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SCENE SECTION

01.痛み / 02.潜入 / 03.ジャッジ / 04.焔魔 / 05.偽りの理由 / 06.遺恨 / 07.欠陥 / 08.恋人






天国へ行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである。
マキアヴェッリ







白一色の異様な空間、いつもの悪夢。

無機質な電子音が響く部屋の中に置かれた真っ白な医療用ベッドに、まだ幼い少年は両手足を開いた格好で固定されていた。

「はぁ、っ……あ、っ……も……いやだ」

成熟していない下肢の部分、先端から入れ込まれたカテーテルをゆっくりと引き抜くようにしながら、少年に覆いかぶさっていた白衣姿の男が笑む。

「まだ痛みを感じる?それなら…薬を増やしてみようか」

脅えた紅い瞳が熱に潤み、大粒の涙が頬を伝う。
いやいやをするように小さな頭を振ると、艶やかな黒髪がシーツの上で擦れ、額から丸い汗の玉が伝い落ちた。

「い、っ…いやだ…っ、アスタ、っ…や」
「大丈夫だよ」

白衣の男は手にした瓶に針を入れると、注射器の中に透明な液体をたっぷりと吸い込ませ、それを見せ付けるように少年の鼻先へ差し出した。

「この薬はきみに合うように、完璧に調合されているから。ほら…」

痛いくらいに張り詰めている先端を指で扱かれ、少年が悶える。

「何時間もこうしているのに、全然萎えないだろう?ずいぶんたくさん出したね」
「んあ、っ……はぁ、……ぁあ」

尿道にカテーテルを挿入され、奥で吸引されてしまう為、熱を放出している感覚がない。
気が狂いそうなほどの絶頂を感じているのに、終わりがない。


――――苦しい。


自由が利かない身体を捩らせる少年は、ただ喘ぎ、荒く息を吐くことしかできない。
開かされた両足の間に、白衣姿の男、アスタ・ビノシュが身を屈めた。

「あぁ、っ……も、……やめ、て……許して、くださ……っ」

必死の懇願も虚しく、熟れた果実のように赤くなった幼い先端に針が入れられた。
異物感と共に、ゆっくりと侵入してくる。

「ひ、っ……ぃあ」
奥まで入り込んだ長い針から、内部にとろとろとした液体が滴り落ちてくる。
「あぁっ……!っ……ひ、っ……ぃやあ」
急激に増す疼きに耐えられず、激しく腰を揺らしてしまう。
「はぁ、っ……はぁ、……ア、アスタ……っ、あすたぁ……ッ」
枷が鳴り、甘い喘ぎ声と交ざる。
「きみにはまだ、たっぷりと精子を出してもらわないとね。すぐに研究でなくなってしまうんだ」
「ぁん、っ……はぁ、……っあ」

