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SCENE SECTION
01.始動 / 02.対面 / 03.策略 / 04.死闘 / 05.断罪 / 06.終結
沙羅達はGUARDIANの軍機に乗り込み、次の目的地となる連合王国(UK)へ向かっていた。
機体の側面には、白い翼と双剣をモチーフにしたGUARDIANの徽章が描かれている。
大翼は風を切り裂き、真っ直ぐに空を駆けていた。
聯(ルエン)が使用する為に造られた軍機はエポック・メーキングな仕様で、全長75メートル、全幅64メートルの機体内部には、執務室、会議室、ゲストルーム、医務室、兵士の待機室、軽食のとれるバー等があり、敵のレーダーに感知されないステルス性能、大陸間弾道ミサイル誘導システムを使ったヘルファイア・ミサイル等、あらゆる防御システムも完備されている。
垂直に離着陸が可能なハリヤー型の為、滑走路を確保できない場所や、小さな航空母艦からでも発着できる。
軽食をとり、負傷した一哉とブラッドに救護班が処置を施した後、ガーディアンの戦闘員数人と沙羅達は、作戦説明の為、ゲストルームへとやって来ていた。
政府、軍、情報機関等、あらゆる分野のトップが一堂に会することがあるゲストルームは、機体の物々しい外見からは想像もできない、豪奢できらびやかな造りになっている。
中世を思わせる装飾品と、楕円形の上品なテーブルを囲むように置かれたアッシュ材の椅子。
少し暗めの旧世代的な照明が、白と黄金を基調とする空間に、落ち着きと高級感を与えている。
「どう考えても無理じゃね? そいつ。無駄に頑丈なのは知ってるけどさ。ヘロヘロじゃん」
入口からほど近い位置、沙羅の隣に座った一哉は、開口一番、この場にいる全員の耳に届く程度の、少し大きめの声でそう言った。
皮肉たっぷりな一哉の視線の先にいるのは、片方115センチの足をこれ見よがしに組み、不遜な様相で上座に座している男――レインだった。
物憂げにアームレストへ肘をついて俯く彼は、何の反応も返さない。
一哉と言い合う気力もないのか、単純に無視しているだけなのかは解らないが、血色の悪い肌は透き通るように青白く、うっすらと汗も滲んでいる。
――1時間ほど前。
ブラッドは、昏睡していたレインを医療用ベッドに横たえた。
しかし、ブラッドの手から離れるや否や覚醒したレインは、案の定、治療を受ける事も、任務を途中放棄する事も、戦闘に参加せず休んでいる事も拒んだ。
意識がない間に失態を晒したこと、治療の為とはいえ知らない人間に触れられそうになったこと、何より…それを聯(ルエン)に見られたこと。
プライドの高いレインには、何もかもが気に食わない。
だが彼は、不屈の根性と矜持(きょうじ)のみで持ち堪えているだけであって、ダメージを負った精神が回復したわけではなかった。
内実は上辺を繕う余裕すらなく、疾(と)うに限界に達している。
急激な眩暈に襲われたレインは瞑目し、片手で顔を覆うと、ぐったりと椅子に凭れてしまった。
――気分が悪い…。
音は不明瞭だし、身体の反応も鈍い。
感覚を確かめるように何度か拳を握ろうと試みるも、うまく力が入らない。
ひどい頭痛と吐き気は、目覚めてからずっと続いている。
そんな状態であるのに関わらず、彼の耳には如何な諫言(かんげん)も入らない。
それがたとえ、ブラッドの言葉であろうとも。
不覚を取ったことで頑(かたく)なになり、鉄壁のシャッターで心を閉ざしてしまった今のレインを諭すのは、彼と聯にフォークダンスを踊らせるのと同じくらい至難の業であろう。
しかしブラッドは、どうにかして彼を寝かしつけ、快方に向かわせようと心を砕き、苦肉の策として、レインの目の届かない場所で幹部達と連絡を取り、密かに聯に提案を申し出ていた。
レインの代わりとして、次の到着地で幹部二人を合流させる。
ブラッド同様、彼の容態を案じていた聯は、ブラッドの提言を快く応諾(おうだく)した。
だが、レインにそういった経緯を告げられる好機が、都合良く訪れるわけもなく…ブラッドは結局、彼に何も伝えられないまま、現在(いま)に至っていた。
「先程、スナイパーから通達があった」
