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SCENE SECTION
01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 /
06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人
MH-53JペイヴロウV。
夜間降下の多い特殊部隊、おもにSクラスランク上位のエージェントが使用する隠密作戦機で、赤外線前方監視装置を装備しており、さらに地形追随レーダー、ミサイル感知システム、レーダー妨害装置を完備している。
超低空を飛行することができるので、対空レーダーにもひっかからない。外装の装甲も、オリハルコンを混ぜた厚い特殊金属板で強化されており、GPSも搭載。ミサイルを引きつける発熱体、フレアも投射できる。機動力も高い。
オネガ湖上空。目的地のキジー島まであと数分。
38人も搭乗できる広い機体の中で、沙羅はちいさく溜息をついていた。
――――はぁ。
憂鬱、だな。
すこし離れた場所に座っている一哉以外は、運転席に3人いるだけ。機体の中に響くのは、無機質なプロペラの可動音。
プロペラの音、きらい。
こわいんだもん…。
戦禍を匂わせるものが全て苦手な沙羅は、ときに、このガーディアンという軍事機関に身を置いていることを苦痛に感じてしまう。
あぁ。でも。
ふつうに中学生してるのだって、得意じゃないな…。
どうしてもっとちゃんと、普通の女の子たちみたいに振舞えないんだろう。いつもそこに引け目を持ってる。
べつにそれは、自分が「能力者」だからじゃなくて…性格的な、生まれつきの気質のせいなんだろうって、最近は思う。
臆病で、人がこわい。
そのくせ人がすきで…みんなには笑っていてほしいと、ほんとうに心から思うのに。
自分が人を笑顔にできるっていう自信がないから、ちゃんと人と向き合えないんだ。
そう…解ってる。
自分なんかに何ができるの。そんなふうに無意味に卑屈になってしまう自分自身が厭なのに、変えることができないでいる。
自信なんて。
どうやったらつくんだろう…。
ふと、彼の姿が思い浮かぶ。
あの人は――――いつも堂々としてて強い。そんなイメージで。
だけど…。
「大丈夫、かな…」
ぽつりと呟いた沙羅の言葉に、瞳を綴じて俯いていた一哉が顔を上げた。
「どした。…なんか心配することあったら、言えよ」
優しい声。
なんとなく、さみしい気持ちでいたせいもあって。
立ち上がった沙羅が、そろそろと一哉の傍に寄っていって…隣に座る。
「沙羅」
あったかい手が髪を撫でてくれる。
――――うん。
体温って大切だって、つくづく思う。あったかいって幸せ。
――――やっぱり人が好きなんだって…実感できる。
「不安か……?」
栗色の髪を梳くように撫でてやりながら、一哉がそっと唇を沙羅の頭に当てる。
「大丈夫だ…レインと戦る必要はないから。アルフレッド・シフをレインから護る。ってことは、連れ出せばいい。それだけ沙羅に任せるからな。あいつとは俺が戦る」
「………」
どうしてだろう。
――――どうして。
「どうして、レインと戦うの?」
そう聞きたかった。だけど、口から言葉が出ない。
一哉を困らせたいわけじゃ、ない…。
――――泣きそうになる。
一哉も、レインも。
みんなが戦わずに、一緒にいられる方法が…あればいいのに。
綺麗ごとだと言われるかもしれないけど、ほんとうにそう思う。
いつだって。自信がなくて、力もなくて…結局、なにもできなくて。
あたしには、願うことしかできない。
それがただ――――痛い。
MH-53JペイヴロウV。
夜間降下の多い特殊部隊、おもにSクラスランク上位のエージェントが使用する隠密作戦機で、赤外線前方監視装置を装備しており、さらに地形追随レーダー、ミサイル感知システム、レーダー妨害装置を完備している。
超低空を飛行することができるので、対空レーダーにもひっかからない。外装の装甲も、オリハルコンを混ぜた厚い特殊金属板で強化されており、GPSも搭載。ミサイルを引きつける発熱体、フレアも投射できる。機動力も高い。
オネガ湖上空。目的地のキジー島まであと数分。
38人も搭乗できる広い機体の中で、沙羅はちいさく溜息をついていた。
――――はぁ。
憂鬱、だな。
すこし離れた場所に座っている一哉以外は、運転席に3人いるだけ。機体の中に響くのは、無機質なプロペラの可動音。
プロペラの音、きらい。
こわいんだもん…。
戦禍を匂わせるものが全て苦手な沙羅は、ときに、このガーディアンという軍事機関に身を置いていることを苦痛に感じてしまう。
あぁ。でも。
ふつうに中学生してるのだって、得意じゃないな…。
どうしてもっとちゃんと、普通の女の子たちみたいに振舞えないんだろう。いつもそこに引け目を持ってる。
べつにそれは、自分が「能力者」だからじゃなくて…性格的な、生まれつきの気質のせいなんだろうって、最近は思う。
臆病で、人がこわい。
そのくせ人がすきで…みんなには笑っていてほしいと、ほんとうに心から思うのに。
自分が人を笑顔にできるっていう自信がないから、ちゃんと人と向き合えないんだ。
そう…解ってる。
自分なんかに何ができるの。そんなふうに無意味に卑屈になってしまう自分自身が厭なのに、変えることができないでいる。
自信なんて。
どうやったらつくんだろう…。
ふと、彼の姿が思い浮かぶ。
あの人は――――いつも堂々としてて強い。そんなイメージで。
だけど…。
「大丈夫、かな…」
ぽつりと呟いた沙羅の言葉に、瞳を綴じて俯いていた一哉が顔を上げた。
「どした。…なんか心配することあったら、言えよ」
優しい声。
なんとなく、さみしい気持ちでいたせいもあって。
立ち上がった沙羅が、そろそろと一哉の傍に寄っていって…隣に座る。
「沙羅」
あったかい手が髪を撫でてくれる。
――――うん。
体温って大切だって、つくづく思う。あったかいって幸せ。
――――やっぱり人が好きなんだって…実感できる。
「不安か……?」
栗色の髪を梳くように撫でてやりながら、一哉がそっと唇を沙羅の頭に当てる。
「大丈夫だ…レインと戦る必要はないから。アルフレッド・シフをレインから護る。ってことは、連れ出せばいい。それだけ沙羅に任せるからな。あいつとは俺が戦る」
「………」
どうしてだろう。
――――どうして。
「どうして、レインと戦うの?」
そう聞きたかった。だけど、口から言葉が出ない。
一哉を困らせたいわけじゃ、ない…。
――――泣きそうになる。
一哉も、レインも。
みんなが戦わずに、一緒にいられる方法が…あればいいのに。
綺麗ごとだと言われるかもしれないけど、ほんとうにそう思う。
いつだって。自信がなくて、力もなくて…結局、なにもできなくて。
あたしには、願うことしかできない。
それがただ――――痛い。
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