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SCENE SECTION

01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結


アメリカ合衆国ネバダ州、ラスベガス。
大西部の砂漠に忽然と現れるネオンの固まりを通り過ぎ、そこから南東へ約40キロ行けば、コロラド大学を有する学園都市、ボルダーシティに辿り着く。

ロッキー山脈を望む美しい街の中心部にはダウンタウンがあり、パールストリートのショッピングモールを抜け、ボルダー空港に向かって10分程歩けば、ガーディアンのネバダ支部が見えてくる。

そこから車に乗り、US―93を走行すること約40分。
カーブの多い岩山の間を上っていくと、高さ約223メートルを誇る、巨大なフーバーダムが現れる。

このダムに異変が起きたのは3日前、午前2時だった。

その2時間後に調査員が訪れ、現地調査を開始した――ダムは大爆発を起こし、調査員を巻き込み大きく破損した。






「午前1時50分。西海岸で大規模な停電が起きました。その後、ダムのセキュリティー異変をこちらが感知したのが、午前2時です。国土防衛省からの指令で、サイバー・セキュリティー要員が直ちに高感度モニターカメラを確認、緊急事態対応マニュアル通り行動を開始し、各情報機関、軍事機関に応援を要請しました。しかしカメラには何の異変もなく、各応援部隊がダムに到着した途端に…」

極度に破損したダムを上空から写した衛星写真。

最上部の幅が14メートル、長さが380メートル、北側には青々としたレイクミードが広がる世界最大規模の巨大なフーバーダムが、原形を留めないほど破壊された光景は、写真だけでもゾッとする。

「ただの爆発じゃないな。破損の原因は?」

淡々とした口調で一哉が尋ねる。

問題のフーバーダムから、US―93をベガスに向けて車で10分ほど走った場所にあるネバダ支部に到着した沙羅と一哉は、現地の情報を伝えに訪れていた国土防衛施設の、対革命戦用のSA( セキュリティー・エージェント)達に出迎えられていた。

「ええ、実は……」

「衛星みたい」

暗号で記されたデータを眺めていた沙羅が、隣に座っている一哉を見上げる。

「ハッキングされたのはダムのセキュリティーだけじゃない。軍の攻撃衛星…ここもやられてる」

「攻撃衛星?」

沙羅から受け取った、膨大な暗号が羅列された資料。
四方八方に走った幾万の線、記号を、一哉が瞬時に読み解いていく。

「げ。…マジかよ…最悪だな」

SA達が、驚いたように顔を見合わせた。

ガーディアンの最上位エージェント、藤間一哉と樹沙羅。
二人の令名は既に、軍事の世界に轟いている。

初対面の日本人二人の印象は、年端もいかない普通の子供でしかなかったが、データ解析のプロが半日かけて突き止めた事実にたった数分で到達した彼らの実相は、やはり見た目とは異なるようだ。

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