そんな状況を見兼ねたのか、レインの左隣りに座っていた聯が口火を切る。
沙羅達はGUARDIANの軍機に乗り込み、次の目的地となる連合王国(UK)へ向かっていた。
機体の側面には、白い翼と双剣をモチーフにしたGUARDIANの徽章が描かれている。
大翼は風を切り裂き、真っ直ぐに空を駆けていた。
聯(ルエン)が使用する為に造られた軍機はエポック・メーキングな仕様で、全長75メートル、全幅64メートルの機体内部には、執務室、会議室、ゲストルーム、医務室、兵士の待機室、軽食のとれるバー等があり、敵のレーダーに感知されないステルス性能、大陸間弾道ミサイル誘導システムを使ったヘルファイア・ミサイル等、あらゆる防御システムも完備されている。
垂直に離着陸が可能なハリヤー型の為、滑走路を確保できない場所や、小さな航空母艦からでも発着できる。
軽食をとり、負傷した一哉とブラッドに救護班が処置を施した後、ガーディアンの戦闘員数人と沙羅達は、作戦説明の為、ゲストルームへとやって来ていた。
政府、軍、情報機関等、あらゆる分野のトップが一堂に会することがあるゲストルームは、機体の物々しい外見からは想像もできない、豪奢できらびやかな造りになっている。
中世を思わせる装飾品と、楕円形の上品なテーブルを囲むように置かれたアッシュ材の椅子。
少し暗めの旧世代的な照明が、白と黄金を基調とする空間に、落ち着きと高級感を与えている。
「どう考えても無理じゃね? そいつ。無駄に頑丈なのは知ってるけどさ。ヘロヘロじゃん」
入口からほど近い位置、沙羅の隣に座った一哉は、開口一番、この場にいる全員の耳に届く程度の、少し大きめの声でそう言った。
皮肉たっぷりな一哉の視線の先にいるのは、片方115センチの足をこれ見よがしに組み、不遜な様相で上座に座している男――レインだった。
物憂げにアームレストへ肘をついて俯く彼は、何の反応も返さない。
一哉と言い合う気力もないのか、単純に無視しているだけなのかは解らないが、血色の悪い肌は透き通るように青白く、うっすらと汗も滲んでいる。
――1時間ほど前。
ブラッドは、昏睡していたレインを医療用ベッドに横たえた。
しかし、ブラッドの手から離れるや否や覚醒したレインは、案の定、治療を受ける事も、任務を途中放棄する事も、戦闘に参加せず休んでいる事も拒んだ。
意識がない間に失態を晒したこと、治療の為とはいえ知らない人間に触れられそうになったこと、何より…それを聯(ルエン)に見られたこと。
プライドの高いレインには、何もかもが気に食わない。
だが彼は、不屈の根性と矜持(きょうじ)のみで持ち堪えているだけであって、ダメージを負った精神が回復したわけではなかった。
内実は上辺を繕う余裕すらなく、疾(と)うに限界に達している。
急激な眩暈に襲われたレインは瞑目し、片手で顔を覆うと、ぐったりと椅子に凭れてしまった。
――気分が悪い…。
音は不明瞭だし、身体の反応も鈍い。
感覚を確かめるように何度か拳を握ろうと試みるも、うまく力が入らない。
ひどい頭痛と吐き気は、目覚めてからずっと続いている。
そんな状態であるのに関わらず、彼の耳には如何な諫言(かんげん)も入らない。
それがたとえ、ブラッドの言葉であろうとも。
不覚を取ったことで頑(かたく)なになり、鉄壁のシャッターで心を閉ざしてしまった今のレインを諭すのは、彼と聯にフォークダンスを踊らせるのと同じくらい至難の業であろう。
しかしブラッドは、どうにかして彼を寝かしつけ、快方に向かわせようと心を砕き、苦肉の策として、レインの目の届かない場所で幹部達と連絡を取り、密かに聯に提案を申し出ていた。
レインの代わりとして、次の到着地で幹部二人を合流させる。
ブラッド同様、彼の容態を案じていた聯は、ブラッドの提言を快く応諾(おうだく)した。
だが、レインにそういった経緯を告げられる好機が、都合良く訪れるわけもなく…ブラッドは結局、彼に何も伝えられないまま、現在(いま)に至っていた。
「先程、スナイパーから通達があった」
そんな状況を見兼ねたのか、レインの左隣りに座っていた聯が口火を切る。
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