調査を遂行したようだ――たった数時間で。
克明な報告書を通覧した沙羅は、それが非常に信憑性の高いものだと確信する。
「間違いない…みたいね」
数十箇所あるその点の位置を確かめ、沙羅と一哉が顔を見合わせた。
中国を中心として散った赤い点は、ある組織の支部を示している。
彼らは気学や風水といった思想を重んじるところがあり、支部の配置に特徴があった。
ガーディアンと同じように私設軍を持つ、軍事コングロマリット――NIGHTMARE(ナイトメア)の拠点だ。
「ちなみに…。これ…どの機関からの情報ですか」
見上げる沙羅にSAが応じる。
「SNIPER(スナイパー)です」
「ス……」
言葉を発しきらないまま硬直する一哉を横目に、沙羅が苦笑した。
「…ですよね」
これだけの規模の話になれば、アメリカ合衆国軍部や国防総省(ペンタゴン)、政界等と密接に関係している最強の軍事機関、SNIPERが動いても不思議ではない。
他機関が情報収集や解析に手間取っている中で、これだけ明確な答えを提示することができる人物と言ったら、該当するのは一人しかいない。
「政府が直接、SNIPERに…レイン・エル総帥に応援要請を出しました」
「ちょ…待てよ。要請ならGAD(ウチ)が受けただろ。他の機関となんて…ましてSNIPERとなんざ、手ぇ組んでやる気はない」
面白くない展開に苛立った一哉が、赤茶の髪を掻き毟る。
冗談じゃない――
あの憎たらしい、ツンとした横顔が脳裏を過ぎる。
レイン・エル。
あんなヤツと共同戦線なんて…っ。
死んだって御免だ!
「そうです。…しかし私達は、その事実に辿り着くまでだいぶ時間を費やしてしまいました。世界一の軍事大国と言われる我が米国ですら苦戦した、極めて難解な暗号データを、こうもあっさり解読されるとは…感服です」
嘲笑を浮かべた一哉が、悪しざまに一言を呈す。
「ダムの管理は遠隔操作だ。どこも例外なくコンピュータで自動制御されている。ここにテロリストがサイバーアタックを仕掛けてくることは、とっくに想定済みだったろうに」
一哉の横で、沙羅がふと顔を上げた。
「盗聴(タプ)は? エシュロンは何か捉えてますか?」
エシュロン――国家安全保障局(NSA)などが使用している世界的な盗聴システムの名称で、アメリカ合衆国はこのシステムを使い、24時間体制でテロリストの通信を傍受している。
沙羅の問いに、SAの一人が頷く。
「事件当日の午前1時50分、西海岸に大規模な停電が起きた時点で、この辺りの水源地攻撃の危険性を察知した別機関から通達がありました。そして、私達からの応援要請に応えた同機関が後日届けてきた情報によりますと、エシュロン及び情報収集システム解析の結果、ハッキングの元となる場所が特定されたそうです。それが…これです」
机上の地図に記された複数の赤い点は、全世界に及ぶ広大な範囲に散在している。
エージェントによる報告書が添付されているところを見ると、データに基づき、既に全地点での現地調査を遂行したようだ――たった数時間で。
克明な報告書を通覧した沙羅は、それが非常に信憑性の高いものだと確信する。
「間違いない…みたいね」
数十箇所あるその点の位置を確かめ、沙羅と一哉が顔を見合わせた。
中国を中心として散った赤い点は、ある組織の支部を示している。
彼らは気学や風水といった思想を重んじるところがあり、支部の配置に特徴があった。
ガーディアンと同じように私設軍を持つ、軍事コングロマリット――NIGHTMARE(ナイトメア)の拠点だ。
「ちなみに…。これ…どの機関からの情報ですか」
見上げる沙羅にSAが応じる。
「SNIPER(スナイパー)です」
「ス……」
言葉を発しきらないまま硬直する一哉を横目に、沙羅が苦笑した。
「…ですよね」
これだけの規模の話になれば、アメリカ合衆国軍部や国防総省(ペンタゴン)、政界等と密接に関係している最強の軍事機関、SNIPERが動いても不思議ではない。
他機関が情報収集や解析に手間取っている中で、これだけ明確な答えを提示することができる人物と言ったら、該当するのは一人しかいない。
「政府が直接、SNIPERに…レイン・エル総帥に応援要請を出しました」
「ちょ…待てよ。要請ならGAD(ウチ)が受けただろ。他の機関となんて…ましてSNIPERとなんざ、手ぇ組んでやる気はない」
面白くない展開に苛立った一哉が、赤茶の髪を掻き毟る。
冗談じゃない――
あの憎たらしい、ツンとした横顔が脳裏を過ぎる。
レイン・エル。
あんなヤツと共同戦線なんて…っ。
死んだって御免だ!
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