少年の両膝に手をかけ、固くなった下肢の部分を少年の中へと一気に押し込める。

「あぁあっ!……ん、っ……んぁ、あ」

奥を突き上げられる感覚に嬌声を上げた少年はそのまま達したが、すぐに吸引され、放出の実感がない。
最悪の絶頂感と気が狂いそうな快感に、ただ腰を揺らして喘いでいる。

「はぁ、っ……は、っ……ぁあ、アスタっ……ぁ、気持ち、いい……っあぁ」

苦しい。
苦しい、のに。

強すぎる快楽で意識がまとまらず、なにも考えられない。






実験、能力テスト、薬物投与、条件付け。
虐げられるような、セックスと呼べないくらい俗悪で乱暴な陵辱。
ただそれを、毎日繰りかえしている。


アスタが言ってた。
俺の身体は人を惑わせるんだって。
だから俺が悪いんだって。


それならもう、要らない。
こんな身体なんて、もう要らないのに。

俺を殺して。
誰でもいいから。


誰か
助けて。








「っ…!!」

ベッドの上で俄かに上体を起こしたレインは、両膝を立てたまま蹲り、暗闇の中で肩を震わせ、荒く息を吐いていた。

正体不明の畏怖がうねりのように押し寄せ、全身に冷たい汗が滲む。

彼の様子をすぐに感知したブラッドが、隣でゆっくりと身体を起こした。
ラフなプラチナ・ブロンドをかき上げ、時計を見遣る。

午前4時。

レインの様子を窺いつつも、しばらく時間を置く。
――――恐がらせないように。
いきなり触れたり慌てて接すれば逆効果になるということを、彼は心得ていた。

「レイン?」
「っ…、……」

ブラッドの長い指が、震えるレインの肩にゆっくりと、優しく乗せられる。

「は、っ…はぁ、…っ」

呼吸が上手くできていない。
一時的な過呼吸に陥り小刻みに震えるその身体を、ブラッドはそっと包み込み、汗で額にはりついた黒髪を整えてやりながら囁いた。

「レイン。大丈夫だ」
「っ…、……は」
「大丈夫…」

髪を撫で、愛しむようにレインの身体に手のひらを滑らせ、抱きしめたまま背中をさする。
徐々に力が抜けてきた白い肢体がブラッドに寄りかかり、大きな嘆息と共に重くなった。

「……ラッ、……ド…」
「ん?」
「――――ブラッド」

元々ハスキーなレインの声は、いつもよりすこし掠れている。
まだ震えている手が、助けを求めるようにブラッドの腕をつかんだ。

冷たい指先。
汗で濡れた黒髪を撫で梳かし、ブラッドはゆっくりと彼の名前を呼ぶ。

「…レイン」

細い身体を強く抱きしめ、じっと瞳を閉じたまま動かないレインの首元に鼻先を埋めると、甘い芳香がブラッドの鼻腔をくすぐった。

香水のものでないレイン独特の馥郁は、彼が自覚しているよりずっと強く、相手を誘惑する。
不覚にも反応してしまった己に気付いて、ブラッドが苦笑した。

「なぁ、レイン…」
「――――ヤらない」
「………」

早々に言葉の腰を折られ、さすがに今のは愚行だったと思いを致したブラッドが、自省を込めて頷く。

「…。悪ぃ」

「納得…するなよ」
「え?」

ブラッドの下肢に手を伸ばし、レインが身を屈めた。
まるで急かされてるようにブラッドのものに舌を這わせ、口の中に含む。

「っ…、レイ…」
「ん、…む」
「…っ、おい?ちょ…、…っ」
「ん…っ」

火照った身体を制御できずに、レインが微かに喘いだ。
唇から漏れた自分の吐息は、いつもよりずっと大きく感じる。

ブラッドが…欲しい。

本能的な欲求が暴走して、止められない。

「………。大丈夫か?」

細い腕を掴み、手馴れたように体勢を入れ替えたブラッドが、仰向けになったレインの上に覆い被さった。
闇の中で、ベッドがきしりと音を立てる。

「…待ちきれねぇって顔だな」

頬を上気させたレインが、すこしだけ出した舌先で唇を濡らした。
生意気な瞳でブラッドを見上げ、白い首筋を晒すように顔を傾ける。

本人は無意識でやっているだろう挑発的な仕草は、ときに相手の悪意すら喚起させることがあるということを、こうして向かい合った者なら誰しもが感取するだろう。

その瞬間を危険だと本能は告げる。
沸き上がる征服欲は狂気に似ている。

相手の欲望や本懐を煽り、制御を失わせる術を、レインは生得している。
本人の望むところではないとしても、それは事実だった。

「我慢できないのはそっちだろ、ブラッド。…付き合ってやってもいい」

ブラッドを眇め見たレインは静かに腕を絡ませ、軽くブラッドの唇を啄む。
相手をゾクッとさせるような妖艶さを漂わせるレインだが、彼と長年連れ添っているブラッドは、自制心を保つ術を自得している。

「さて、どっちだろうな」
泰然自若としたブラッドの態度に、レインが小さく柳眉を寄せた。
「……っ、…黙れ」

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